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神戸の新しい魅力に出会うウェブマガジン

シタマチコウベ

3/3 KOBE MEME公開プレゼン【後半・長田編】

レポート:辻本衣菜(神戸大学インターン)

2019年3月3日、KOBEMEMEの今年度集大成である公開プレゼンテーションが新長田の劇場Art Theater dB KOBEにて開催されました。
前回のブログは兵庫A・Bチームのプランをお伝えしましたが、今回は長田チームのプレゼンテーションをご紹介します!
長田チームはA・B・Cの3つのグループに分かれて活動しています。それぞれが個性あふれる地域の文化的遺伝子=MEMEを見つけ、事業プランを発表してくれました。
兵庫チームのプラン内容・MEMEについては前回の記事をご覧ください。(前回の記事を読む

長田チームトップバッターは長田Aチーム。このチームの事業プランは【1000年続く文化 さかなの山のぼり】でした。

長田区南部にはいかなご漁で有名な長田港・駒ヶ林漁港がある一方、長田区のシンボルともいえる高取山も鎮座しています。これらを調査し、海と山を繋げて長田区をもっと楽しくしたいという想いのもと、「長田港のさかなを高取山へ」という楽しいアイデアが提案されました。

この、さかなが山をのぼる、というのは”輪投げ”の歴史に由来しています。
神戸は輪投げの発祥の地と言われていて高取山をはじめ、神戸の山々には投輪場が作られています。元々輪投げは外国の船乗りが船上で運動不足解消のために楽しんでいた遊びでした。それが地元の造船所など港近くで働く人たちの間で流行し、毎日登山という神戸の山登りの文化とともに山側にも広まったそうです。

ちなみに毎日登山も居留地にいた外国人の習慣を見習って神戸の山々で健康を目的に毎日登山する文化が浸透したそう。

この輪投げのように、長田港のさかなを山にのぼらせることで人やモノの流れを作り出し、もっと活発な交流が生み出せるのではないか、と長田Aチームは考えました。

具体的には、今後、地域の方々とハリボテでは”さかなみこし”を製作したり、「高取山でさかなを食べる輪」や「さかなの山のぼり農園」を開催するなど、海と山を繋ぐ企画が予定されています。

1000年続く文化、という未来へと繋がる夢の詰まった企画に、さかなを食べながら参加したくなる、そんな魅力的なプレゼンテーションでした。

 

 

 

 

続いての長田Bチームは”ほっとけない長田の人”をMEMEとして「ほっとけない長田の人×頑張っているベトナムの人による仮想広告代理店」をテーマに発表してくれました。

近頃、長田区にはベトナム料理店や食材店が増えており、この1年間で2軒がオープンしました。そもそも長田区とベトナムの人々の関係はどのように結ばれたのでしょうか。
この地域は戦後からケミカルシューズ産業やゴム産業などの地場産業によって支えられてきました。その発展に寄与したのが、1975年の戦争終結後に難民としてやってきたベトナム人だったのです。

フィールドワークや調査の結果、長田区は神戸市の中でも外国人居住者、特にベトナム人が多く、この土地で奮闘するベトナム人がたくさんいることはわかっています。そして人知れず頑張っているベトナム人を支えたいと考える人々もたくさん存在する、ということが分かりました。

そこで、

長田の人々の大きな魅力、“ほっとけない力”をもっと発揮して知ってもらいたい
頑張っているベトナム人を助けたい
長田だからこそできる「かけはしのメディア」を作りたい

と、力強く語っていました。

そんなかけはしのメディアとして企画するのが、仮想広告代理店【ベト通堂】です。この会社では、一口100円で社員となることができます。ほっとけないおじちゃんや、おばちゃん、学生、誰でも社員になれるのです。社員が持つベト通堂のオリジナルシールは、まさにほっとけないの証です。

また驚くことに、このプレゼンテーションの最後に「ベト通堂の社長を募集中です!」と宣言したあと、会場にいた男性が手を挙げ、晴れて社長が誕生しました。これには会場中がびっくり!! 大きな拍手が起こりました。こうしてベト通堂は”ほっとけない力”を原動力として、いよいよ動き出したのです。

「ほっとけない」と思ったそこのあなた、もう【ベト通堂】の社員ですよ!
ほっとけない方はこちら▷ KOBE MEME2019参加申し込み

 

 

ゴォーーーっという爆音とともに、突然ロケット発射の瞬間が大きなスクリーンに映し出されました。そうして壇上に姿を現したのは、作業着にヘルメットを身につけた男性たちです。

そう、彼らは【まち工場しらべ隊】、長田Cチームです。

彼らの活動は、まち工場をひたすらに調べること。そして、そこで得た知識や技術を地域と共有し、まち工場と住人の繋がりを見える化することを目指しています。

つまり地域らしさを受け継いでいく、まさにMEMEを未来へと繋げようという試みです。

例えば長田南部を町歩きしてみると長田地域には、シャッターの廃材を使って作れた花壇や、馬の足につける馬蹄を物干し竿を引っ掛ける金具にしたりと、気にしないと見逃してしまいそうだけど、ちょっとおかしい生活の知恵が至るところに点在しているそう。これこそまさに、まち工場と住人の関係性の表れなのです。

ゆくゆくはリサーチ活動から派生して、「まち工場マップを作る」「工場の見学ツアーを行う」「ものづくり基地を作る」などが予定されています。彼らの溢れ出すアイデアは、工場と人々を繋いだり、空き工場問題を解決したり、そんな可能性に満ちています。

もしかすると【まち工場しらべ隊】は将来的にまち工場と住人の繋がりを増やしたり、担い手のいない町工場の事業継承をしたり、ものづくりの技術や知見をまちに還元することができる革命的集団となるかもしれません。

実は彼らはプレゼン本番のついひと月程前に出来上がったチームで、この【まち工場しらべ隊】も産声をあげたばかりです。発表の日までたった一ヶ月足らずではありましたが、すでに町工場調べ隊バッチが作られていたり、と細部にも遊びが見えるトリを飾るのにはふさわしいプレゼンテーションの盛り上がりでした。

神戸下町のまちのものづくりの技術を繋げることで、彼らなら、いつかロケットも作れるのではないでしょうか? 無限の可能性を持つ少年のような彼らに、夢を乗せたくなる、そんな発表でした。

 

 

いかがでしたか?長田A・B・Cチームはそれぞれ異なった視点からまだ見ぬ長田と出会っていきました。ひとつの地域を対象に取り上げるとき、そこに広がるMEMEは無限なのかもしれません。

今後もフェイスブック(https://www.facebook.com/KOBEMEME2018/)を通じて各チームの活動をご紹介していきます。ぜひご注目ください!
————————————————————————————————————————-
来年度は今回発表したプランの事業化を目指します。それに伴い、現在新規メンバーを募集しております。ご興味のある方はぜひ下記のURLよりお申し込みください!

申し込みフォーム:https://goo.gl/forms/2YFYJTVdnwBwaelo1
KOBE MEMEウェブサイト:https://shitamachikobe.jp/kobememe/
(各チーム:〜発表(3月3日)までの道のり〜)
長田A(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/nagata_a/
長田B(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/nagata_b/
兵庫A(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/hyogoa/
兵庫B(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/hyogob/

3/3 KOBE MEME公開プレゼン【後半・長田編】

レポート:辻本衣菜(神戸大学インターン)

2019年3月3日、KOBEMEMEの今年度集大成である公開プレゼンテーションが新長田の劇場Art Theater dB KOBEにて開催されました。
前回のブログは兵庫A・Bチームのプランをお伝えしましたが、今回は長田チームのプレゼンテーションをご紹介します!
長田チームはA・B・Cの3つのグループに分かれて活動しています。それぞれが個性あふれる地域の文化的遺伝子=MEMEを見つけ、事業プランを発表してくれました。
兵庫チームのプラン内容・MEMEについては前回の記事をご覧ください。(前回の記事を読む

長田チームトップバッターは長田Aチーム。このチームの事業プランは【1000年続く文化 さかなの山のぼり】でした。

長田区南部にはいかなご漁で有名な長田港・駒ヶ林漁港がある一方、長田区のシンボルともいえる高取山も鎮座しています。これらを調査し、海と山を繋げて長田区をもっと楽しくしたいという想いのもと、「長田港のさかなを高取山へ」という楽しいアイデアが提案されました。

この、さかなが山をのぼる、というのは”輪投げ”の歴史に由来しています。
神戸は輪投げの発祥の地と言われていて高取山をはじめ、神戸の山々には投輪場が作られています。元々輪投げは外国の船乗りが船上で運動不足解消のために楽しんでいた遊びでした。それが地元の造船所など港近くで働く人たちの間で流行し、毎日登山という神戸の山登りの文化とともに山側にも広まったそうです。

ちなみに毎日登山も居留地にいた外国人の習慣を見習って神戸の山々で健康を目的に毎日登山する文化が浸透したそう。

この輪投げのように、長田港のさかなを山にのぼらせることで人やモノの流れを作り出し、もっと活発な交流が生み出せるのではないか、と長田Aチームは考えました。

具体的には、今後、地域の方々とハリボテでは”さかなみこし”を製作したり、「高取山でさかなを食べる輪」や「さかなの山のぼり農園」を開催するなど、海と山を繋ぐ企画が予定されています。

1000年続く文化、という未来へと繋がる夢の詰まった企画に、さかなを食べながら参加したくなる、そんな魅力的なプレゼンテーションでした。

 

 

 

 

続いての長田Bチームは”ほっとけない長田の人”をMEMEとして「ほっとけない長田の人×頑張っているベトナムの人による仮想広告代理店」をテーマに発表してくれました。

近頃、長田区にはベトナム料理店や食材店が増えており、この1年間で2軒がオープンしました。そもそも長田区とベトナムの人々の関係はどのように結ばれたのでしょうか。
この地域は戦後からケミカルシューズ産業やゴム産業などの地場産業によって支えられてきました。その発展に寄与したのが、1975年の戦争終結後に難民としてやってきたベトナム人だったのです。

フィールドワークや調査の結果、長田区は神戸市の中でも外国人居住者、特にベトナム人が多く、この土地で奮闘するベトナム人がたくさんいることはわかっています。そして人知れず頑張っているベトナム人を支えたいと考える人々もたくさん存在する、ということが分かりました。

そこで、

長田の人々の大きな魅力、“ほっとけない力”をもっと発揮して知ってもらいたい
頑張っているベトナム人を助けたい
長田だからこそできる「かけはしのメディア」を作りたい

と、力強く語っていました。

そんなかけはしのメディアとして企画するのが、仮想広告代理店【ベト通堂】です。この会社では、一口100円で社員となることができます。ほっとけないおじちゃんや、おばちゃん、学生、誰でも社員になれるのです。社員が持つベト通堂のオリジナルシールは、まさにほっとけないの証です。

また驚くことに、このプレゼンテーションの最後に「ベト通堂の社長を募集中です!」と宣言したあと、会場にいた男性が手を挙げ、晴れて社長が誕生しました。これには会場中がびっくり!! 大きな拍手が起こりました。こうしてベト通堂は”ほっとけない力”を原動力として、いよいよ動き出したのです。

「ほっとけない」と思ったそこのあなた、もう【ベト通堂】の社員ですよ!
ほっとけない方はこちら▷ KOBE MEME2019参加申し込み

 

 

ゴォーーーっという爆音とともに、突然ロケット発射の瞬間が大きなスクリーンに映し出されました。そうして壇上に姿を現したのは、作業着にヘルメットを身につけた男性たちです。

そう、彼らは【まち工場しらべ隊】、長田Cチームです。

彼らの活動は、まち工場をひたすらに調べること。そして、そこで得た知識や技術を地域と共有し、まち工場と住人の繋がりを見える化することを目指しています。

つまり地域らしさを受け継いでいく、まさにMEMEを未来へと繋げようという試みです。

例えば長田南部を町歩きしてみると長田地域には、シャッターの廃材を使って作れた花壇や、馬の足につける馬蹄を物干し竿を引っ掛ける金具にしたりと、気にしないと見逃してしまいそうだけど、ちょっとおかしい生活の知恵が至るところに点在しているそう。これこそまさに、まち工場と住人の関係性の表れなのです。

ゆくゆくはリサーチ活動から派生して、「まち工場マップを作る」「工場の見学ツアーを行う」「ものづくり基地を作る」などが予定されています。彼らの溢れ出すアイデアは、工場と人々を繋いだり、空き工場問題を解決したり、そんな可能性に満ちています。

もしかすると【まち工場しらべ隊】は将来的にまち工場と住人の繋がりを増やしたり、担い手のいない町工場の事業継承をしたり、ものづくりの技術や知見をまちに還元することができる革命的集団となるかもしれません。

実は彼らはプレゼン本番のついひと月程前に出来上がったチームで、この【まち工場しらべ隊】も産声をあげたばかりです。発表の日までたった一ヶ月足らずではありましたが、すでに町工場調べ隊バッチが作られていたり、と細部にも遊びが見えるトリを飾るのにはふさわしいプレゼンテーションの盛り上がりでした。

神戸下町のまちのものづくりの技術を繋げることで、彼らなら、いつかロケットも作れるのではないでしょうか? 無限の可能性を持つ少年のような彼らに、夢を乗せたくなる、そんな発表でした。

 

 

いかがでしたか?長田A・B・Cチームはそれぞれ異なった視点からまだ見ぬ長田と出会っていきました。ひとつの地域を対象に取り上げるとき、そこに広がるMEMEは無限なのかもしれません。

今後もフェイスブック(https://www.facebook.com/KOBEMEME2018/)を通じて各チームの活動をご紹介していきます。ぜひご注目ください!
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来年度は今回発表したプランの事業化を目指します。それに伴い、現在新規メンバーを募集しております。ご興味のある方はぜひ下記のURLよりお申し込みください!

申し込みフォーム:https://goo.gl/forms/2YFYJTVdnwBwaelo1
KOBE MEMEウェブサイト:https://shitamachikobe.jp/kobememe/
(各チーム:〜発表(3月3日)までの道のり〜)
長田A(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/nagata_a/
長田B(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/nagata_b/
兵庫A(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/hyogoa/
兵庫B(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/hyogob/

3/3 KOBE MEME公開プレゼン【前半・兵庫編】

レポート:辻本衣菜(神戸大学インターン)

2019年3月3日、【KOBE MEME2019 公開プレゼンテーション&交流会】が新長田の劇場Art Theater dB KOBEにて開催されました。

「地域の“遺伝子”を、未来へと引き継ぐ。」というテーマを掲げ、神戸の長田区や兵庫区を舞台として、クリエイター、地域住民、学生らが協働して半年間に渡って作り上げてきたプロジェクト。
兵庫A・兵庫B・長田A・長田B・長田Cの合計5つのチームそれぞれがMEME(ミーム)を探し出すために、まちを歩き、ヒアリング、リサーチを重ね構築してきたプロジェクトに、ついに命が吹き込まれたのです。

さて、“MEMEって何だろう?”と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
ここで1つ質問です。みなさんにとって「地域らしさ」とは何ですか?
お節介なおばちゃん、地域ラジオ、食べ物、様々なものを思い浮かべたのではありませんか?
そうです、それがMEMEです。

生物学者のリチャードドーキンス氏が生物学的遺伝子”GENE”に対し、文化的遺伝子を”MEME”と名付けました。そこから私たちは地域の中で脈々と受け継がれてきた「地域らしさ」のことを、地域のMEMEと呼んでいます。
地域のMEME、私たちのすぐそばにあるMEMEを拾い、掘り起こし、それを未来へと引き継いでいく。
そんな想いの詰まったKOBE MEMEの事業プランを、これから紹介しようと思います。

今回のプレゼンテーションのトップバッターは、兵庫Aチームでした。
事業テーマを「和田岬×本」とする彼女たちのプロジェクトはずばり、【和田岬文庫】です。


兵庫区の一番南側、大阪湾へと突出した和田岬はかつて海運で栄え、文化の入り口でした。現在は、三菱重工や川崎造船所をはじめとした工場地帯となっています。。しかし三菱の造船事業が縮小したことにより商店街へ来るお客さんも減り、日中は人の行き交わない閑散とした雰囲気になってしまっています。

一方で和田岬には角打の文化が根強く残っており、お酒を通した人々の交流が存在しています。
この角打から発想を得たのが【和田岬文庫】でした。

 

角打ちとは、酒屋の一角で立ち飲みするスタイルのこと。そのように、酒場の一角に本を置くことで、その本を手に取った人同士が密かに繋がってゆく。お酒だけではなく、本も人との出会いを生み出してくれるのではないかと、人々の出会いのきっかけを作りたいという兵庫Aチームの熱い想いが込められたプロジェクトです。

人と本、人と本の中の登場人物、そして人と人、本はこんなにも多くの出会いを与えてくれる、と言ったプレゼンターのキラキラと輝く表情は、とても印象的でした。

 

3月29日には和田岬ある笠松湯という銭湯にて【和田岬文庫】に関するリサーチ兼プレ企画「のれんジャック@笠松湯」が予定されています。事業実現に向けた彼女たちの活動に今後も目が離せません。ぜひお立ち寄りください!
詳細は追ってFacebookにてご案内します。
KOBEMEME Facebook

 

 

 

続いて、兵庫Bチームは「出町」というMEMEに注目し、【オープン型ゲストハウス「doya(どや)」】を提案しました。

そもそも兵庫津の出町とは歴史を辿ってみると、高度成長期に人口増加に伴って三ノ宮から派生した町であると表現できる場所でした。
大輪田泊が栄えた平家の時代経て、交易や川崎重工をはじめとした造船業で栄えたこの場所は宿場町として、ドヤと呼ばれるカプセルホテルのような、毎日寝泊りをするだけの場所が存在していたそうです。
この歴史から着想を得て考え出したのが、【オープン型ゲストハウス「doya(どや)」】です。

このdoyaは、現在三ノ宮で終電を気にしながら遊ぶ人々を救う宿となるかもしれません。というのもこの辺りは宿泊施設が少なく、
三ノ宮の隣にある兵庫だからこそできる、出町というMEMEがあるからこそできるプロジェクトなのです。

しかし、ゲストハウスをゼロから運営するのは簡単ではありません。
まずは知り合いだけの小さなコミュニティから始めたり、易しいルールを設定するなど工夫をすれば実現の希望は見えてきます。

「集まる・繋がる・泊まる」

こうして兵庫はもっと面白くなる、かつて人口増加によって“出た町”を、新たな仕掛けや仕組みで濃い町にする、そしてこの町に恋してもらうのです。

“皆さん、こんなんで、どや?”

