第19弾は、中央市場周辺の食べ・飲み歩きから、駒ヶ林に移動していく長編です。ゲストは、新長田のまちづくりコンサルタント事務所で働く柳谷菜穂さん、そして、夫の杉山浩則さん。そう、今回はシタマチコウベ史上初のカップルで下町を巡るという挑戦的な回となっています。そして、写真は柳谷さんの師匠こと、プロ散歩活動家の角野史和さん。師弟共にライターデビュー&写真家デビューとなった記事をご覧ください。
文:柳谷菜穂・杉山浩則 写真:角野史和
どうも、こんばんは。柳谷菜穂と申します。武庫川団地生まれ、武庫川団地育ち、篠山(いまや丹波篠山)の工務店に3年間勤め昨年の4月から新長田で働いております。かの有名なプロ散歩活動家角野史和氏に師事し、1年が経ちました。左の彼は夫、杉山浩則氏。愛知県出身のサラリーマンです。よろしくお願いします。今回はデート企画という名の飲み歩き。舞台は地下鉄海岸線中央市場前駅。卸売市場!兵庫津!造船!な、下町情緒あふれるスポット。
新長田や駒ヶ林のほうが馴染みはあるのですが、同じ企画(デート企画ではないけどデートみたいでしたね)で師匠が中央市場に訪れていたのでここは師弟対決といきましょう。
と言いつつも、この日のカメラマンは師匠に依頼。飲み歩きだし、わたしと杉山のことを良く知っているから。
3年前にできたイオンモール神戸南店の目の前には兵庫運河が流れていて、橋の反対側には昔から変わらないであろう船着き場が健在。まちなみの新旧が味わえるスポットとなっております。
「今夜、シタマチで」と言いながら、ばりばり昼間なのでおやつとしましょう。まずは知人に教えてもらった「PATISSERIE ET…ARUKUTORI」さんへ。お店は昭和初期、兵庫商人の社交場として建てられた岡方倶楽部のほど近く。ビルの2階に構えています。入った瞬間目に飛び込んでくるのは、黄と青の壁、ボブ・マーリーの本、長い髪をひとつにまとめたお兄さん。めちゃくちゃオシャレだぜ・・・とドキドキ。
「神戸といえばこのチーズケーキ!なんで。まあ、冗談として。モロゾフのカップあるじゃないですか。実家に一つはあるやつ。うちの包装箱も「実家にあったわ〜」と懐かしんでもらえる、そんなチーズケーキ屋になりたいんです」と語る店主赤松さん。包装箱は木目調でコロンとまあるくパッケージもかわいい。
ARUKUTORIさんがメインで販売しているチーズケーキは「熟成チーズケーキ」。購入から2〜3日寝かせてからいただくのがオススメの楽しみ方。口当たりも風味もぜんぜん違ってくるのだそう。だがしかし!今回はいますぐ食べたいので!!熟成させたい気持ちをグッとこらえていただきます。
材料の卵・小麦粉・バター・生クリーム・サワークリーム・砂糖はすべて国内産で、クリームチーズだけはフランス産高級品を使用している、とってもぜいたくなチーズケーキ。濃厚だけど後味あっさり、クッキー生地がシャリッと。一日目の熟成ケーキ。おいしい。書いている今も、食べたい食べたいと思っています。つぎは絶対ホールで買います!
中央市場に来たし、せっかくなので海側を歩く。
杉山「岡本鉄工の2トンハンマーが展示されているね」
柳谷「造船の町ならではやな!」
杉山「戦前戦後を通じて活躍していたって書いてある。いま稼働されてる水圧プレスは2000トンらしいよ!」
柳谷「うげー!!!」
さて、そろそろ向かわないといけないのが角打ち。この日は土曜日だったのでだいたいの角打ちはお休みか時短営業。
たどり着いたのは、東出町の港町線沿いにお店を構える「光本商店」さん。古い菊正宗の看板がかっこいい。右が酒屋さん、左が角打ちの入り口。間仕切りとカウンターで仕切られていて、その上には食料品がびっしり。「イス使ってや」とリ○ー・フランキー風のやさしい店主(KawasakiのTシャツとハット。長髪。気になるところが多すぎる…)。
角打ちだけど生ビールがある!ということで、早速注文。カンパイ! 明るいうちからビール、最高。アテはメニューにはなかった煮豚。ほどよく食感の残る脂とビールが合う合う。あーおいし。つぎは乾物を。蓋が赤いプラスチックの箱から出してすぐに炙ってくれました。ええ匂い。ここは長いんですか?と聞くと「13歳のときからやからー…」。…衝撃。どういうこと??詳しく聞くと13歳から叔母のお店を手伝うようになったとのこと。炭(練炭)や氷などを生業として商売しているうちに酒類の免許も取得。いまは酒店として営業している。だから歴史も長い。今年で95年ぐらい。現店主は3代目、御年70歳!