会場の笑いとともに兵庫Bチームのプレゼンテーションは幕を閉じました。

兵庫の地をクリエイティブな視点で見つめなおすことの面白さはこの2チームが一番よく知っているでしょう。兵庫の歴史と現在の課題が見事に掛け合わさった発表でした。

次回は長田A・B・Cチームのプラン、次々回は全体講評についてご紹介します!
どうぞお楽しみに!

———————————-

来年度は今回発表したプランの事業化を目指します。それに伴い、現在新規メンバーを募集しております。ご興味のある方はぜひ下記のURLよりお申し込みください!
申し込みフォーム:https://goo.gl/forms/2YFYJTVdnwBwaelo1
KOBE MEMEウェブサイト:https://shitamachikobe.jp/kobememe/

3/3 KOBE MEME公開プレゼン【前半・兵庫編】

レポート:辻本衣菜(神戸大学インターン)

2019年3月3日、【KOBE MEME2019 公開プレゼンテーション&交流会】が新長田の劇場Art Theater dB KOBEにて開催されました。

「地域の“遺伝子”を、未来へと引き継ぐ。」というテーマを掲げ、神戸の長田区や兵庫区を舞台として、クリエイター、地域住民、学生らが協働して半年間に渡って作り上げてきたプロジェクト。
兵庫A・兵庫B・長田A・長田B・長田Cの合計5つのチームそれぞれがMEME(ミーム)を探し出すために、まちを歩き、ヒアリング、リサーチを重ね構築してきたプロジェクトに、ついに命が吹き込まれたのです。

さて、“MEMEって何だろう?”と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
ここで1つ質問です。みなさんにとって「地域らしさ」とは何ですか?
お節介なおばちゃん、地域ラジオ、食べ物、様々なものを思い浮かべたのではありませんか?
そうです、それがMEMEです。

生物学者のリチャードドーキンス氏が生物学的遺伝子”GENE”に対し、文化的遺伝子を”MEME”と名付けました。そこから私たちは地域の中で脈々と受け継がれてきた「地域らしさ」のことを、地域のMEMEと呼んでいます。
地域のMEME、私たちのすぐそばにあるMEMEを拾い、掘り起こし、それを未来へと引き継いでいく。
そんな想いの詰まったKOBE MEMEの事業プランを、これから紹介しようと思います。

今回のプレゼンテーションのトップバッターは、兵庫Aチームでした。
事業テーマを「和田岬×本」とする彼女たちのプロジェクトはずばり、【和田岬文庫】です。


兵庫区の一番南側、大阪湾へと突出した和田岬はかつて海運で栄え、文化の入り口でした。現在は、三菱重工や川崎造船所をはじめとした工場地帯となっています。。しかし三菱の造船事業が縮小したことにより商店街へ来るお客さんも減り、日中は人の行き交わない閑散とした雰囲気になってしまっています。

一方で和田岬には角打の文化が根強く残っており、お酒を通した人々の交流が存在しています。
この角打から発想を得たのが【和田岬文庫】でした。

 

角打ちとは、酒屋の一角で立ち飲みするスタイルのこと。そのように、酒場の一角に本を置くことで、その本を手に取った人同士が密かに繋がってゆく。お酒だけではなく、本も人との出会いを生み出してくれるのではないかと、人々の出会いのきっかけを作りたいという兵庫Aチームの熱い想いが込められたプロジェクトです。

人と本、人と本の中の登場人物、そして人と人、本はこんなにも多くの出会いを与えてくれる、と言ったプレゼンターのキラキラと輝く表情は、とても印象的でした。

 

3月29日には和田岬ある笠松湯という銭湯にて【和田岬文庫】に関するリサーチ兼プレ企画「のれんジャック@笠松湯」が予定されています。事業実現に向けた彼女たちの活動に今後も目が離せません。ぜひお立ち寄りください!
詳細は追ってFacebookにてご案内します。
KOBEMEME Facebook

 

 

 

続いて、兵庫Bチームは「出町」というMEMEに注目し、【オープン型ゲストハウス「doya(どや)」】を提案しました。

そもそも兵庫津の出町とは歴史を辿ってみると、高度成長期に人口増加に伴って三ノ宮から派生した町であると表現できる場所でした。
大輪田泊が栄えた平家の時代経て、交易や川崎重工をはじめとした造船業で栄えたこの場所は宿場町として、ドヤと呼ばれるカプセルホテルのような、毎日寝泊りをするだけの場所が存在していたそうです。
この歴史から着想を得て考え出したのが、【オープン型ゲストハウス「doya(どや)」】です。

このdoyaは、現在三ノ宮で終電を気にしながら遊ぶ人々を救う宿となるかもしれません。というのもこの辺りは宿泊施設が少なく、
三ノ宮の隣にある兵庫だからこそできる、出町というMEMEがあるからこそできるプロジェクトなのです。

しかし、ゲストハウスをゼロから運営するのは簡単ではありません。
まずは知り合いだけの小さなコミュニティから始めたり、易しいルールを設定するなど工夫をすれば実現の希望は見えてきます。

「集まる・繋がる・泊まる」

こうして兵庫はもっと面白くなる、かつて人口増加によって“出た町”を、新たな仕掛けや仕組みで濃い町にする、そしてこの町に恋してもらうのです。

“皆さん、こんなんで、どや?”

会場の笑いとともに兵庫Bチームのプレゼンテーションは幕を閉じました。

兵庫の地をクリエイティブな視点で見つめなおすことの面白さはこの2チームが一番よく知っているでしょう。兵庫の歴史と現在の課題が見事に掛け合わさった発表でした。

次回は長田A・B・Cチームのプラン、次々回は全体講評についてご紹介します!
どうぞお楽しみに!

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来年度は今回発表したプランの事業化を目指します。それに伴い、現在新規メンバーを募集しております。ご興味のある方はぜひ下記のURLよりお申し込みください!
申し込みフォーム:https://goo.gl/forms/2YFYJTVdnwBwaelo1
KOBE MEMEウェブサイト:https://shitamachikobe.jp/kobememe/

3/3 KOBE MEME 公開プレゼンテーション&交流会 「地域の“遺伝子”を、未来へと引き継ぐ」

3月3日に新長田にある劇場Art Theater dB KOBEにてKOBE MEMEの今年度集大成を発表する「KOBE MEME公開プレゼンテーション」を開催します。

昨年9月から始動した「KOBE MEME(コウベミーム)」は、神戸内外のクリエイターや大学生、地域住民、約25名が集まり、レクチャーやフィールドワークを行いながら、地域の魅力や歴史、風土を学び、この地域だからこそできるプロジェクトを立ち上げるべく、5つのチームがそれぞれに構想を練り上げてきました。
このプロジェクトでは、芸術祭といった一時のイベントではなく、日常的に続くプロジェクト、事業を生み出すことで、兵庫区南部や長田区南部といった地域がより日常的に盛り上がっていくきっかけをつくっていくことを趣旨としています。

全くこの町を知らないところから始まった人が多い中、遠方からも何度も町に足を運び、実際に歩いてリサーチを行い、地元の方へのヒアリングを繰り返し、町のこれまで紡がれてきた歴史や文化を紐解いていきました。各グループによって、町の見方や広い歴史の中の切り取り方も全く異なっており、約半年間にわたって行ってきたリサーチから生み出されたプロジェクトや事業は各グループの色が出るとてもクリエイティブで面白いものになっています。
これらの地域に脈々と受け継がれてきたものは何か、また課題となっているのは何か、クリエイティブな視点を掛け合わせることで生まれた新たな発想を公開プレゼンテーションにて発表します!
当日はゲストをお招きし、実施へ向けてフィードバックをいただきます。また、来年度の事業化フェーズのスケジュールを告知し、追加メンバーの募集もいたします。
もしKOBE MEMEにご興味のある方、地域からプロジェクトが立ち上がるプロセスに興味がある方は是非お越しください!

長田区・兵庫区への愛がたっぷり詰まったプロジェクトの行く末をどうぞお見逃しなく!たくさんの方のご来場をお待ちしております!

—————————————————————-

KOBE MEME 公開プレゼンテーション&交流会
【地域の“遺伝子”を、未来へと引き継ぐ】

■日時 2019年3月3日(日)13:00~17:00(受付は12:30~)、17:00〜19:00(交流会)
■会場 ArtTheater dB KOBE(長田区久保町6-1-1アスタくにづか4番館4階)
■料金 無料(予約優先)
■予約 https://goo.gl/forms/HDWy3Y5o4gBDBDEk1(3/1締切)
■お問い合わせ先 shinnagata.artcommons@gmail.com(新長田アートコモンズ実行委員会)

■ゲスト
小泉寛明(神戸R不動産 | 有限会社ルーシー)
天宅正(グラフィックデザイナー・アートディレクター|神戸市クリエイティブディレクター)
■メンター
やまぐちくにこ(淡路島アートセンター|Fkeys+ 代表)
小嶋新(NPO法人しゃらく インキュベーション担当執行役員)
永井友理(株式会社フェリシモ|女子DIY部)
角野史和(一級建築士事務所こと・デザイン|建築士・まちづくりコンサルタント)
前畑洋平(NPO法人J-heritage|産業遺産コーディネーター)
山下香(流通科学大学准教授|建築家)
横堀ふみ(NPO法人DANCE BOX プログラムディレクター)
首藤義敬(株式会社Happy 代表取締役)
合田昌宏(r3|創る人)
■ディレクター
影山裕樹(千十一編集室|編集者)
■プロデューサー
岩本順平(DOR|写真家・ディレクター)

■主催   新長田アートコモンズ実行委員会、DANCE BOX
■企画協力 千十一編集室、一般社団法人DOR、合同会社r3
■協力   株式会社Happy、ヨンバンカンニカイ
■助成   平成30年度文化庁劇場音楽堂活性化事業(ArtTheater dB KOBE)、兵庫県政150周年記念事業、神戸市「協働と参画」推進助成、大阪コミュニティ財団

02/16 KOBE MEME 最終回ワークショップ

2019年2月16日、3月3日の公開プレゼンテーション前最後のワークショップを開催しました!
前回のワークショップを経て活動に拍車がかかった各チーム。
この日まで仕事や学校がある中、役割分担をしながら作業を進めてきました。
(前回の様子はこちらhttps://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/190119-2/

レポート:川縁芽偉子

この日も本番同様、15分間のプレゼンテーションが行われました!
プロデューサー、ディレクター、メンター、スタッフ全員を前にしながらの発表に参加者の皆さんは緊張されていたようです。
メンターの横堀ふみさんと小嶋新さんにもお越しいただきました。
このまちのエキスパートの細やかな指摘に、運営側も「なるほど」といった様子。
やはり”先輩”からの助言はいつでも頼りになるものです。
(おふたりのプロフィールは[プロジェクトメンバー]をご覧ください!)

メンターの皆さまからいただいた意見を大きく分けると以下の3つ。

<このまちならでは>
2018年9月のキックオフ説明会から約半年経った今こそ、積み重ねてきた聞き込み・文献調査が実を結ぶときです。長田区/兵庫区らしさがそこにあるかどうか、確かめながら進められました。
チームで作業するにあたって、ひとりひとりのアイデアを収斂することが一番困難な作業だったかもしれません。その反面、人と人をつなぐメディアは実に多種多様だということを実感できました。本番では、この町ならではのエピソードを聞けるのが楽しみです!

<プレゼンテーションのスキル>
プランの内容を的確に届けるために ①スライドのビジュアル ②原稿作り にも気を配ることが必要です。せっかくのリサーチの成果も、伝える技術がなければお蔵入りになりかねません。具体的には、写真や文字は大きく視認できるように・アドリブに頼らないなど。お客さんの反応もしっかり受け止める双方向のプレゼンテーションを期待したいです!

<収益モデル>
事業化についてのコメントも多くありました。実際に運営することをイメージできるようなものにしていかなければいけません。どのチームも大きな壁にぶつかっているようでした。すでにまちにある事業を参考にすると良いかもしれません。ディレクター・影山さんの一言、「突飛だけど実現性のあるプランで」という言葉に怯えている参加者もいたとか……。

しかしその点がこのプロジェクトの醍醐味でもあります。
プランの発表をしてからが本当のスタート。

一番最初のワークショップから引き継がれてきた驚きや発見が事業プランとなりました。
参加者の皆さんが自らの足で集めたまちの歴史は強度を持った土台となっているはずです。
そして賛同者を募り、実現し、事業が日常に根付いていく。
そんな未来に筆者も心を弾ませています…!

長田区/兵庫区の”文化的遺伝子”=MEMEはどのような進化を遂げるのでしょうか。

プラン発表まで約一週間!最後の追い込みです。

【これまでのレポート】
第1回ワークショップ(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/181110-2/
第2回ワークショップ(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/181222-2/
第3回ワークショップ(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/190119-2/
長田A(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/nagata_a/
長田B(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/nagata_b/
兵庫A(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/hyogoa/
兵庫B(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/hyogob/

【公開プレゼンテーション&交流会について】
■詳細 https://www.facebook.com/pg/KOBEMEME2018/events/
■ご予約(予約優先・無料) https://goo.gl/forms/HDWy3Y5o4gBDBDEk1(3/1締切)

02/16 KOBE MEME 最終回ワークショップ

2019年2月16日、3月3日の公開プレゼンテーション前最後のワークショップを開催しました!
前回のワークショップを経て活動に拍車がかかった各チーム。
この日まで仕事や学校がある中、役割分担をしながら作業を進めてきました。
(前回の様子はこちらhttps://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/190119-2/

レポート:川縁芽偉子

この日も本番同様、15分間のプレゼンテーションが行われました!
プロデューサー、ディレクター、メンター、スタッフ全員を前にしながらの発表に参加者の皆さんは緊張されていたようです。
メンターの横堀ふみさんと小嶋新さんにもお越しいただきました。
このまちのエキスパートの細やかな指摘に、運営側も「なるほど」といった様子。
やはり”先輩”からの助言はいつでも頼りになるものです。
(おふたりのプロフィールは[プロジェクトメンバー]をご覧ください!)

メンターの皆さまからいただいた意見を大きく分けると以下の3つ。

<このまちならでは>
2018年9月のキックオフ説明会から約半年経った今こそ、積み重ねてきた聞き込み・文献調査が実を結ぶときです。長田区/兵庫区らしさがそこにあるかどうか、確かめながら進められました。
チームで作業するにあたって、ひとりひとりのアイデアを収斂することが一番困難な作業だったかもしれません。その反面、人と人をつなぐメディアは実に多種多様だということを実感できました。本番では、この町ならではのエピソードを聞けるのが楽しみです!

<プレゼンテーションのスキル>
プランの内容を的確に届けるために ①スライドのビジュアル ②原稿作り にも気を配ることが必要です。せっかくのリサーチの成果も、伝える技術がなければお蔵入りになりかねません。具体的には、写真や文字は大きく視認できるように・アドリブに頼らないなど。お客さんの反応もしっかり受け止める双方向のプレゼンテーションを期待したいです!

<収益モデル>
事業化についてのコメントも多くありました。実際に運営することをイメージできるようなものにしていかなければいけません。どのチームも大きな壁にぶつかっているようでした。すでにまちにある事業を参考にすると良いかもしれません。ディレクター・影山さんの一言、「突飛だけど実現性のあるプランで」という言葉に怯えている参加者もいたとか……。

しかしその点がこのプロジェクトの醍醐味でもあります。
プランの発表をしてからが本当のスタート。

一番最初のワークショップから引き継がれてきた驚きや発見が事業プランとなりました。
参加者の皆さんが自らの足で集めたまちの歴史は強度を持った土台となっているはずです。
そして賛同者を募り、実現し、事業が日常に根付いていく。
そんな未来に筆者も心を弾ませています…!

長田区/兵庫区の”文化的遺伝子”=MEMEはどのような進化を遂げるのでしょうか。

プラン発表まで約一週間!最後の追い込みです。

【これまでのレポート】
第1回ワークショップ(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/181110-2/
第2回ワークショップ(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/181222-2/
第3回ワークショップ(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/190119-2/
長田A(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/nagata_a/
長田B(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/nagata_b/
兵庫A(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/hyogoa/
兵庫B(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/hyogob/

【公開プレゼンテーション&交流会について】
■詳細 https://www.facebook.com/pg/KOBEMEME2018/events/
■ご予約(予約優先・無料) https://goo.gl/forms/HDWy3Y5o4gBDBDEk1(3/1締切)

1/19 KOBE MEME 第3回メンターワーク

2019年1月19日、KOBE MEME第3回メンターワークを開催しました。今回は、構想中のプランに対するアプローチではなく、MEMEプロジェクトを進める上でメンバーが今最も“頭を悩ませていること”を掘り下げるワークを行いました。

この日は、グループワークの時間を十分に取るため、長田チーム・兵庫チームと時間を分け2部制での実施。冒頭では、3月3日の公開プレゼンテーションと同様に、パワーポイントを用いて15分間のプレゼンを行っていただきました。今回は、メンターだけでなく、長田区の町歩き本を執筆された和田幹司さんと長田区子ども会連合会長をされている山本豊久さんにお越しいただき、プレゼンに対する講評をいただきました。どのプランにもノリよく意見をくださり、各チーム手応えを掴んだようでした。

プレゼン後は、メンターの角野史和さんにファシリテーターをお願いし、各グループでワークを行いました。今回のテーマは“今最も頭を悩ませていること”。プランをより良くするために、まずはメンバーの悩みを明らかにし、公開プレゼンまでの活動を円滑にしようという考えです。
角野さんが考えた今回のワークの手順は以下の通り。
1. メンバー・チームメンターがから一人ずつ最も頭を悩ませていることを表明する
2. オーディエンスが悩みを掘り下げ明文化する
3. 悩みに応えるアイデアやプロセスをみんなで考える

ポストイットに悩みを書き出しながら、みんなでブレインストーミングを行いました。悩みの中には「このプランはなんのためにやってるのだろうか」と原点に立ち返るものも。それぞれの悩みや意見に改めてじっくり耳を傾けることで各チーム足並みが揃ったようでした。

40分間のグループワーク後は、各チーム今回の話し合いで出てきた課題、そしてそれに応える具体的なプロセスを発表し、今後の活動の意思表明を行いました。
グループワーク後に実施したアンケートには、今回のワークが最も印象的だったと回答する人が多数おり、グループ活動において目的に向かった話し合いだけでなく、それぞれの意見を聞き尊重し合うことが大切だと改めて感じました。

3月3日の公開プレゼンテーションまであとわずか。是非今年度のプロジェクトの結末にご立ち会いください。

 

KOBE MEME公開プレゼンテーション&交流会

〜地域の“遺伝子”を、未来へと引き継ぐ〜

兵庫県神戸市にある長田区と兵庫区にて、参加者は半年以上のリサーチを重ねてきました。これらの地域に脈々と受け継がれてきたものや課題とは何か、クリエイティブな視点を掛け合わせることで生まれた新たな事業計画をこのプレゼンテーションで発表します。
当日はゲストをお招きし、事業化へ向けてフィードバックをいただきます。
また、来年度の事業化フェーズのスケジュールを告知し、追加メンバーの募集もいたします。
長田区・兵庫区への愛がたっぷり詰まったプロジェクトの行く末をどうぞお見逃しなく!
たくさんの方のご来場をお待ちしております!

開催概要:KOBE MEME公開プレゼンテーション&交流会

■日時 2019年3月3日(日)13:00~17:00(受付は12:30~)、17:00〜19:00(交流会)
■会場 ArtTheater dB KOBE(長田区久保町6-1-1アスタくにづか4番館4階)
■料金 無料(予約優先)
■予約 https://goo.gl/forms/HDWy3Y5o4gBDBDEk1(3/1締切)
■お問い合わせ先 shinnagata.artcommons@gmail.com(新長田アートコモンズ実行委員会)

■ゲスト
小泉寛明(神戸R不動産 | 有限会社ルーシー)
天宅正(グラフィックデザイナー・アートディレクター|神戸市クリエイティブディレクター)

■主催   新長田アートコモンズ実行委員会、DANCE BOX
■企画協力 千十一編集室、一般社団法人DOR、合同会社r3
■協力   株式会社Happy、ヨンバンカンニカイ
■助成   平成30年度文化庁劇場音楽堂活性化事業(ArtTheater dB KOBE)、兵庫県政150周年記念事業、神戸市「協働と参画」推進助成、大阪コミュニティ財団

兵庫Bチーム |活動レポート

9月23日に実施したKOBE MEME初回レクチャー以降、参加者らは地域ごとに4つのチームに分かれてプランを構想しています。(「長田A」、「長田B」、「兵庫A」、「兵庫B」)メンバーによる活動レポート第4弾は兵庫Bチーム中尾泉美さんのレポートです。

兵庫 Bチーム|活動レポート

レポート:中尾泉美

兵庫Bチーム全体では、9〜12月のワークショップや活動報告の他、2回のミーティング(10月、1月)と1回の兵庫区歩き(11月)を行いました。

<9月初回グループワーク>

少しのディスカッションを経て、兵庫南部について何も知らないメンバーの中ででてきたイメージは【運河】。
これをMEMEに考え出したプランは【車内(JR和田岬線)・船内(運河の上)を貸し切る】ことでした。
貸し切った中で、外呑みや宿泊が出来たり、木材を使った筏作りや養殖真珠を使って何か個性的な事業ができないかと発表しました。

 

<10月〜1月の活動やグループワーク>

10月に行われた下町芸術大学での和田岬・兵庫津(ひょうごのつ)を巡るツアーを受けた後にチームが注目したのは、賑やかな神戸駅・ハーバーランドの裏手にある「西出町・東出町」でした。以降調査エリアをこの町に絞って活動していくことになります。
・お好み焼き「ひかり」
・ホルモン焼き「中畑商店」
・駄菓子屋「六條商店」
・喫茶「思いつき」
・喫茶「ふるさと」
・タバコ屋「藤田タバコ店」

上記は町内の中で利用や聞き込みした店舗です。
お忙しいお店もある等、すべてのところでお話が伺えたわけではありません。
しかし実際に利用し楽しむことも大切なワークと感じ、続けていきました。

調査を進める中で、「頼介伝」というこの町出身の無名の起業家の生涯と神戸の近代史が照らし合わさったような著作に出会えたり、朝・昼・夜の町の姿を通して商店の利用度合いや、時間によって変わる風景を感じることができました。

町をしっかり歩いた後に図書館の書物やインターネットを介して調査を行ないました。歴史の概要、民話・民謡、地名の由来などで小さな町一つ切り取っただけでしたが、兵庫港(兵庫津・大輪田泊)との関わり、それに付随する神戸港との繋がりが広く見え、マクロとミクロの情報収拾が必要であることを深く感じさせられました。

1月現在大きなプランはみえてきた状態ですが、この町らしい文化的な要素(MEME/ミーム)を未だ掴み切ることができていないのが現状です。(ワークを通して様々なポイントを掴むことはできているのですが、「これだ!」というものを見つけることができていない、という感覚です。)

チーム全体として分担された役割が偏り、なかなかうまく進んでいかないこともまだまだ多くあります。けれども町への理解を深めることを通して、全員が楽しみながら3月のプレゼンテーション発表会まで進んでいければ良いなと思います。また、何よりメンバーが「町を歩くこと・知ることに対して情熱や楽しさを失わないこと」に重きを置き、残り一ヶ月と少しを過ごしていきたいと思っています。

それでは、以下活動の中でメンバーが感じた「兵庫南部の魅力」について少し記しております。
ご興味ございましたらご一読の上、是非3月3日の発表会にお越しいただければと思います。
ご清覧有難うございました。

=====

兵庫区西出町・東出町には市場の名残や3つの稲荷神社、2つの公園や小さな船着場があり、その近くには鉄工所をはじめとする町工場も見つけることが出来ます。船着き場の東側をみれば、今もなお製作されている川崎重工製潜水艦の作業等も時々覗くことができます。取り壊されたアーケードの一角に残る商店を中心に飲食店は活気があり、町の人々に愛されています。
一見、昭和風情の残る平家やアパートと、新しく建てられた家やマンションが混じった静かな住宅地にしか見えません。しかしそれがこの町の<隠された魅力>でした。

町のどこからでもみえる”KAWASAKI”の赤いロゴ。
かつて明治政府によって造船の振興を目的として設けられた製作所があり、これを川崎側へ貸与する形で川崎造船所(現:川崎重工業株式会社)が創設されました。
これを中心に町は造船関連の下請け企業で賑わい、かつ正規雇用者だけでなく非正規雇用者(日雇い労働者)も多くいました。彼らは仕事の前後に市場やその周辺の喫茶店・立ち飲み屋(角打)を利用していたようです。町中にはカプセルホテルのように狭く寝るためだけの日雇い労働者向け簡易宿である「ドヤ」が並んでいました。

 

それから町にとっても大きなものだったのが「兵庫津(ひょうごのつ)・兵庫港」の存在でした。これは神戸の中心地の歴史とも関わる、神戸にとって「大きな存在」でもあったのです。

このような町の歴史的な事実は、多くの人に良い共感が得られないかもしれないけれども、何も知らない私たちとっての<魅力>となっていきました。
知れば知るほど深みが出てくる「兵庫区南部の歴史の壮大さ」。
ここには人を惹きつける引力が起こっているようでした。
(続きは発表会にてご確認ください)

12/22 KOBE MEME 第2回メンターワーク

レポート:カワブチメイコ

前回のワークショップから早一ヶ月。2018年12月22日【KOBE MEME 第2回メンターワーク】が開催されました。
この日は2019年3月3日に行われる最終プレゼンテーションを想定し、タイムを測りながら行いました。難なく発表をこなすグループの代表の皆さんでしたが、後からお話を伺うと「緊張した!」「時間配分が難しい」という声が上がりました。事業の中身はもちろんのこと、その魅力を最大限に伝えるためにプレゼンテーションの練習も必要なのだなぁと考えさせられます。

各チームの特色あるプランに対してメンターのみなさんは
「下町らしいけれど、長田区・兵庫区らしさってどこにあるの?」
「地元の図書館で郷土資料を探るとよい」
など多くのアドバイスをおひとりずつ各チームに伝えてゆきます。

筆者自身がなるほどと思ったのは「行政の区割りで考えすぎではないか」という意見でした。長田区・兵庫区は文化圏としての繋がりが強く切り離せない関係性だということです。そのためワークショップ後には両チームでの意見交換が行われる場面もありました。

また地元の方々が何を望んでいるかについて考える際、あえて「どのような人の介入を拒んでいるのか」「住んでいるまちの何が不満なのか」というネガティブな側面から考えていくことも有効です。

もちろん自分たちの興味がなければ何も始まりません。スタート時にはよそ者だった参加者のみなさんは今ではまちの課題を”自分ごと”として捉え事業を考えています。地域に脈々と受け継がれてきたものを掬い、現代的な視点を掛け合わせること、これこそがMEMEプロジェクトの醍醐味なのではないでしょうか。

 

この日は全グループのプレゼンテーション+講評のあと、プロデューサーとメンターのみなさんが事業を進める上で大切にしていることを伺いました。今回はそれら読者の皆さんにお伝えしていきます!

岩本順平さん(KOBE MEMEプロデューサー) 『諦めずに対話すること 難しい場合は、プランを変えてでも止めないこと』
プランを組み立てる過程でつまずいてしまうことは誰にでもあります。それでも地元の人や同業者との対話の中にヒントは転がっているものです。この先の実践の場においてもプランを変えることを恐れずに!というアドバイスもありました。

合田昌宏さん(メンター)『我が家の日常を豊かに』
「はじめは合田家のためだった」と合田さんは切り出しました。PTA会長やお店の引き継ぎなどまちの役を引き受けることで次第に人々の輪が広がり、今では合田さん自身が地元の人を繋ぐ架け橋となっています。積極的に異業種との交流を図る点もポイントです。場所や資金だけではなく家族というストーリーの共有も事業の魅力となるのだと思いました。

首藤義敬さん(メンター)『違和感が三つ以上重なるとどーでもよくなる』
最初に聞いたときは声を上げて笑ってしまいました(笑) でも、確かにそうなんです。集団で物事を一緒に進めなければいけないとき、その中で3人以上がちんぷんかんぷんなことを言っている人がいたらどうなるでしょうか。全てを理解することに全力を注ぐより折り合いをつけていこうという気持ちになりませんか?「どうでもよくなる」とは投げやりな意味ではなく、互いの最大公約数を見つけるために必要な作業なのかもしれません。

永井友里さん(メンター)『三方よし』
こちらは永井さんが働く株式会社フェリシモの理念でもあります。自分たち×お客さん×地域の人、みんなが幸せになれるように、事業を進める主体のみならず共同事業者とお客さんにも喜んでもらえるようなことをしなければいけません。誰に何を還元していくのか、ターゲットの重要さについて改めて気がつくことができました。

山下香さん(メンター)『取り巻きをどう作るか』
おかんアートといえば山下さん!”おかん”への愛や情熱をもって協力してくれる人、やりたいからやる人をつくっていくことが鍵だとお話しいただきました。(*去年のおかんアート展には筆者も伺いましたが、おかんのみなさんや、おかんアートが好き!というスタッフのみなさん気持ちが会場内に溢れていてとても幸せな気持ちになりました。そこで購入したお財布と名刺入れは今でも大切に使っております♡)

小嶋新さん(メンター)『はじめの仮説的アイディアをいかに素早く、大胆に軌道修正できるか』
当初描いていたイメージと現実のニーズのズレが見えたときそれを認め方向性を見直すことができるのか。事業を考える中で乗り越えるべき試練だと思います。この日の最後に行われたチームごとの話し合いにおいても”大胆に”進めることがキーワードとなっていました。

以上のようにメンターや地元関係者のアドバイスを受けながら、参加者のみなさんは3月の最終プレゼンテーションとその先へ向けて奮闘しております。画一化された理論を当てはめるのではない、地域と積極的に関わっていくからこそ作られる新たな事業をぜひご覧ください!

★各チームのレポート★
長田A(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/nagata_a/
長田B(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/nagata_b/
兵庫A(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/hyogoa/
(兵庫Bチームは近日公開予定です。どうぞお楽しみに!)

次回のグループワークでは地元の方も交えて意見交換を行います。ぜひお越しください!
■ KOBE MEME 第3回グループワーク概要
日時:1月19日(土)14:00-17:00
場所:ヨンバンカンニカイ(長田区久保町6-1-1アスタくにづか4番館2階コワーキングスペース)

12/22 KOBE MEME 第2回メンターワーク

レポート:カワブチメイコ

前回のワークショップから早一ヶ月。2018年12月22日【KOBE MEME 第2回メンターワーク】が開催されました。
この日は2019年3月3日に行われる最終プレゼンテーションを想定し、タイムを測りながら行いました。難なく発表をこなすグループの代表の皆さんでしたが、後からお話を伺うと「緊張した!」「時間配分が難しい」という声が上がりました。事業の中身はもちろんのこと、その魅力を最大限に伝えるためにプレゼンテーションの練習も必要なのだなぁと考えさせられます。

各チームの特色あるプランに対してメンターのみなさんは
「下町らしいけれど、長田区・兵庫区らしさってどこにあるの?」
「地元の図書館で郷土資料を探るとよい」
など多くのアドバイスをおひとりずつ各チームに伝えてゆきます。

筆者自身がなるほどと思ったのは「行政の区割りで考えすぎではないか」という意見でした。長田区・兵庫区は文化圏としての繋がりが強く切り離せない関係性だということです。そのためワークショップ後には両チームでの意見交換が行われる場面もありました。

また地元の方々が何を望んでいるかについて考える際、あえて「どのような人の介入を拒んでいるのか」「住んでいるまちの何が不満なのか」というネガティブな側面から考えていくことも有効です。

もちろん自分たちの興味がなければ何も始まりません。スタート時にはよそ者だった参加者のみなさんは今ではまちの課題を”自分ごと”として捉え事業を考えています。地域に脈々と受け継がれてきたものを掬い、現代的な視点を掛け合わせること、これこそがMEMEプロジェクトの醍醐味なのではないでしょうか。

 

この日は全グループのプレゼンテーション+講評のあと、プロデューサーとメンターのみなさんが事業を進める上で大切にしていることを伺いました。今回はそれら読者の皆さんにお伝えしていきます!

岩本順平さん(KOBE MEMEプロデューサー) 『諦めずに対話すること 難しい場合は、プランを変えてでも止めないこと』
プランを組み立てる過程でつまずいてしまうことは誰にでもあります。それでも地元の人や同業者との対話の中にヒントは転がっているものです。この先の実践の場においてもプランを変えることを恐れずに!というアドバイスもありました。

合田昌宏さん(メンター)『我が家の日常を豊かに』
「はじめは合田家のためだった」と合田さんは切り出しました。PTA会長やお店の引き継ぎなどまちの役を引き受けることで次第に人々の輪が広がり、今では合田さん自身が地元の人を繋ぐ架け橋となっています。積極的に異業種との交流を図る点もポイントです。場所や資金だけではなく家族というストーリーの共有も事業の魅力となるのだと思いました。

首藤義敬さん(メンター)『違和感が三つ以上重なるとどーでもよくなる』
最初に聞いたときは声を上げて笑ってしまいました(笑) でも、確かにそうなんです。集団で物事を一緒に進めなければいけないとき、その中で3人以上がちんぷんかんぷんなことを言っている人がいたらどうなるでしょうか。全てを理解することに全力を注ぐより折り合いをつけていこうという気持ちになりませんか?「どうでもよくなる」とは投げやりな意味ではなく、互いの最大公約数を見つけるために必要な作業なのかもしれません。

永井友里さん(メンター)『三方よし』
こちらは永井さんが働く株式会社フェリシモの理念でもあります。自分たち×お客さん×地域の人、みんなが幸せになれるように、事業を進める主体のみならず共同事業者とお客さんにも喜んでもらえるようなことをしなければいけません。誰に何を還元していくのか、ターゲットの重要さについて改めて気がつくことができました。

山下香さん(メンター)『取り巻きをどう作るか』
おかんアートといえば山下さん!”おかん”への愛や情熱をもって協力してくれる人、やりたいからやる人をつくっていくことが鍵だとお話しいただきました。(*去年のおかんアート展には筆者も伺いましたが、おかんのみなさんや、おかんアートが好き!というスタッフのみなさん気持ちが会場内に溢れていてとても幸せな気持ちになりました。そこで購入したお財布と名刺入れは今でも大切に使っております♡)

小嶋新さん(メンター)『はじめの仮説的アイディアをいかに素早く、大胆に軌道修正できるか』
当初描いていたイメージと現実のニーズのズレが見えたときそれを認め方向性を見直すことができるのか。事業を考える中で乗り越えるべき試練だと思います。この日の最後に行われたチームごとの話し合いにおいても”大胆に”進めることがキーワードとなっていました。

以上のようにメンターや地元関係者のアドバイスを受けながら、参加者のみなさんは3月の最終プレゼンテーションとその先へ向けて奮闘しております。画一化された理論を当てはめるのではない、地域と積極的に関わっていくからこそ作られる新たな事業をぜひご覧ください!