そうそう、エイヒレは身が厚く味も濃い、やたらとおいしいものだったので、なぜかと聞くと「市場で買うてきたやつやから」。市場にも13歳から通っているから「顔パスでええもんが買える」そうです。
杉山「(店名が書いてあるカレンダーを見ながら)この辺りは篠田っていう地域なんですか?」
店主「この辺りは東出町や」
杉山「じゃあこの篠田店の篠田は?」
店主「それはぼくの名前」
柳谷「え?じゃあ光本商店の光本は?」
店主「それは叔母の名前や」
話を聞くと、別の場所に「光本商店本店」があり、のちに2号店である「光本商店篠田店」を篠田さんが開店。本店の方はなくなってしまい光本商店はここ篠田店だけだけど、屋号なのでそのままの店名にしているそう。
ちなみに、おすすめのお店を聞いたら「ニューヤスダヤ」と教えてくれました。
もっといっぱい話したいけど、この日は17時半に閉店するとのことで、お店を後にすることに。
この時点でまだ空は明るい。ここからが本当のノープラン。まちあるきしながらええ感じのお店を探しましょう。
柳谷「お、二宮金次郎いるやん。なんで住宅地のど真ん中?」
杉山「入江小学校跡地って書いてあるね。昭和63年に閉校したみたい」
柳谷「最近、あんま見いひんよな!」
杉山「『ながら歩き』と『学生バイト』は禁止っていう理由で学校から撤去されてるらしいからね。まだ残っているのは跡地ならではかも」
柳谷「首が取れたから補修されてる!」
杉山「教訓的だね」
西出町の住宅街をウロウロしていたら見つけた「朝めし」と書いた提灯。吸い込まれるように入店した「一寸亭」さん。暖簾をくぐると常連さんとおもしき男性とお母さんが談笑中。「写真撮ってもいいよー、わたしの写真は撮らないでー!」ととても気さくなお母さん。とりあえず生ビールでカンパイ。アテはキムチ豆腐と、アジフライ。野菜も一緒に盛り付けてくれました。ありがとう!
一寸亭さんの特徴は “朝めし”が食べられるところ。朝7時〜営業中。営業時間が書かれた張り紙には“時間厳守”と赤文字で書かれていて、なんだか学食みたい。家の近くにあったら結構な頻度で通ってしまうかも…なんて思いながら軽く一杯。ほっこり、よいお店でした!
ついでに二軒隣の旧柳湯さんでパシャリ。
そろそろ酔いもまわってきて、もはやなにを見てもおもしろい。ひとつひとつ反応してたらきりがないので写真でお送りします。
たくさん歩いて、ようやく暗くなってきた、というタイミングで駒ヶ林へ移動。下町界のリニア、神戸市営地下鉄海岸線に乗って!
ついた場所は扇港湯の近くの「にし川」さん。ちょこんと小さいカウンターにお惣菜が並ぶ居酒屋。実はここ、六間道商店街にお店を構えていた「日の出食堂」さんが閉店したことをきっかけに、そこの娘さんたちがはじめたお店なのだそう。だからなのか?ザ・居酒屋!なメニューもあれば、おふくろの味!なメニューもある。どれもおいしい!豚汁はコショウが効いていてとくに好き!!
〆は店主おすすめの「納豆・キムチ・卵かけごはん・韓国海苔付き(料理名わからず)」がドカーン。食べ方がわからなくておどおどしていると「こうやって食べるのよ〜」と手際よく披露してくれました。そんなかわいい店主と記念撮影!おいしかったです!また来ます!
最後はお気に入りの萬歳湯へ。かの有名な電気風呂マニアも電気風呂パワー“5”をつけた強力な電気風呂があるのです。(腰痛に悩んでいる方はぜひどうぞ。わたしは怖くて入れません…)さらに!!ここはビールが最高にうまいのです。シャリシャリの氷が付くくらいジョッキが冷えていて、それがなんと\250!それをお風呂上がりに流し込めば昇天確定。おでんも絶品なので合わせてどうぞ。1日を華麗に締めくくってくれますよ。
すっかりお互い酔っ払い、とぼとぼ歩いて家路に。デート企画という名の飲み歩きもこれにて終了。まだまだ新しい発見や出会いがたくさんのシタマチエリア。つぎはどのマチを飲み歩きに行こうかな。
掲載日 : 2020.07.15