★各チームのレポート★
長田A(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/nagata_a/
長田B(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/nagata_b/
兵庫A(https://shitamachikobe.jp/kobememe_blog/hyogoa/
(兵庫Bチームは近日公開予定です。どうぞお楽しみに!)

次回のグループワークでは地元の方も交えて意見交換を行います。ぜひお越しください!
■ KOBE MEME 第3回グループワーク概要
日時:1月19日(土)14:00-17:00
場所:ヨンバンカンニカイ(長田区久保町6-1-1アスタくにづか4番館2階コワーキングスペース)

11/22 下町芸術大学 村上しほり編「近現代神戸の都市史に見る下町エリア」

11月22日、六間道商店街にあるr3にて第11回、最後の下町芸術大学が開校されました。今回は村上しほりさんにお越しいただき、「近現代神戸の都市史に見る下町エリア」というテーマでお話していただきました。村上さんは、神戸の戦後における闇市からの復興や、占領下の都市空間など都市史を中心に神戸大学・スペースビジョン研究所で研究されています。神戸は阪神淡路大震災という大きな震災を経験しているため、震災前後での比較はよくされるが、戦後から震災までの変化はあまり注目されないそう。今回の講義では、戦後と震災後の都市史からみる神戸や長田の変遷を紹介していただきました。

レポート:高木晴香(神戸大学インターン)

戦後の神戸の歩み

1945年、第二次世界大戦中の神戸は、128回にもわたる大空襲により、市街地の約6割が罹災。さらに神戸はGHQによる占領を経て、すっかり姿を変えてしまいました。
1945年9月、終戦から約1か月後にGHQの関西進駐が開始され、約11000人の兵士たちが6大都市の一つである神戸のまちにやってきたのです。彼らは、最初に居住地を確保するために、大丸を接収し宿舎にしました。周辺の焼け残ったビルや税関、現在のKITTOなども接収され、現在の神戸の中心市街地である三宮はGHQによる管理エリアとなりました。

闇市と神戸

GHQによる占領が始まったころ、全国的なブームとして闇市が登場しました。闇市では、設定価格よりも高い値段で商品が売られていました。戦後、食料、住宅、衣服、何もかもが不足していた状態で、闇市は困窮する人々を助ける存在となったのです。しかし、1946年初頭からGHQによる闇市の取り締まりが開始され、1年あまりで闇市はすべて撤去されました。しかし、闇市は完全に消失したわけではありません。高架下や路上に姿を変えて市場として登場し始めます。そもそも、闇市では設定価格より高く商品が売られていたことが問題であったため、値段さえ正常に戻れば問題なかったのです。
民族集団や宗教組織の協議によって、闇市は三宮の高架商店街や三宮国際マーケットなど新たな商業集積地として生まれ変わりました。彼らは、不在地主に交渉し、土地を獲得する中で、自分たちの店を拡大していきました。また、三宮ジャンジャン市場という、いわゆる飯場や飲み屋街のような港湾労働者向けの市場も登場しました。ここでは、非常に安い値段で彼らに食事が提供されたそうです。

戦後の長田

では、長田は戦災でどのような影響を受けたのでしょうか。
実は、長田は戦争による被害が非常に小さかったそうです。6大都市の中で一番大きな被害を受けた神戸ですが、長田は人的被害も物的被害も少なく、さらに木造家屋が多く残っていたため、接収もあまりされませんでした。つまり、長田は戦前の暮らしが発展的に続けられた環境であるといえます。村上さんは、長田が戦後どのような変化を遂げたかをお話してくださいました。
まず、1954年、請願駅として新長田駅が開業しました。新長田駅の誕生は、商店街に大きな影響を与え、アーケードの設置など近代化が進行していきました。新長田の人口のピークは1965年に訪れ、人口の増加に伴い町はみるみる整備されていきました。
神戸市の土地利用計画が開始され、神戸の街は商業地域や工業地域、慰楽地域に分けられ、長田は生活圏の中心として位置づけられました。ほかにも灘の水道筋や春日野道なども生活圏の中心となっています。当時の「下町」の定義はここにあり、今の下町はこの時点で作られていると村上さんは言います。
長田区の特徴として商店街が多いことが挙げられますが、その中でも六間道商店街は慰楽地区として位置づけられました。六間道商店街の顧客は付近の工場労働者でした。映画館や寄席などがあり、喫茶店やカフェ、バーや飲食店などの接客業のお店も多くあったそう。一方、大正筋商店街は「慰安化」という他の商店街にはない特徴がありました。慰安化とは、接客業のお店が圧倒的に多かったことを指すそうです。大正筋商店街は圧倒的に喫茶店やカフェなどの数が多かったそう。
村上さんは丸五市場の成り立ちについても紹介されました。実は、丸五市場はもともと丸五市場という名前ではありませんでした。今の丸五市場は中央市場として誕生しましたが、中央区に中央卸売市場が誕生したことにより名前が被ってしまったことから「丸五市場」に名前を変えたそうです。

場所の意味の多様化

最後に、村上さんは震災後に新長田にできた路上の商業地として「パラール」を紹介してくださいました。長田区における震災の被害は甚大で、商店街も全域で被災したため、新たに仮設店舗として新長田駅南側に「復興元気村パラール」が設置されました。パラールとは、パラソルとバザールを掛け合わせたもので、路上にパラソルを立ててそこで商売をする共同仮設店舗のこと。「焼け野原の中でお客をいかに呼び戻し、なおかつ震災前より売り上げを伸ばせるか」という目標を掲げ、まちづくり協議会が中心となって、個々の地主等から土地の借り上げ、多くの商業者・地権者の連携協力によって被災からわずか5ヶ月で仮設住宅122戸、仮設店舗100店舗が建設されました。戦争により闇市や高架下の市場など、路上で商売する活動があったように、震災後も路上で商いする人がいたのです。
これらのことから村上さんは、戦災や震災により生まれた商業集積地域を見てみると、空間の安全性と盛り場のにぎわいの両立が難しいことがわかると語ります。長田は戦災から震災の間、大商業地域かつ密集市街地として栄えたとともに、先駆的な都市開発事業がおこなわれましたが、95年の震災によって崩壊。震災後、空間の安全性が求められるようになり、再開発が行われましたが盛り場としての賑わいが戻ったとは言い難い現状です。
さらに、町の賑わい創出は、空間の安全性の担保だけでなく、高度情報化社会によるSNSの発展によって複雑化したと言います。SNSの発展により様々な情報が簡単に手に入り、地域に訪れなくともその街の風景を楽しむことが可能になりました。しかし、地域には訪れないとわからない魅力があることも確かです。そのため、商業地域としての長田は単に消費を目的に訪れる街ではなく、SNSで情報が双方向につながるように、人と人がつながることでそこに訪れる意味ができる町にする事が重要となります。そうすると、地域の意味は多様化し、その場所の経緯、どのような歴史を辿ってきたのかが問われるようになるでしょう。簡単に情報が引き出せる今、地域の歴史を知り、答えられるようになるのは強みになり得ると村上さんはおっしゃっていました。同じ神戸、長田という場所でも時代によって場所の持つ意味は大きく変化してきました。歴史が積み重なり、場所の意味はさらに多様性を増しました。場所の意味を探るためには、その場所の経緯を知る必要があるようです。

質疑応答

講義後、質疑応答が行われました。

来場者:大正筋商店街は「慰安化」という他の商店街にはない特徴があり、喫茶店やカフェを中心とした接客業のお店が圧倒的に多かった言っていましたが珍しいことなのですか。
村上さん:この調査は元町商店街などの神戸の代表的な10の商店街を比較対象にとっています。そのなかでも大正筋商店街はやはりダントツで飲食店が多いという特徴がありますね。喫茶店などを分けて計算するということ自体は珍しくはないのですが、やはり店舗数がここまで多いことは珍しいです。
来場者:飲食店が多いという商店街の特徴を生かせるといいですね。

まとめ

今まで「現在の長田・兵庫」しか眺めていなかった私にとって、長田や兵庫の歴史を眺めることはとても新鮮でした。今の「長田らしさ」は戦後の神戸のまちづくりの歴史と深くかかわっていることがわかり、今は目に見えないその地域らしさを見つけるには、「都市史」という観点は重要なのだと感じました。村上さんは、同じ下町でも長田と兵庫は全く歴史や性格が異なるとおっしゃっていて、今回紹介されなかった兵庫の性格も都市史から読み解いてみたいと思いました。

11/22 下町芸術大学 村上しほり編「近現代神戸の都市史に見る下町エリア」

11月22日、六間道商店街にあるr3にて第11回、最後の下町芸術大学が開校されました。今回は村上しほりさんにお越しいただき、「近現代神戸の都市史に見る下町エリア」というテーマでお話していただきました。村上さんは、神戸の戦後における闇市からの復興や、占領下の都市空間など都市史を中心に神戸大学・スペースビジョン研究所で研究されています。神戸は阪神淡路大震災という大きな震災を経験しているため、震災前後での比較はよくされるが、戦後から震災までの変化はあまり注目されないそう。今回の講義では、戦後と震災後の都市史からみる神戸や長田の変遷を紹介していただきました。

レポート:高木晴香(神戸大学インターン)

戦後の神戸の歩み

1945年、第二次世界大戦中の神戸は、128回にもわたる大空襲により、市街地の約6割が罹災。さらに神戸はGHQによる占領を経て、すっかり姿を変えてしまいました。
1945年9月、終戦から約1か月後にGHQの関西進駐が開始され、約11000人の兵士たちが6大都市の一つである神戸のまちにやってきたのです。彼らは、最初に居住地を確保するために、大丸を接収し宿舎にしました。周辺の焼け残ったビルや税関、現在のKITTOなども接収され、現在の神戸の中心市街地である三宮はGHQによる管理エリアとなりました。

闇市と神戸

GHQによる占領が始まったころ、全国的なブームとして闇市が登場しました。闇市では、設定価格よりも高い値段で商品が売られていました。戦後、食料、住宅、衣服、何もかもが不足していた状態で、闇市は困窮する人々を助ける存在となったのです。しかし、1946年初頭からGHQによる闇市の取り締まりが開始され、1年あまりで闇市はすべて撤去されました。しかし、闇市は完全に消失したわけではありません。高架下や路上に姿を変えて市場として登場し始めます。そもそも、闇市では設定価格より高く商品が売られていたことが問題であったため、値段さえ正常に戻れば問題なかったのです。
民族集団や宗教組織の協議によって、闇市は三宮の高架商店街や三宮国際マーケットなど新たな商業集積地として生まれ変わりました。彼らは、不在地主に交渉し、土地を獲得する中で、自分たちの店を拡大していきました。また、三宮ジャンジャン市場という、いわゆる飯場や飲み屋街のような港湾労働者向けの市場も登場しました。ここでは、非常に安い値段で彼らに食事が提供されたそうです。

戦後の長田

では、長田は戦災でどのような影響を受けたのでしょうか。
実は、長田は戦争による被害が非常に小さかったそうです。6大都市の中で一番大きな被害を受けた神戸ですが、長田は人的被害も物的被害も少なく、さらに木造家屋が多く残っていたため、接収もあまりされませんでした。つまり、長田は戦前の暮らしが発展的に続けられた環境であるといえます。村上さんは、長田が戦後どのような変化を遂げたかをお話してくださいました。
まず、1954年、請願駅として新長田駅が開業しました。新長田駅の誕生は、商店街に大きな影響を与え、アーケードの設置など近代化が進行していきました。新長田の人口のピークは1965年に訪れ、人口の増加に伴い町はみるみる整備されていきました。
神戸市の土地利用計画が開始され、神戸の街は商業地域や工業地域、慰楽地域に分けられ、長田は生活圏の中心として位置づけられました。ほかにも灘の水道筋や春日野道なども生活圏の中心となっています。当時の「下町」の定義はここにあり、今の下町はこの時点で作られていると村上さんは言います。
長田区の特徴として商店街が多いことが挙げられますが、その中でも六間道商店街は慰楽地区として位置づけられました。六間道商店街の顧客は付近の工場労働者でした。映画館や寄席などがあり、喫茶店やカフェ、バーや飲食店などの接客業のお店も多くあったそう。一方、大正筋商店街は「慰安化」という他の商店街にはない特徴がありました。慰安化とは、接客業のお店が圧倒的に多かったことを指すそうです。大正筋商店街は圧倒的に喫茶店やカフェなどの数が多かったそう。
村上さんは丸五市場の成り立ちについても紹介されました。実は、丸五市場はもともと丸五市場という名前ではありませんでした。今の丸五市場は中央市場として誕生しましたが、中央区に中央卸売市場が誕生したことにより名前が被ってしまったことから「丸五市場」に名前を変えたそうです。

場所の意味の多様化

最後に、村上さんは震災後に新長田にできた路上の商業地として「パラール」を紹介してくださいました。長田区における震災の被害は甚大で、商店街も全域で被災したため、新たに仮設店舗として新長田駅南側に「復興元気村パラール」が設置されました。パラールとは、パラソルとバザールを掛け合わせたもので、路上にパラソルを立ててそこで商売をする共同仮設店舗のこと。「焼け野原の中でお客をいかに呼び戻し、なおかつ震災前より売り上げを伸ばせるか」という目標を掲げ、まちづくり協議会が中心となって、個々の地主等から土地の借り上げ、多くの商業者・地権者の連携協力によって被災からわずか5ヶ月で仮設住宅122戸、仮設店舗100店舗が建設されました。戦争により闇市や高架下の市場など、路上で商売する活動があったように、震災後も路上で商いする人がいたのです。
これらのことから村上さんは、戦災や震災により生まれた商業集積地域を見てみると、空間の安全性と盛り場のにぎわいの両立が難しいことがわかると語ります。長田は戦災から震災の間、大商業地域かつ密集市街地として栄えたとともに、先駆的な都市開発事業がおこなわれましたが、95年の震災によって崩壊。震災後、空間の安全性が求められるようになり、再開発が行われましたが盛り場としての賑わいが戻ったとは言い難い現状です。
さらに、町の賑わい創出は、空間の安全性の担保だけでなく、高度情報化社会によるSNSの発展によって複雑化したと言います。SNSの発展により様々な情報が簡単に手に入り、地域に訪れなくともその街の風景を楽しむことが可能になりました。しかし、地域には訪れないとわからない魅力があることも確かです。そのため、商業地域としての長田は単に消費を目的に訪れる街ではなく、SNSで情報が双方向につながるように、人と人がつながることでそこに訪れる意味ができる町にする事が重要となります。そうすると、地域の意味は多様化し、その場所の経緯、どのような歴史を辿ってきたのかが問われるようになるでしょう。簡単に情報が引き出せる今、地域の歴史を知り、答えられるようになるのは強みになり得ると村上さんはおっしゃっていました。同じ神戸、長田という場所でも時代によって場所の持つ意味は大きく変化してきました。歴史が積み重なり、場所の意味はさらに多様性を増しました。場所の意味を探るためには、その場所の経緯を知る必要があるようです。

質疑応答

講義後、質疑応答が行われました。

来場者:大正筋商店街は「慰安化」という他の商店街にはない特徴があり、喫茶店やカフェを中心とした接客業のお店が圧倒的に多かった言っていましたが珍しいことなのですか。
村上さん:この調査は元町商店街などの神戸の代表的な10の商店街を比較対象にとっています。そのなかでも大正筋商店街はやはりダントツで飲食店が多いという特徴がありますね。喫茶店などを分けて計算するということ自体は珍しくはないのですが、やはり店舗数がここまで多いことは珍しいです。
来場者:飲食店が多いという商店街の特徴を生かせるといいですね。

まとめ

今まで「現在の長田・兵庫」しか眺めていなかった私にとって、長田や兵庫の歴史を眺めることはとても新鮮でした。今の「長田らしさ」は戦後の神戸のまちづくりの歴史と深くかかわっていることがわかり、今は目に見えないその地域らしさを見つけるには、「都市史」という観点は重要なのだと感じました。村上さんは、同じ下町でも長田と兵庫は全く歴史や性格が異なるとおっしゃっていて、今回紹介されなかった兵庫の性格も都市史から読み解いてみたいと思いました。

11/14 下町芸術大学 島原万丈編「センシュアス・シティ(官能都市)という視点から 下町の魅力を見出す」

11月14日、9月に始まり約2か月に渡って開催されてきた下町芸術大学も、残すところあと1回となりました。今回、そんな第10回目の講演をしてくださったのは株式会社LIFULL/LIFULL HOME’S総研で所長を務める島原万丈さん。テーマは「センシュアス・シティ(官能都市)という視点から下町の魅力を見出す」というもので、都市の魅力を測る新しいものさしとして「官能都市」をキーワードに、今までにない革新的な都市設計を教えていただきました。場所は、半屋外で、ちらちらと人の通る丸五市場。自転車に乗ったおじちゃんや、にこにこ笑う子どもたち、ときには飲み屋からの陽気な声が聞こえてくる、下町ならではという温かさを感じられ、今回の講演にぴったりな場所でした。
さて、皆さんは「官能都市」と聞いて、最初にどのようなものを想像したでしょうか。
恋が始まる街?なんだかドキドキする?
こんなふうに思った人もいるかもしれません。島原さんが熱い想いを持って提案する「官能都市」の魅力を、これから紹介していきます。

レポート:辻本衣菜(神戸大学インターン)

均質化していく都市

現代の都市は、点在する低未利用地や老朽化した木造狭小建物を積極的に再開発し、良好な都市型住宅の供給や快適な歩行空間を設計しようとしています。これは、近代建築の巨匠であるル・コルビジェの影響を受けたもの。住宅が密集していないどこでも光が入る輝く都市、垂直田園都市のスケッチ、パリ万博で発表されたヴォアザン計画、そして車に優しい街、その象徴となる大きな道路に重点が置かれる都市が未来都市だとされました。しかしヨーロッパではこのヴォアザン計画は受け入れられず失敗に終わったのですが、日本だけが未だこの計画を実行しています。車のための街と退屈な歩行道路、都市型開発で郊外も同じ構造となり、各地に並ぶ商業施設、こうして街のアイデンティティが失われかけているのです。
「ここはどこだ、どこにいるんだ?」
「どこへ行っても一緒じゃないか!」
島原さんのこの言葉に、今までいかに自分が何も考えず生きていたのかを思い知らされ、ただ便利で暮らしやすい街は良い街だという思い込みは覆されました。

私たちは都市の魅力をどのように測ってきたか

島原さんは講演の中で、とある不動産サイトによる住みたい町ランキングのアンケート結果を紹介してくれました。しかしその結果を見ると住みたい街とはいわば街の人気投票であり、知名度の勝負となり、住みたい街は住んでよかった街とは違うのです。
デンマークの建築家ヤン・ゲールは、「街は人々が歩き、立ち止まり、座り、眺め、聞き、話すのに適した条件を備えなければならない。これらの基本的活動は人間の感覚器官や運動器官と密接に結びついている」という言葉を残しています。この言葉のように、人間が身体で経験し五感を通して都市を知覚し、街と人間の関係性と身体性を合わせることで「センシュアス・シティ」の指標が作られました。センシュアス度は関係性と身体性を軸に8指標に分け調査されます。関係性の指標には、『1)共同体に帰属している 2)匿名性がある 3)ロマンスがある 4)機会がある』の4つがあり、身体性の指標には、『5)食文化が豊か 6)街を感じられる 7)自然を感じられる 8)歩ける』が挙げられます。これらを合わせて8つの指標で街を見たとき、神戸市のセンシュアス度は134都市中46位という結果になりました。結果を見てみると都会性が思ったよりも低く、街を感じる、歩ける、という順位は比較的良かったようです。この8つの指標から成るセンシュアス・シティランキングは、“私が主語”であるというところが大きなポイントです。センシュアス度と幸福度には正の相関関係があることも立証されています。

「神戸にはもっと官能が必要だ」

五感を最大限に働かせ、自分の感覚を楽しませることこそが、官能的な都市の魅力を見出す上で必要不可欠なのです。
“都市を感じてみる”ということに注目した生活を実践してみたいと思いました。

11/14 下町芸術大学 島原万丈編「センシュアス・シティ(官能都市)という視点から 下町の魅力を見出す」

11月14日、9月に始まり約2か月に渡って開催されてきた下町芸術大学も、残すところあと1回となりました。今回、そんな第10回目の講演をしてくださったのは株式会社LIFULL/LIFULL HOME’S総研で所長を務める島原万丈さん。テーマは「センシュアス・シティ(官能都市)という視点から下町の魅力を見出す」というもので、都市の魅力を測る新しいものさしとして「官能都市」をキーワードに、今までにない革新的な都市設計を教えていただきました。場所は、半屋外で、ちらちらと人の通る丸五市場。自転車に乗ったおじちゃんや、にこにこ笑う子どもたち、ときには飲み屋からの陽気な声が聞こえてくる、下町ならではという温かさを感じられ、今回の講演にぴったりな場所でした。
さて、皆さんは「官能都市」と聞いて、最初にどのようなものを想像したでしょうか。
恋が始まる街?なんだかドキドキする?
こんなふうに思った人もいるかもしれません。島原さんが熱い想いを持って提案する「官能都市」の魅力を、これから紹介していきます。

レポート:辻本衣菜(神戸大学インターン)

均質化していく都市

現代の都市は、点在する低未利用地や老朽化した木造狭小建物を積極的に再開発し、良好な都市型住宅の供給や快適な歩行空間を設計しようとしています。これは、近代建築の巨匠であるル・コルビジェの影響を受けたもの。住宅が密集していないどこでも光が入る輝く都市、垂直田園都市のスケッチ、パリ万博で発表されたヴォアザン計画、そして車に優しい街、その象徴となる大きな道路に重点が置かれる都市が未来都市だとされました。しかしヨーロッパではこのヴォアザン計画は受け入れられず失敗に終わったのですが、日本だけが未だこの計画を実行しています。車のための街と退屈な歩行道路、都市型開発で郊外も同じ構造となり、各地に並ぶ商業施設、こうして街のアイデンティティが失われかけているのです。
「ここはどこだ、どこにいるんだ?」
「どこへ行っても一緒じゃないか!」
島原さんのこの言葉に、今までいかに自分が何も考えず生きていたのかを思い知らされ、ただ便利で暮らしやすい街は良い街だという思い込みは覆されました。

私たちは都市の魅力をどのように測ってきたか

島原さんは講演の中で、とある不動産サイトによる住みたい町ランキングのアンケート結果を紹介してくれました。しかしその結果を見ると住みたい街とはいわば街の人気投票であり、知名度の勝負となり、住みたい街は住んでよかった街とは違うのです。
デンマークの建築家ヤン・ゲールは、「街は人々が歩き、立ち止まり、座り、眺め、聞き、話すのに適した条件を備えなければならない。これらの基本的活動は人間の感覚器官や運動器官と密接に結びついている」という言葉を残しています。この言葉のように、人間が身体で経験し五感を通して都市を知覚し、街と人間の関係性と身体性を合わせることで「センシュアス・シティ」の指標が作られました。センシュアス度は関係性と身体性を軸に8指標に分け調査されます。関係性の指標には、『1)共同体に帰属している 2)匿名性がある 3)ロマンスがある 4)機会がある』の4つがあり、身体性の指標には、『5)食文化が豊か 6)街を感じられる 7)自然を感じられる 8)歩ける』が挙げられます。これらを合わせて8つの指標で街を見たとき、神戸市のセンシュアス度は134都市中46位という結果になりました。結果を見てみると都会性が思ったよりも低く、街を感じる、歩ける、という順位は比較的良かったようです。この8つの指標から成るセンシュアス・シティランキングは、“私が主語”であるというところが大きなポイントです。センシュアス度と幸福度には正の相関関係があることも立証されています。

「神戸にはもっと官能が必要だ」

五感を最大限に働かせ、自分の感覚を楽しませることこそが、官能的な都市の魅力を見出す上で必要不可欠なのです。
“都市を感じてみる”ということに注目した生活を実践してみたいと思いました。

長田B チーム |活動レポート

9月23日に実施したKOBE MEME初回レクチャー以降、参加者らは地域ごとに4つのチームに分かれてプランを構想しています。(「長田A」、「長田B」、「兵庫A」、「兵庫B」)
メンバーによる活動レポート第3弾は長田Bチーム田原貴代美さんのレポートです。

長田Bチーム|活動レポート

レポート:田原貴代美

〈 9月 KOBE MEME初回レクチャー 〉

9月23日、新長田のコワーキングスペース「ヨンバンカンニカイ」にてKOBE MEMEの初回レクチャーが開催され、カードを用いたワークショップを行いました。地域らしさ(MEME)が書かれたミームカードとプロジェクトの形が書かれたプランカード17枚をもとに、地域らしさからどのようなプランができるかをディスカッションしました。
私たち長田Bででたプランは、
【角打ち×介護サービス】
介護サービスを受けるようになってもまだまだできることがある、体が不自由になっても人の役に立ちたい、そう思い過ごしている方にリハビリ兼ねてお店番をしてもらう。
【おっちゃん×ニュー回覧板】
長田のコアなおっちゃん達を新しい媒体で紹介して行く。仕事の斡旋なんかもできたらいいな。
【お地蔵様×外飲み会】
大人の地蔵盆(長田は地蔵盆が盛ん)、お菓子の代わりにビールとおつまみ。
【外国人×ゲームセンター】
長田には韓国、中国、ベトナム、沖縄など多様な人たちが集まっているので、国対抗ゲーム大会を開催。コミュニティ同士で交流が持てるきっかけになるのでは?
【移民×シェアキッチン】
お互いの国の料理を知り、それぞれ仲良くなってもらう。
【おばちゃん×街コン】
長田はおばちゃんが元気で世話好きな人が多い!なのに役割を終えたことになっている…
そんなおばちゃんを、おばちゃんメニュー表を作成し、地域の困り事や外国人移住者にマッチングさせる。
この中から、長田らしさで一番インパクトに残ったおばちゃん!にスポットを当てる【おばちゃん×街コン】に絞ることにしました。

 

〈 10月 おばちゃんと言えば商店街!とりあえず商店街を歩いてみよう!! 〉

各自で本町筋商店街を歩き地域のこと、地域に望むことなどを伺いました。
本町筋商店街は、昔は映画館が5つもあり娯楽も充実し、近郊の人たちも買い物に訪れるほど人気があった。
海側には工場があり、仕事帰りの人が飲んで帰る店もたくさんあった。
また、商店街の近くでは小さな町工場がたくさんあり多くの女性も働いていた。女性が自分で稼いだお金でちょっとお茶をしたり、買い物をしたりと、早くから女性が自立し支えてきた街だというお話も聞けました。
地域で楽しみにしていることと言えば、やっぱり地蔵盆が代表するように祭りごとだそう。たくさんの人がワイワイと集まるのが楽しいし、昔から受け継いでいることだから大切にしているとのこと。確かに今でも地蔵盆は盛大に行われています。
今は人通りも少なくなってしまったけど、若い人たちに子育てをしてもらい少しでも活気付いて欲しいと仰っていました。
みなさん、以前ほど活気がない商店街をどうにかしたいと思っていることが分かりました。

〈 11月 早くも方向性決定!か!? 〉

地域が抱える課題として、10月の商店街の聞き取りにより、かつてはものすごく栄えていた商店街が衰退し、店の後継者もいないからせめて自分の代まではと頑張っている年配の女性店主が多いことが見えてきました。
商店街が活性化すれば後継者問題も解決するのではないかということから、商店街の宣伝の仕方について何か働きかけが出来ないかと考えました。
また、長田という地域を調べていくと外国人が多く住む町だということも見えてきました。
外国人比率が約7%であるにも関わらず商店街で外国人を見かけることがない!なら商店街に来てもらったら面白いことが起こるかもしれない…
そこで当初のプラン【おばちゃん×街コン】から、【おばちゃん×外国人×ユーチューバー】に方向転換することにしました。
外国人レポーターと商店街のおばちゃんペアによる、お店や商品の紹介動画を制作する。
カタコトの外国人レポ、喋りたいけどぐっと我慢するおばちゃんというシュールな面白さを追求しユーチューブにアップしようということになりました。
興味を持ってもらえればお店を訪ねてもらえたり、広告収入を商店街に還元したり、製作の過程で、これまでなかった商店街の方々と外国人の方の接点ができたりといった効果を生むと考えられます。将来的には子供や学生、高齢者のコミュニティの接点への広がりも期待できるのではないかと思っています。

ちょうど今、長田区が募集している、『ええやん、ながた』という30秒〜90秒で長田を紹介する動画コンテストがあることが分かり、私たちのコンセプトに合っていることから応募することとなりました。
また、今後このプロジェクトを一過性で終わらせないためにどうしたらいいかというところから、地元の学生を巻き込んでみたら面白いんじゃないかと、コンタクトを取っているところです。

〈 12月 ここにきて軌道修正…!! 〉

商店街とタッグを組むには時間が足りないのではないか⁉︎ということから、プランを少し見直すことにしました。
詳しくはまだこれからですが長田の町・人に楽しんでもらえる企画を作り上げたいと思っています。

長田B チーム |活動レポート

9月23日に実施したKOBE MEME初回レクチャー以降、参加者らは地域ごとに4つのチームに分かれてプランを構想しています。(「長田A」、「長田B」、「兵庫A」、「兵庫B」)
メンバーによる活動レポート第3弾は長田Bチーム田原貴代美さんのレポートです。

長田Bチーム|活動レポート

レポート:田原貴代美

〈 9月 KOBE MEME初回レクチャー 〉

9月23日、新長田のコワーキングスペース「ヨンバンカンニカイ」にてKOBE MEMEの初回レクチャーが開催され、カードを用いたワークショップを行いました。地域らしさ(MEME)が書かれたミームカードとプロジェクトの形が書かれたプランカード17枚をもとに、地域らしさからどのようなプランができるかをディスカッションしました。
私たち長田Bででたプランは、
【角打ち×介護サービス】
介護サービスを受けるようになってもまだまだできることがある、体が不自由になっても人の役に立ちたい、そう思い過ごしている方にリハビリ兼ねてお店番をしてもらう。
【おっちゃん×ニュー回覧板】
長田のコアなおっちゃん達を新しい媒体で紹介して行く。仕事の斡旋なんかもできたらいいな。
【お地蔵様×外飲み会】
大人の地蔵盆(長田は地蔵盆が盛ん)、お菓子の代わりにビールとおつまみ。
【外国人×ゲームセンター】
長田には韓国、中国、ベトナム、沖縄など多様な人たちが集まっているので、国対抗ゲーム大会を開催。コミュニティ同士で交流が持てるきっかけになるのでは?
【移民×シェアキッチン】
お互いの国の料理を知り、それぞれ仲良くなってもらう。
【おばちゃん×街コン】
長田はおばちゃんが元気で世話好きな人が多い!なのに役割を終えたことになっている…
そんなおばちゃんを、おばちゃんメニュー表を作成し、地域の困り事や外国人移住者にマッチングさせる。
この中から、長田らしさで一番インパクトに残ったおばちゃん!にスポットを当てる【おばちゃん×街コン】に絞ることにしました。

 

〈 10月 おばちゃんと言えば商店街!とりあえず商店街を歩いてみよう!! 〉

各自で本町筋商店街を歩き地域のこと、地域に望むことなどを伺いました。
本町筋商店街は、昔は映画館が5つもあり娯楽も充実し、近郊の人たちも買い物に訪れるほど人気があった。
海側には工場があり、仕事帰りの人が飲んで帰る店もたくさんあった。
また、商店街の近くでは小さな町工場がたくさんあり多くの女性も働いていた。女性が自分で稼いだお金でちょっとお茶をしたり、買い物をしたりと、早くから女性が自立し支えてきた街だというお話も聞けました。
地域で楽しみにしていることと言えば、やっぱり地蔵盆が代表するように祭りごとだそう。たくさんの人がワイワイと集まるのが楽しいし、昔から受け継いでいることだから大切にしているとのこと。確かに今でも地蔵盆は盛大に行われています。
今は人通りも少なくなってしまったけど、若い人たちに子育てをしてもらい少しでも活気付いて欲しいと仰っていました。
みなさん、以前ほど活気がない商店街をどうにかしたいと思っていることが分かりました。

〈 11月 早くも方向性決定!か!? 〉

地域が抱える課題として、10月の商店街の聞き取りにより、かつてはものすごく栄えていた商店街が衰退し、店の後継者もいないからせめて自分の代まではと頑張っている年配の女性店主が多いことが見えてきました。
商店街が活性化すれば後継者問題も解決するのではないかということから、商店街の宣伝の仕方について何か働きかけが出来ないかと考えました。
また、長田という地域を調べていくと外国人が多く住む町だということも見えてきました。
外国人比率が約7%であるにも関わらず商店街で外国人を見かけることがない!なら商店街に来てもらったら面白いことが起こるかもしれない…
そこで当初のプラン【おばちゃん×街コン】から、【おばちゃん×外国人×ユーチューバー】に方向転換することにしました。
外国人レポーターと商店街のおばちゃんペアによる、お店や商品の紹介動画を制作する。
カタコトの外国人レポ、喋りたいけどぐっと我慢するおばちゃんというシュールな面白さを追求しユーチューブにアップしようということになりました。
興味を持ってもらえればお店を訪ねてもらえたり、広告収入を商店街に還元したり、製作の過程で、これまでなかった商店街の方々と外国人の方の接点ができたりといった効果を生むと考えられます。将来的には子供や学生、高齢者のコミュニティの接点への広がりも期待できるのではないかと思っています。

ちょうど今、長田区が募集している、『ええやん、ながた』という30秒〜90秒で長田を紹介する動画コンテストがあることが分かり、私たちのコンセプトに合っていることから応募することとなりました。
また、今後このプロジェクトを一過性で終わらせないためにどうしたらいいかというところから、地元の学生を巻き込んでみたら面白いんじゃないかと、コンタクトを取っているところです。

〈 12月 ここにきて軌道修正…!! 〉

商店街とタッグを組むには時間が足りないのではないか⁉︎ということから、プランを少し見直すことにしました。
詳しくはまだこれからですが長田の町・人に楽しんでもらえる企画を作り上げたいと思っています。

11/6 下町芸術大学 金千秋編「多様性を地域資源としての意味を付加する」

11月6日、NPO法人FMわぃわぃ代表理事を務める金千秋さんをお招きして下町芸術祭第9回「多様性を地域資源としての意味を付加する」が行われました。場所は路地裏百貨店、裸電球や藺草の香る畳が昭和を感じさせる風情ある建物。現在は若手クリエイターの住居になっていますが、以前は町から集まってきた古道具やアンティークなどの雑貨を扱うお店だったそう。
今回のテーマには「移住してきた人たちと既存コミュニティのつながり方」というサブタイトルがついており、長田区の特徴である人種の多様性を地域資源としてどのように活かしていくのか、というものを軸に講演していただきました。

レポート:辻本衣菜(神戸大学インターン)

長田区における文化の多様性

現在、FMわいわいの代表理事としてご活躍している金千秋さんですが、ある出来事が起きるまでは在日コリアン2世の夫を持つ普通の主婦でした。そんな金さんにとって契機となった出来事は1995年、新長田に甚大な被害を及ぼした平成の大災害の一つである「阪神・淡路大震災」です。この大地震によって6433人もの尊い命が奪われましたが、そのうちの174人は外国人でした。被災した地域の中で外国人死亡者数が多いのは、神戸市、とりわけ長田区がその中でも多かったようです。長田区は神戸港の元となる兵庫津やお寺などが多く、人と文化が出入りして滞留する場所で、歴史的に多様な人々が流入する地域だったのです。そのため外国人コミュニティが発達し、阪神・淡路大震災での外国人死亡者が増えてしまったと考えられるようです。

震災とラジオ

このように外国人との関わりが深い長田で阪神・淡路大震災が起こったとき、世界初の災害ラジオ「FMわいわい」が誕生しました。災害がきっかけとなり、自助・共助という思想や問題解決への意識が生まれ、運動団体ではない市民活動が萌芽したのです。「FMわいわい」の原点は、在日コリアンから始まった海賊ラジオ放送「ヨボセヨ(韓国語でこんにちは)」でした。日本で生きる在日コリアンが抱いていた不安を、共に暮らし共に生きる安心へと変えるため、現代のSNSのようにラジオを活用し、皆と繋がる。そこから視点を広げ、多言語でラジオを流してみたらどうだろうか、と発展し現在の「FMわいわい」が産声をあげたのです。現在「FMわいわい」はコミュニティラジオとして、在日コリアンだけでなく他の外国人や高齢者、障害を持つ方々など、誰もが繋がることのできる場所を提供し続けています。みんなそれぞれが受信・発信する、そして共有する。「災害で壊れた街を元どおりにするのではなく、誰もが住みたい街を新しく作り上げる必要があるのではないか?」そう語った金さんの力強い声が、忘れられません。誰もが自分らしく生きることができる場の尊さを感じた瞬間でした。

多文化共生ガーデン

金さんは現在、緑化推進構想と地域の特徴を生かした新しいプロジェクト「多文化共生ガーデン」を構想しています。長田の抱える社会的課題、例えば地域の緑地不足や空き家空き地問題を、多文化共生をキーワードとした緑化推進で解決していくという構想です。人の不安となる空き家や空き地、空洞化された土地を有効的に活用することで、地域の多様性を力としてより良い地域を創成する。パクチーや空芯菜、ヘチマを植えて食べる収穫祭を企画するなど、金さんが描く地域コミュニティへのアプローチを生き生きと語ってくださいました。

今回は「多様性を地域資源としての意味を付加する」という視点から地方創生の構想や、人種を超えて町は共生するという新たな気付きを得ることができました。最後に、一番印象的だった言葉を紹介します。
「誰もが自分のままでいい、誰もが“このまち”の一員だと感じること」
金千秋さん、力強く心に響く温かい講義を本当にありがとうございました。

11/6 下町芸術大学 金千秋編「多様性を地域資源としての意味を付加する」

11月6日、NPO法人FMわぃわぃ代表理事を務める金千秋さんをお招きして下町芸術祭第9回「多様性を地域資源としての意味を付加する」が行われました。場所は路地裏百貨店、裸電球や藺草の香る畳が昭和を感じさせる風情ある建物。現在は若手クリエイターの住居になっていますが、以前は町から集まってきた古道具やアンティークなどの雑貨を扱うお店だったそう。
今回のテーマには「移住してきた人たちと既存コミュニティのつながり方」というサブタイトルがついており、長田区の特徴である人種の多様性を地域資源としてどのように活かしていくのか、というものを軸に講演していただきました。

レポート:辻本衣菜(神戸大学インターン)

長田区における文化の多様性

現在、FMわいわいの代表理事としてご活躍している金千秋さんですが、ある出来事が起きるまでは在日コリアン2世の夫を持つ普通の主婦でした。そんな金さんにとって契機となった出来事は1995年、新長田に甚大な被害を及ぼした平成の大災害の一つである「阪神・淡路大震災」です。この大地震によって6433人もの尊い命が奪われましたが、そのうちの174人は外国人でした。被災した地域の中で外国人死亡者数が多いのは、神戸市、とりわけ長田区がその中でも多かったようです。長田区は神戸港の元となる兵庫津やお寺などが多く、人と文化が出入りして滞留する場所で、歴史的に多様な人々が流入する地域だったのです。そのため外国人コミュニティが発達し、阪神・淡路大震災での外国人死亡者が増えてしまったと考えられるようです。

震災とラジオ

このように外国人との関わりが深い長田で阪神・淡路大震災が起こったとき、世界初の災害ラジオ「FMわいわい」が誕生しました。災害がきっかけとなり、自助・共助という思想や問題解決への意識が生まれ、運動団体ではない市民活動が萌芽したのです。「FMわいわい」の原点は、在日コリアンから始まった海賊ラジオ放送「ヨボセヨ(韓国語でこんにちは)」でした。日本で生きる在日コリアンが抱いていた不安を、共に暮らし共に生きる安心へと変えるため、現代のSNSのようにラジオを活用し、皆と繋がる。そこから視点を広げ、多言語でラジオを流してみたらどうだろうか、と発展し現在の「FMわいわい」が産声をあげたのです。現在「FMわいわい」はコミュニティラジオとして、在日コリアンだけでなく他の外国人や高齢者、障害を持つ方々など、誰もが繋がることのできる場所を提供し続けています。みんなそれぞれが受信・発信する、そして共有する。「災害で壊れた街を元どおりにするのではなく、誰もが住みたい街を新しく作り上げる必要があるのではないか?」そう語った金さんの力強い声が、忘れられません。誰もが自分らしく生きることができる場の尊さを感じた瞬間でした。

多文化共生ガーデン

金さんは現在、緑化推進構想と地域の特徴を生かした新しいプロジェクト「多文化共生ガーデン」を構想しています。長田の抱える社会的課題、例えば地域の緑地不足や空き家空き地問題を、多文化共生をキーワードとした緑化推進で解決していくという構想です。人の不安となる空き家や空き地、空洞化された土地を有効的に活用することで、地域の多様性を力としてより良い地域を創成する。パクチーや空芯菜、ヘチマを植えて食べる収穫祭を企画するなど、金さんが描く地域コミュニティへのアプローチを生き生きと語ってくださいました。

今回は「多様性を地域資源としての意味を付加する」という視点から地方創生の構想や、人種を超えて町は共生するという新たな気付きを得ることができました。最後に、一番印象的だった言葉を紹介します。
「誰もが自分のままでいい、誰もが“このまち”の一員だと感じること」
金千秋さん、力強く心に響く温かい講義を本当にありがとうございました。

兵庫A チーム |活動レポート

9月23日に実施したKOBE MEME初回レクチャー以降、参加者らは地域ごとに4つのチームに分かれてプランを構想しています。(「長田A」、「長田B」、「兵庫A」、「兵庫B」)
メンバーによる活動レポート第2弾は兵庫Aチーム在間夢乃さんのレポートです。

兵庫 Aチーム|活動レポート

レポート:在間夢乃

9月23日に開催されたKOBE MEME初回ワークショップでは、4チームに分かれカードを使ったディスカッションを行い、2案を構想、発表しました。
MEME(※地域の特徴を表すもの)とPLAN(※事業・プロジェクトのかたち)のカードを組み合わせて出した兵庫Aチームのアイディアは
①「和田岬線」×「マルシェや街コン」「ペット」
②「シャッター商店街」「防災」×「民泊」
です。
初回レクチャー以降は、兵庫ならではのMEMEをもっと掘り下げることでアイディアが面白くなる、ということから個人ごとに情報収集を行うと同時に町歩きを行っています。

11月10日経過報告では、これぞという具体的なプランの報告はできませんでしたが、その後のチームミーティングで「まち歩きツアー」や「アートプロジェクト」といったテーマが出され、スポットを絞らず兵庫区内の魅力を喚起していく活動に方針が向かいました。

兵庫区は縦に長く、エリアによって地域の性格が異なっています。そのため南部、中部、北部とそれぞれ独特で味わい深いまちの景色が広がっています。
空き家問題、少子高齢化、商店街離れなど、問題として取り上げる点は多々ありますが、1つ1つの課題をクリアすることよりも、兵庫区への注目を高め「交流人口」を増やすことが重要だと考えています。

全員参加でのフィールドリサーチはできていませんが、それぞれの調査で違った視点での発見をしています。
○新開地周辺は、レトロな印象で、立ち飲み屋やエンタメ施設が多く、どの喫茶店・スナックからもカラオケの声が聞こえてくるようなまち。一泊1500円の安宿もある。
○ 湊川隧道の通り抜けでは、産業遺産を保存し公開している活動に共感。身近にすばらしい非日常を味わえるスポットがある感動。地域周辺にある100年続くミナイチ商店街商店街は来春に営業を終了する(残念に思った)。
○地下鉄海岸線周辺、海沿いは所有地のため入れない敷地が多いが、工業港とおしゃれな港町のコントラストを楽しめるスポットがある。鉄オタスポットもある。

リサーチに共通していることは「歩いてみていること」です。
電車や車に頼らず、徒歩ならではのスピードでめぐることで感じ取ることができる小さな気づきが、提案するツアーの軸足になるかもしれません。
まだまだ要となる兵庫区のMEMEは発見できていない現在、これからもっと兵庫区を掘り下げ、歴史やまちの文化、人のつながりから発見したことをPLANに繋げ、たくさんの人に楽しんでもらえる提案にしていきます。

兵庫A チーム |活動レポート

9月23日に実施したKOBE MEME初回レクチャー以降、参加者らは地域ごとに4つのチームに分かれてプランを構想しています。(「長田A」、「長田B」、「兵庫A」、「兵庫B」)
メンバーによる活動レポート第2弾は兵庫Aチーム在間夢乃さんのレポートです。

兵庫 Aチーム|活動レポート

レポート:在間夢乃

9月23日に開催されたKOBE MEME初回ワークショップでは、4チームに分かれカードを使ったディスカッションを行い、2案を構想、発表しました。
MEME(※地域の特徴を表すもの)とPLAN(※事業・プロジェクトのかたち)のカードを組み合わせて出した兵庫Aチームのアイディアは
①「和田岬線」×「マルシェや街コン」「ペット」
②「シャッター商店街」「防災」×「民泊」
です。
初回レクチャー以降は、兵庫ならではのMEMEをもっと掘り下げることでアイディアが面白くなる、ということから個人ごとに情報収集を行うと同時に町歩きを行っています。

11月10日経過報告では、これぞという具体的なプランの報告はできませんでしたが、その後のチームミーティングで「まち歩きツアー」や「アートプロジェクト」といったテーマが出され、スポットを絞らず兵庫区内の魅力を喚起していく活動に方針が向かいました。

兵庫区は縦に長く、エリアによって地域の性格が異なっています。そのため南部、中部、北部とそれぞれ独特で味わい深いまちの景色が広がっています。
空き家問題、少子高齢化、商店街離れなど、問題として取り上げる点は多々ありますが、1つ1つの課題をクリアすることよりも、兵庫区への注目を高め「交流人口」を増やすことが重要だと考えています。

全員参加でのフィールドリサーチはできていませんが、それぞれの調査で違った視点での発見をしています。
○新開地周辺は、レトロな印象で、立ち飲み屋やエンタメ施設が多く、どの喫茶店・スナックからもカラオケの声が聞こえてくるようなまち。一泊1500円の安宿もある。
○ 湊川隧道の通り抜けでは、産業遺産を保存し公開している活動に共感。身近にすばらしい非日常を味わえるスポットがある感動。地域周辺にある100年続くミナイチ商店街商店街は来春に営業を終了する(残念に思った)。
○地下鉄海岸線周辺、海沿いは所有地のため入れない敷地が多いが、工業港とおしゃれな港町のコントラストを楽しめるスポットがある。鉄オタスポットもある。

リサーチに共通していることは「歩いてみていること」です。
電車や車に頼らず、徒歩ならではのスピードでめぐることで感じ取ることができる小さな気づきが、提案するツアーの軸足になるかもしれません。
まだまだ要となる兵庫区のMEMEは発見できていない現在、これからもっと兵庫区を掘り下げ、歴史やまちの文化、人のつながりから発見したことをPLANに繋げ、たくさんの人に楽しんでもらえる提案にしていきます。

11/10 KOBE MEME 第1回メンターワーク

2018年11月10日、新長田にあるコワーキングスペース「ヨンバンカンニカイ」にて第1回メンターワークショップが行われました。この日の目的は以下の2つです。

(1)ショートプレゼンテーション:現在構想中のプランを発表し、ディレクター・プロデューサー、メンターより講評を受ける
(2)グループディスカッション:講評を基にプランを練り直す

(1)ショートプレゼンテーションでは、参加者のみなさんによって兵庫・長田区への多種多様なアプローチが繰り広げられました。例えば「町歩きツアーで地域の魅力を内外に発信する」「長田区内の海側と山側の交流を目指す」など、グループ内でも様々な意見が出ているようでした。
実際にこの地域で活動されているメンターのみなさんからの講評は学びが多く、「他グループへの講評を聞けて勉強になった」「刺激的だった」という声を多くいただいたことも特徴的でした。
(プロジェクトメンバー紹介→https://shitamachikobe.jp/kobememe/

(2)グループディスカッションの時間は、講評をもとに各グループでプランをより密に練り直していきました。他チームの講評を聞いて参考にする点も多かったようです。KOBE MEMEのゴールは、その地域らしい事業プランを構想し発表すること。事業化にあたって資金はどうするのか、など現実的な視点からの意見が出たグループもありました。


この日のワークショップを通じて

「発表するまで不安だったが、良いねと言われてほっとした」
「リサーチ不足を感じた」
「(グループ内で)話し合うだけじゃなく地域の人にもっと話を聞きたい」
「地域の遺伝子(=meme)をもっと探したい」

など、参加者の方々は現状を把握しプランの方向性を見据えることができたのではないでしょうか。加えて今後プロジェクトを進めていく上で“役割分担を明確にしよう”というディレクター・影山からの提案もあり、全員がプロジェクトに参加できるための体制が整えられていきました。
今回のメンターワークショップを開催する前は全グループの共通課題として、グループ内での足並みがなかなか揃わないことが挙げられてきました。この役割分担により現在はひとりひとりの意見が行き交うようになったと思います。

グループの垣根を超えた交流の可能性を感じたワークショップでした。プロジェクト成立に向けてこの先の発展にまだまだ目が離せません!
次回のメンターワークは12月22日に開催されます。

(レポート:川縁芽偉子)

10/30 下町芸術大学 横堀ふみ編「地域の中からアートプロジェクトを作り出すプロセスと可能性」

10月30日、セルフリノベーションが進んでいる古民家、「旧合田邸」にて下町芸術大学第8回目「地域の中からアートプロジェクトを作り出すプロセスと可能性」が行われました。講師はNPO法人DANCE BOXでプログラムディレクターを務める横堀ふみさん。ベトナム人の夫を持つ妻であり、一児の母でもある横堀さんは新長田について、「新長田は子供を育てる環境が良く、ベトナム人コミュニティも充実している、そして何より自由な生き方をしている大人がたくさん存在する」と語りました。彼女の温かい新長田への愛、そして自らの仕事への誇りが感じられた講演内容を、紹介したいと思います。

レポート:辻本衣菜(神戸大学インターン)

舞台芸術製作のお仕事とは

まずはじめに自身を、「劇場をアイデンティティとした舞台芸術製作者」であると仰った横堀さん。舞台芸術プログラムを作成する時の着想は、バリ島の“芸能”、“生活”、“宗教”が結びついた暮らしから得ているそう。バリ島には各村に一つの楽団があり、子供からお年寄りまでみんなが楽しみながら参加しているそうで、そのようなプログラムを目指しているということでした。実際の製作にあたっては企画や広報、稽古スケジュールの管理など膨大な仕事がある中で、「アテンドが好き。アーティストを空港まで迎えに行くことがとても楽しい」と笑顔で話す彼女から、仕事へのやりがいや楽しさが生き生きと伝わってきました。しかし一番強く印象に残ったのは、彼女はプログラムを感覚的に作っている、というものです。インプットもアウトプットも、どちらもかなり感覚で行っていて、時には戸惑われることもあるほどだと話していました。

これまで企画した様々なプロジェクトの事例から

さて、続いては横堀さんが製作してきたアートプロジェクトの数々を紹介いただきました。その際、”共有言語”・“育て方”・“展開”・“アーティスト”という観点から一つ一つのプロジェクトについて掘り下げてお話いただきました。例えば「新長田ダンス事情」という企画は、食・音楽・歴史など、様々なものが絡み合った「ダンス」を共有言語としてダンスをしている人に会いにいき、5年間という年月をかけて育て上げたプログラムだそうです。この新長田で受け継がれているダンス事情から生まれたこのプログラムは新長田という地域の文脈を超えても成立するのか、という今後の展開も、プログラムを成長させるためにとても重要なことなのだと感じました。また、「KARAOKE BOX 長田のベトナムver.」という新長田に住むベトナム人とカラオケを通してショーをつくる企画もありました。これは当初、ベトナムの大衆演劇チェオを共有言語としていたが、ベトナム人のカラオケ人気により、間も無くカラオケに変わった、と話していました。この企画の育て方は、日越バイリンガルのチラシを作成したこと、そして、この企画の最終形を決めない、限界を与えないということでした。もう一つ、面白い企画がありました。「全国さきがけ」を共有言語として立ち上げられた「新長田アートマフィア」というものです。この企画には、公式の代表は存在せず、それぞれに与えられた役柄を楽しみながら演じ、主導権はみんなが持っているそうで、現在進行形で展開されてるプロジェクトです。

地域の公共空間が果たすもの

様々な企画を紹介しましたが、横堀さんはその企画を取り巻く地域の公共空間についても興味深いことを仰っていました。「宗教空間」では、定期的に人が集まることでコミュニティが形成され、情報の集積地として多くの”情報交換の場”となります。また「学校空間」や「福祉空間」では、幅広い層の人々が文化共有を行い、地域コミュニティと密着につながることで、”言葉や文化継承の場”となるのです。公共空間の中でも、彼女が最も熱く語っていたのは「劇場空間」でした。「劇場空間」とは、子供も大人も思想が相反する人も、生者、死者も共存する、個人が対等である場所。ただ劇場においては公共のサービスを受ける、提供するという関係ではなく、“公共”をともに考えて作る場だという意識を強く持っているのだと感じられた瞬間でした。

まとめ

アートプロジェクトの製作に興味がある私にとって、今回の講義はとても刺激的で、新たな知見と出会う貴重な体験となりました。最後に、最も感銘を受けた言葉を書いておきます。
「アートプロジェクトが必ず思い通りになるとは限らない。自分のビジョン通りに作るのではなく、その環境を作り上げる。そして最終的に作り上げたものが、成功する。」
どの場所にたどり着くかわからない中で、未知の部分を尊重し、楽しむことが、とても意義あることなのです。貴重なお話をしてくださった横堀ふみさん、本当にありがとうございました。

10/16 下町芸術大学 山下香編「おかんアートの展開から考えるローカルプロジェクトのひろがり」

10月16日、第7回目の下町芸術大学が兵庫区にある「旧岡方倶楽部(小物屋会館)」にて開講されました。
会場となった「旧岡方倶楽部」は、昭和2年に兵庫の商人たちの社交の場として建立された建物で、当時のレトロな雰囲気が感じられるとても素敵な場所でした。
講師を務めてくださった山下香さんは、流通科学大学の准教授として、さらに一級建築士事務所「状況設計室」の建築士として設計活動とまちづくり活動を研究しています。今回のテーマは「おかんアートの展開から考えるローカルプロジェクトの広がり」。本講義では、おかんアートが展開される過程から、地域で行われるプロジェクトの広げ方を学びました。最後にはワークショップを行い、参加者同士での意見を交換するなど、学びの多い講義となりました。

レポート:高木晴香(神戸大学インターン)

おかんアートとの出会い


「おかんアート」という言葉にあまり耳馴染みがないかもしれません。おかんアートとは、母が作る手芸作品の総称。例えば、おばあちゃんの家に行った時に、見かける毛糸で作られた犬や有名なキャラクターを模したフェルト人形など。みなさんも一度は見た事があるかもしれません。それらはすべておかんアートなのです。

まずは、山下さんとおかんアートとの出会いについて教えていただきました。
山下さんは2005年より兵庫区長田区を拠点に「下町レトロに首っ丈の会」を結成し、下町遠足ツアーなど、下町の魅力を発掘・発信する活動を行なっています。下町遠足ツアーを重ねていくうちに山下さんは、あることに気づいたそう。それはツアーで巡る先々にいつも人知れずおかんアートが生息しているということ。山下さんはそれらのおかんアートがどのように町中に広がったのかが気になり、作品を見つけるたびにだれが作ったのか聞いていったそう。そうして出会ったおかんアートの製作者たちに同じようにおかんアートを作っている人はいないか尋ね、樹形図のようにおかんアーティストたちと繋がっていきました。

おかんアート展が人気イベントになるまで


今年で第9回目を迎える「おかんアート展」は2009年より毎年開催され、今では人気イベントとなりました。では、はじめはどんな感じだったのでしょうか。
まず第1回目では「おかんアート展」を企画する際に、おかんアーティストたちにこれまでで一番思い入れのある催しについて話を聞いたそうです。するとみんな口々に「ダンパは楽しかった」と語ったそう。ダンパとは、ダンスパーティーの略のこと。それならダンパを開いちゃおう!と、第1回目はダンパがメインのおかんアート展となりました。第2回目からはもう少しおかんアート展の要素を強めるため、展示のプロデュースをおかんアーティストたちに任せ、自己紹介や作品解説をお願いし、おかんアーティストの存在を前面に押し出したそうです。すると、おかんアーティストたちは日の目をみたことでおかんアート展に対して積極的になり、第3回目ではおかんアーティストたちの提案で教室が開催されました。第5回目を開催する際にはおかんアーティストたちが主体となって月1の企画会議が行われ、気付けば運営資金獲得のために出店料を徴収するなどマネタイズまで考えるようになったそうです。また、徐々に名が知れるようになった「おかんアート」に固定ファンがつくようになりました。最初は主催の流れに身を任せて展示に参加していたお母さんたちが、回を重ねていくうちに自ら企画し、お金の流れを作り出すという主体的な存在に変わっていったのです。

おかんアートを支える“取り巻き”の存在


「おかんアート展」はおかん、つまりアーティストだけで運営されているわけではありません。 “取り巻き”の支えがあったことが10年間続けられた秘訣であるといいます。
“取り巻き”とは、おかんアートをこよなく愛し支える若手スタッフたちのこと。おかんアート展の特徴は「取り巻きが勝手に事務局となって運営されている」ところにあるそうです。若手スタッフたちは作家であるおかんアーティストたちに尊敬、興味、愛着を抱き、集まってきたのです。異世代と出会えることや、楽しそうだからということを動機として集まる方が多いそう。
おかんアートを支える取り巻きたちの一つの特徴として、アーティストよりも取り巻きが熱を上げるという現象が起こるそう。例えば、おかんアート展では
作品の販売も行っているため、もともとは売るために作っているのではなかったおかんアートが、徐々にトレンドを取り入れた“売れるおかんアート”化しているらしく、それに反発する取り巻きたちが出てきたそう。おかんアートが好きだからこそ、ただ創作意欲のままに生み出されてきた本来のおかんアート意義を求める動きが強くなっているのです。山下さんは、このようなおかんアートを熱く盛り上げる取り巻きは、おかんアート展を長く続けるにあたってとても大切な存在だと振り返ります。

おかんアートを地域資源として捉える


次に、山下さんが所属している「下町レトロに首っ丈の会」が発掘・発信している「地域資源」についてお話いただきました。地域資源とは、その地域にしかないもの。地域資源は大きくわけて2つに分かれます。
・目に見える宝(例えば…物的資源、名物、建物などの地図上に残るもの)
・目に見えない宝(例えば…地域の名物住人、風習、お祭り)
とりわけ「下町レトロに首っ丈の会」では目に見えない宝を大事にしているそう。おかんアートはまさに「目に見えない宝」です。一見、おかんアート自体は「もの」であるため、「目に見える宝」のようですが、おかんアートの裏側に隠れるストーリーや、お母さんたちの知識や技能、活動こそが「目に見えない宝」なのです。例えば、お母さんたちがおかんアートを交流のきっかけとしていることや、おかんアート展を通じてお母さんたちの技能を発信していったストーリーのことです。一見、目に見える宝も、その裏側に隠れるものを突き詰めていけば、見えない宝も一緒に見つけることができます。

質疑応答

今回は山下さんの希望で参加者全員が順番に質問や感想を挙げていきました。
ここでは、私が特に印象に残っている質問をご紹介します。

参加者:ただおかんアートを楽しむだけでなく、おかんアート展などを計画的にするようになった転換点はありますか?
山下さん:もちろん楽しむことはすごく大事です。ですが、楽しいだけでおかんアートを続けていたら、3年くらいで「何のためにやっているんだろう?」と思うようになってきます。実際に下町遠足ツアーも、「何のためにやっているんだろう?」となりました。でも、私はツアーを地域資源を発見するためにやっている、という風に割り切っていました。おかんアートについては、地域資源であるおかんアートがどんな繋がりをもって、どういう風に活動しているのかを見る実験だと思っています。

参加者:おかんアートのゴールはどこにありますか?
山下さん:主体的な人材を育成することです。人口減少社会にともない、私たちは今まで他の人がやってくれていたことをしなければならないようになってきました。その時に、主体的に動ける人が必要であると考えたのです。おかんアートを通じて、主体的に何かをできる人を育成できることを目指しています。例えば、若い人はボランティアや自治会などに参加する余裕がないですよね。しかし、おかんアートには興味を持ってくれる人がいます。おかんアートという実践的なコミュニティに参加することで、知らないうちに彼らは主体者になっています。

この町の地域資源を見つめるワークショップ

ワークショップの様子

最後に参加者全員でワークショップを行いました。
今回の講義を踏まえ、この町にある「①目に見える資源」「②目に見えない資源」とは何か。また、「③それらを組み合わせることでどのようなコンテンツが生まれるのか」を考え、3グループに別れてディスカッションをおこないました。
ワークショップを通して、目に見えない資源を探すことの難しさや、地元の人がさほど気にしていないことも、外の人から見ると面白いことが多く眠っていることがわかりました。
山下さんは、地元に何気なくあるものでも、それらの裏側にある物語を見つけるだけで面白いものになるとおっしゃっていました。そして、目に見える資源と目に見えない資源が組み合わさったものが文化的景観になることも学びました。

本講義では、ローカルプロジェクトの広がりについておかんアート展の展開を例に学びました。またローカルプロジェクトにおいて、「地域資源」が重要なキーワードとなり、地域に眠っている「目に見える宝」と「目に見えない宝」たちを発掘し、それをいかにプロジェクトに盛り込んで生かしていくかが大切だということを感じました。

10/11 下町芸術大学 尾野寛明編「地方で事業を起こしていくことの喜びと事業」

下町芸術大学第6回目が、10月11日に新長田の「はっぴーの家ろっけん」にて開催されました。テーマは「地方で事業を起こしていくことの喜びと苦悩」。有限会社エコカレッジ代表取締役の尾野寛明さんは、島根県の書店跡地でネット通販古書店を運営しながら、就労継続支援A型事業所を展開し、高齢化で担い手不足に悩む過疎地のあらゆる地域資源を障がい者の仕事にする試みを行なっています。現在は東京と島根を1週間おきに行き来する「二地域居住」 を実践しながら、都市部と農村をつなぐネットワークの仲介者として、地域づくりに貢献しています。今回は自身の経験を踏まえながら地方での事業についてお話しいただきました。

レポート:荒井凛(神戸大学インターン)

過疎地域で事業をはじめた経緯

尾野さんは一橋大学の研究室に所属していましたが、同僚や上司との方向性の違いから研究室を出ることに。その後、大学の教科書リサイクル販売事業をゲリラ的にはじめたそうです。その仕事から専門書がよく売れることに気づき、場所をインターネットに移し、古書店を開業します。そして2006年に本社を島根に移し、過疎地域ならではの魅力である地代の安さから、古書店には欠かせない広い倉庫を安価に手に入れることができたそうです。また、障害者の方の就労支援を行う就労支援A型事業所として、古書店を運営しており、島根県と岡山県の二箇所で事務所を経営し、過疎に悩む地域で障害者雇用を生み出しながら、事業を展開されています。
こうした経歴を経て、現在尾野さんは”風の人”と呼ばれるようになりました。ひとつの土地に留まることなく、地域で必要とされる事業を展開していく様を表した言葉だそう。その仕事ぶりを聞いていると、尾野さんのフットワークのあまりの軽さに驚きを隠せませんでした。

地域の複雑な課題を解決する 「A×B」の発想

尾野さんにとって、地域で複雑化する課題解決において大切なことは「自分自身の興味あることと地域づくりとをつなげること」だそうです。そのためには一見関係なさそうな組み合わせを考えることも必要で、それは“アート×福祉”や、“医療×観光”、はたまた“若者×地域”など様々でした。そういった各地の事例をいくつか紹介していただきました。その中でも印象的だったのが“教育×福祉”の組み合わせ。岡山県岡山市の後楽館高校という公立高校にて行われる取り組みです。“地域に開かれた学校”をモットーとする後楽館高校では月1回の割合で「地域住民との話し合いの場」を設け、生徒たちと地域住民の対話の場として勉強会を開いていました。しかしそこに来るのはいつも同じメンバーで、地域と学校のつながりを深めるには人数も多様性も足りない状況でした。そこに目を付けたのが後楽館高校のとある教員。「工夫すれば良い世代間交流の場となるのではないか」と思い、勉強会を開く代わりに食堂を一般開放したのです。その名も「らっかんランチ食堂」。年齢に制限は無く、子どもも大人も集まって高校生と共に昼食をとる形式です。幅広い世代の方々がお昼を食べに訪れるので、地域についての多岐にわたる情報交換が可能となったそう。本当の意味での世代間交流を実現させた例と言えます。

質疑応答

来場いただいた方々と質疑応答をおこないました。

来場者 : お話では地域で男性と仕事の話をすることが多いようですが、実際に地域で権力を持っているのは男性なのですか?
尾野 : そういった男女の差はあまりありません。しかし会長などは男性が務めている場合が多いので、ある意味では男性社会の地域もあります。
来場者 : 仕事はどうやって取ってくるのですか?依頼や宣伝など、どういったことをしていますか?
尾野 : 基本的に何でもします。宣伝もしますし、その宣伝を見て依頼が来ることもあります。またこちらから営業をかけて仕事を取ることも多いです。ただ実際に仕事として成立するのは3件に1件というところが現状でしょうか。

まとめ

「地域プロデューサーとして働きたいと思うなら、まずは”代打”の仕事をすることだ」と言う尾野さん。仕事をする側がキャンセルした仕事は大体が期日の迫っているものが多く、誰もやりたがらないそう。
また、地域での町づくりは掛け持ちで何かをしようとする若者の力が必要だと強く言います。起業家ならではの視点から、私たちにできることや事業について大切なことを教えてくださいました。

長田A チーム |活動レポート

9月23日に実施したKOBE MEME初回レクチャー以降、参加者らは地域ごとに4つのチームに分かれてプランを構想しています。(「長田A」、「長田B」、「兵庫A」、「兵庫B」)
今後、メンバーによる活動レポートを順次公開していきます。初回は、仲の良さが印象的な長田Aチームせんだしんいちさんのレポートです。

長田Aチーム|活動レポート

レポート:せんだしんいち

平成30年9月23日、下町芸術大学の第1回レクチャーとKOBE MEMEの第1回目のワークショップが、神戸市長田区のヨンバンカンニカイ(久保町6丁目アスタくにづか4番館2階)で行なわれました。
その際に僕たちは、4つのチームに分かれた中の”長田Aチーム”となりました。
50分ほどのカードワークショップとチームディスカッションを経て、長田Aチームでは2つの案が出され、それを発表しました。
2つの案とは、MEME × PLAN でいうと、(長田の)おばちゃん×街コン、長田港(で獲れる魚)×シェアキッチン をテーマにしてみようということになりました。
MEMEという言葉は耳新しい言葉でもあり、その意味は地域が持つ文化的遺伝情報とでもいうところなのでしょうか。

すでに今期開校以来、下町芸術大学のフィールドワークを含む全11回のレクチャーは11月までで終了していますが、これらのレクチャーを通じて視野は広がり、今まで知らなかった長田や兵庫の街の歴史、街の魅力に体感を持って触れることが出来たように思います。
また切り込めるようなヒントもたくさんあったように思います。
これに並行して、メンバー各々がたとえば、長田って猫が多いけど何匹ぐらい居るんだろうね?とか、久しぶりに高取山に登ってみようと思うんだけど地図の南北を反対にしてみたら山頂からの景色はどんな風に見えるんだろうね?とか、
初回に配布された資料の中に長田区で今でも地蔵盆という行事が盛んだと書いてあったけど合計213地蔵の祠ってどこにあるんだろうね?とか、今まで長田区の南北の交流はあまりなかったらしいけど、海のものを山に住む人に持って行ってあげたり、逆に山のものを海に住む人に持って行ってあげたり出来たら(リュックサックマーケット)、なんだか楽しそうでない?とか、KOBE_MEMEに直接関係ないけどこんな行事があるみたいだから行ってみるね!といった感じで、MEMEとなる情報を掻き集めながら、それぞれのメンバーが積極的に街と関わって「関係人口」を増やしているというのが現況です。

直近では、MEME(長田の)おばちゃん×PLAN(長田の南北の)縦ライン、というのが長田Aチームの取り組みで、とりあえずみんなで高取山に登って地図の南北を逆さまに見ながら景色を眺めて、月見茶屋で餃子を食べてビールを飲みながら具体的なプランを考えてみようか、というのが現況です。
茶屋ごとにあるという高取山の登山会のことなどを聞き取りをしながらではありますが。

長田にはまだまだ知らない歴史や伝承、街の文化や人の息づかい、行ったことのない路地裏や集落などがたくさんあり過ぎて時間の無さから手に負えない感じもあり、逆に自分たちの知らない取り組みがすでにあるかも知れません。
ちょうど今(12月1日現在)、神戸新聞では1か月以上に渡って長田の特集記事が連載され、また、町のことをよく知る和田幹司さんが4冊目の著書となる、長田まち歩きの本を出版されようとしているところでもあります。
そんな期間を通じて、長田Aチームのメンバーからもっと「何をやってみたいの?」という答えを引きずり出して、MEME×PLANの中からこれは面白そうだな!と感じてもらえるプレゼンテーションが出来るように提案するつもりですので、乞うご期待ください。

10/8 下町芸術大学 服部滋樹編「瀬戸内経済文化圏という新たな概念とその可能性」

10月8日、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)にて第5回目の下町芸術大学を開講しました。
今回はgrafの代表である服部滋樹さんが講師を務めてくださいました。テーマは「瀬戸内経済文化圏という新たな概念とその可能性」。ゲストスピーカーには、神戸R不動産から小泉寛明さん、神戸市クリエイティブディレクターの天宅正さん、平野拓也さん、神戸市都市型創造産業統括プロデューサーの藤野秀敏さんが登壇してくださいました。今回はディスカッション形式で、瀬戸内経済文化圏について考えていきました。お酒も交え、終始明るい雰囲気で、議論も盛り上がりました。

レポート:高木晴香(神戸大学インターン)

「瀬戸内経済文化圏」とは

今回のディスカッションの主なテーマとなった「瀬戸内経済文化圏」。これは近年、各地で活動するクリエイターやアーティストが集まり、瀬戸内各地の資源や魅力を発信する新たな繋がりを構築していこうとする取り組みです。

瀬戸内は温暖な気候のため、ゆったりとした雰囲気が漂っています。さらに資源も豊富に手に入るため、モノづくりなどクリエイティブな活動にうってつけの場所だと言えます。瀬戸内にある11の県が、各県10個モノを作るだけでも110個の新しいモノを生み出せてしまいます。さらに、瀬戸内のある場所で生み出された野菜や木材などが、瀬戸内の他の場所で商品になったり、それを宣伝する媒体をつくるといった瀬戸内の各地が関係し合うことで、それぞれの特色を生かしたモノ作りもできるかもしれません。瀬戸内は、新しいものを生み出せる可能性に満ちているということがわかりました。

 

地方都市で生きるということ

瀬戸内、と聞くと日本の中心からは外れた場所というイメージを持つ方が多いかもしれません。地方には仕事がなく、つまらない、という意見もよく耳にします。しかし、だからこそ地方では新たな仕事を生み出す楽しみがあるのです。生きるために自分たちでブランドを作り、運営していくこと。それこそが瀬戸内で仕事をすることの魅力です。しかし、どれだけ優秀なクリエイターやデザイナーが集まっても、顧客がいなければ市場は成り立ちません。そのような負の環境をどう乗り越えるかが、瀬戸内エリアだけでなく、地方都市で生き抜くために必要なのだとわかりました。

瀬戸内エリアにおける観光と経済

地域経済を語るうえで欠かせないのが「観光」です。今回のディスカッションでは瀬戸内エリアにおける観光、その中でも神戸の観光についての話題で盛り上がりました。神戸は有名で大きな都市だけれど、意外と見るところがない、地域の人でさえおすすめできる場所があまりない、という印象を持たれています。そのような課題に対してインバウンドという視点から考えました。実は、海外から来ている観光客の方が神戸の魅力を知っていて、上手に神戸を楽しんでいるそうです。その際に神戸として注目されるのは自然で、例えば、神戸市北区で試行的にされているアグリツーリズムの企画では、サイクリングを楽しみに来た方が、農業と宿泊ということをテーマに農村地域を訪れています。こういった状況を逆手にとって、その

楽しみ方を広めていくことが今後神戸の観光を活性化させていくヒントになるのではという意見もありました。神戸の魅力をアピールするにあたり、地域の人から見た魅力だけではなく、外から見た魅力も大切だということを感じました。
また、神戸は横のつながりは多いですが、海から山にかけての縦のつながりが希薄であるという問題も話題になりました。神戸を横向きに巡るのではなく、海と山を生かした縦方向での神戸の楽しみ方も今後の新たな観光資源となるかもしれません。
さらに、瀬戸内エリアの観光において、神戸が担う役割も重要になってきます。神戸は瀬戸内の一部であるのと同時に、大阪や京都などの大きな都市とも隣り合わせになっている地域です。これを生かして、神戸は瀬戸内へのゲートシティとなり、なおかつ瀬戸内の中心地になるという役割を担うことができるかもしれません。

質疑応答

最後に、来場くださった方々と質疑応答を行いました。

来場者:神戸はヨコの繋がりは強いがタテの繋がりは弱いというお話がありましたが、どういうところに注目したら、神戸の中心となるところが見えてくるのでしょうか?
服部:神戸の中心となるものを発見することは難しいです。しかし、神戸の輪郭を発見するのはもっと難しいです。なぜなら輪郭は外に出てみないとわからないからです。そして今まさに神戸は輪郭が無い状態にあります。そこで、新たな輪郭を生み出すことで神戸の中心が見えてくると考えています。

来場者:では、輪郭のハッキリしている地域とはどこでしょうか?
服部:うどん県でおなじみの香川県や大分県、愛媛県は比較的輪郭がはっきりしていると思います。香川県というとうどん、大分県だと温泉を思い浮かべますよね。そのような象徴性が高いものがある場所は輪郭がハッキリしています。ここで、神戸の輪郭を作ろうとすると、レイヤーが重要になってくると考えます。例えば、先ほどのタテとヨコのつながりのレイヤーや、神戸の中心性と対になる農業や自然、またはサブカルチャーのレイヤーです。今までのこれらのつながりを一度壊して、新たな組み合わせを作ることで新しいジャンルが生まれるのではないかと考えています。

まとめ

今回の下町芸術大学は、瀬戸内経済文化圏を中心に、神戸という街の在り方を考え直すきっかけとなりました。京阪神としての神戸だけではなく、瀬戸内の一部としての神戸を考えることは、新鮮で興味深いものでした。クリエイターやアーティストが集まり始めているという好条件を生かして、瀬戸内エリア全体で成長するために、瀬戸内の経済や文化で新たな枠組みを作って活性化させていくことが必要だということを感じました。

10/8 下町芸術大学 服部滋樹編「瀬戸内経済文化圏という新たな概念とその可能性」

10月8日、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)にて第5回目の下町芸術大学を開講しました。
今回はgrafの代表である服部滋樹さんが講師を務めてくださいました。テーマは「瀬戸内経済文化圏という新たな概念とその可能性」。ゲストスピーカーには、神戸R不動産から小泉寛明さん、神戸市クリエイティブディレクターの天宅正さん、平野拓也さん、神戸市都市型創造産業統括プロデューサーの藤野秀敏さんが登壇してくださいました。今回はディスカッション形式で、瀬戸内経済文化圏について考えていきました。お酒も交え、終始明るい雰囲気で、議論も盛り上がりました。

レポート:高木晴香(神戸大学インターン)

「瀬戸内経済文化圏」とは

今回のディスカッションの主なテーマとなった「瀬戸内経済文化圏」。これは近年、各地で活動するクリエイターやアーティストが集まり、瀬戸内各地の資源や魅力を発信する新たな繋がりを構築していこうとする取り組みです。

瀬戸内は温暖な気候のため、ゆったりとした雰囲気が漂っています。さらに資源も豊富に手に入るため、モノづくりなどクリエイティブな活動にうってつけの場所だと言えます。瀬戸内にある11の県が、各県10個モノを作るだけでも110個の新しいモノを生み出せてしまいます。さらに、瀬戸内のある場所で生み出された野菜や木材などが、瀬戸内の他の場所で商品になったり、それを宣伝する媒体をつくるといった瀬戸内の各地が関係し合うことで、それぞれの特色を生かしたモノ作りもできるかもしれません。瀬戸内は、新しいものを生み出せる可能性に満ちているということがわかりました。

 

地方都市で生きるということ

瀬戸内、と聞くと日本の中心からは外れた場所というイメージを持つ方が多いかもしれません。地方には仕事がなく、つまらない、という意見もよく耳にします。しかし、だからこそ地方では新たな仕事を生み出す楽しみがあるのです。生きるために自分たちでブランドを作り、運営していくこと。それこそが瀬戸内で仕事をすることの魅力です。しかし、どれだけ優秀なクリエイターやデザイナーが集まっても、顧客がいなければ市場は成り立ちません。そのような負の環境をどう乗り越えるかが、瀬戸内エリアだけでなく、地方都市で生き抜くために必要なのだとわかりました。

瀬戸内エリアにおける観光と経済

地域経済を語るうえで欠かせないのが「観光」です。今回のディスカッションでは瀬戸内エリアにおける観光、その中でも神戸の観光についての話題で盛り上がりました。神戸は有名で大きな都市だけれど、意外と見るところがない、地域の人でさえおすすめできる場所があまりない、という印象を持たれています。そのような課題に対してインバウンドという視点から考えました。実は、海外から来ている観光客の方が神戸の魅力を知っていて、上手に神戸を楽しんでいるそうです。その際に神戸として注目されるのは自然で、例えば、神戸市北区で試行的にされているアグリツーリズムの企画では、サイクリングを楽しみに来た方が、農業と宿泊ということをテーマに農村地域を訪れています。こういった状況を逆手にとって、その

楽しみ方を広めていくことが今後神戸の観光を活性化させていくヒントになるのではという意見もありました。神戸の魅力をアピールするにあたり、地域の人から見た魅力だけではなく、外から見た魅力も大切だということを感じました。
また、神戸は横のつながりは多いですが、海から山にかけての縦のつながりが希薄であるという問題も話題になりました。神戸を横向きに巡るのではなく、海と山を生かした縦方向での神戸の楽しみ方も今後の新たな観光資源となるかもしれません。
さらに、瀬戸内エリアの観光において、神戸が担う役割も重要になってきます。神戸は瀬戸内の一部であるのと同時に、大阪や京都などの大きな都市とも隣り合わせになっている地域です。これを生かして、神戸は瀬戸内へのゲートシティとなり、なおかつ瀬戸内の中心地になるという役割を担うことができるかもしれません。

質疑応答

最後に、来場くださった方々と質疑応答を行いました。

来場者:神戸はヨコの繋がりは強いがタテの繋がりは弱いというお話がありましたが、どういうところに注目したら、神戸の中心となるところが見えてくるのでしょうか?
服部:神戸の中心となるものを発見することは難しいです。しかし、神戸の輪郭を発見するのはもっと難しいです。なぜなら輪郭は外に出てみないとわからないからです。そして今まさに神戸は輪郭が無い状態にあります。そこで、新たな輪郭を生み出すことで神戸の中心が見えてくると考えています。

来場者:では、輪郭のハッキリしている地域とはどこでしょうか?
服部:うどん県でおなじみの香川県や大分県、愛媛県は比較的輪郭がはっきりしていると思います。香川県というとうどん、大分県だと温泉を思い浮かべますよね。そのような象徴性が高いものがある場所は輪郭がハッキリしています。ここで、神戸の輪郭を作ろうとすると、レイヤーが重要になってくると考えます。例えば、先ほどのタテとヨコのつながりのレイヤーや、神戸の中心性と対になる農業や自然、またはサブカルチャーのレイヤーです。今までのこれらのつながりを一度壊して、新たな組み合わせを作ることで新しいジャンルが生まれるのではないかと考えています。

まとめ

今回の下町芸術大学は、瀬戸内経済文化圏を中心に、神戸という街の在り方を考え直すきっかけとなりました。京阪神としての神戸だけではなく、瀬戸内の一部としての神戸を考えることは、新鮮で興味深いものでした。クリエイターやアーティストが集まり始めているという好条件を生かして、瀬戸内エリア全体で成長するために、瀬戸内の経済や文化で新たな枠組みを作って活性化させていくことが必要だということを感じました。

10/7 下町芸術大学 前畑洋平編「和田岬、兵庫津を歩きながら街を体験する」

10月7日、下町芸術大学第4回目、兵庫区の和田岬、兵庫津を巡る下町歩きツアーを開催しました。前日に開催された長田区での下町歩きツアー同様長時間にわたるフィールドワークだったため、学ぶことの多い充実したツアーとなりました。
ガイドをしてくださったのは、NPO法人J-heritageの総理事を務める産業遺産コーディネーターの前畑洋平さん。今回のテーマは「和田岬、兵庫津を歩きながら街を体験する」。
普段この辺りの案内役をすることが少ないという前畑さんは、それでもかなりの知識を披露してくださいました。その中で、町の文化や変遷、歴史、産業などについてまとめます。

レポート:荒井凛(神戸大学インターン)

線路の名残からみる町の歴史


新開地付近にはかつて鉄道路線の開通計画が浮上して頓挫した過去があり、その名残だけがあるような場所がいくつかあります。例えば集合場所の神戸駅から少し北に歩いたところに、前畑さんに言わせれば「不自然なカーブ」がついた道路あります。建物で構成されるそのカーブは、かつて神戸電鉄が新しい路線を作ろうとした名残だそうです。しかし途中で企画倒れしたために線路開通のためにおこなった区画整理だけが残り、それに沿って建物が建ったことで不自然な曲がり角が今も残っています。他にも、もともと神戸電鉄で使われていた車両が街中に残っていたり、と交通に関する情報が盛りだくさんでした。
アートの面に注目して町を見渡してみれば、地下のトンネルに絵が描かれていたり街中にカラフルな建物が建っていたり。和田岬はいろいろな文化が入り混じった雰囲気の町だということが分かります。

時代で変化する兵庫津の役割

兵庫区南部は、平清盛の時代に栄えた大輪田泊があった場所として有名です。このツアーでも平清盛にまつわるスポットをいくつか回りました。平家の平経盛の墓と言われる琵琶塚や兵庫運河に架かる橋など、見渡してみると源平合戦などの歴史を刻む街としての様子が伺えます。平家のほかにも高田屋嘉兵衛のゆかりの地として高田屋嘉兵衛本店の地を示す石碑もありました。
かつて大輪田泊が存在したことから、兵庫区南部は水運が活発な街として知られています。ツアーでは川崎重工の第3潜水艦ドックがちょうど海面に顔を出し、潜水艦のメンテナンスをしているところを見ることができました。前畑さんによると、川崎重工と三菱重工、双方の神戸造船所では海上自衛隊の潜水艦が毎年交互に一隻ずつ造られているそう。日本で初めての潜水艦や国産の潜水艦を造ったのは川崎重工だそうで、今年は三菱重工神戸造船所にて造られた潜水艦、「おうりゅう」が最近発表されたところだとか。兵庫区南部がこうした軍事的な要素が混じった場所であることは一般的には知られていません。しかし、戦時中には軍事拠点として空襲の標的になり、大きな被害にあったそうで、決して穏やかとは言えない歴史が垣間見えます。

まとめ

今回は産業や歴史に重点を置き、さらに戦争についてもクローズアップした町歩きツアーでした。文化的な面では、建築物についての説明をたくさんしていただき、まさに知識の宝庫といった具合に前畑さんからたくさんのことを学びました。最後には和田岬にある「カルチア食堂」の隣にできたイベントスペース「TONARI」をお借りして交流会が行われ、和やかな雰囲気の中それぞれがツアーを振り返りながら話が弾み、楽しい時間となりました。ツアーガイドをしてくださった前畑さん、ありがとうございました。

10/6 下町芸術大学 角野史和編「駒ヶ林・真陽地区を体験するフィールドワーク」

10月6日に第3回目となる下町芸術大学、「駒ヶ林・真陽地区を体験するフィールドワーク」を実施しました。台風が心配されていましたが、気持ち良く晴れた天気となり、汗をかいてしまうほど。今回は、建築家の角野史和さんに下町の良さをお話しいただきながら路地裏や川、海などを中心に3時間にわたる町歩き。道中は、街の変遷、多文化共在、食や防災など、様々な視点から駒ヶ林・真陽地区を紐解いていきました。巡ったスポットはたくさんありましたが、その中から多文化共在、食、街の文化についてのお話を抜粋してまとめます。

レポート: 荒井凛(神戸大学インターン)

多文化共在-様々な文化の交わる町-

集合場所は地下鉄駒ヶ林駅。角野さんの自己紹介を兼ねた挨拶もそこそこに町歩きへとくりだしました。最初のテーマは「多文化共在」。地下鉄海岸線沿いを流れる新湊川にて説明いただきました。
新湊川は湊川から派生し、苅藻川と合流して海側に流れています。湊川の氾濫対策のために作られた河川とも言われています。もともとこの沿岸には、朝鮮人集落があり、労働者として新長田南部に来ていた韓国人やベトナム人、中国人など、様々なルーツを持つ人たちが暮らしていたそうです。近くにはベトナム料理店が何軒かあり、名残があることがわかります。新長田にはこうした多種多様な人々が集まっており、そのことを角野さんは「多文化共在」と表現します。「共生」ではなく「共在」と表現する理由は、「互いに助け合っているわけではなく、ただ共にいる、そばにいるという意味を出すため」だそうです。「共生」よりも各々の関係性は密着していないけれど、異文化をもつ人々が自然に町の中に溶け込んでいる。そんな様子を表すために選んだ言葉だとか。

食-香ばしい匂いが漂う商店街-


このエリアは“新長田南部といえば粉もん”と言われるほど、お好み焼きなどのB級グルメがとても多いところ。今回のツアーでも食べものに関係するスポットをたくさん回りました。印象に深く残るのは株式会社ばら食品。ばらソースで有名な会社ですが、新長田の六間道商店街にて販売されています。
また、道中休憩として昔懐かしの雰囲気が漂う「丸五市場」に立ち寄り、からあげやビールをおつまみに新長田講義を続けます。

街の文化-知られざる産業と芸術文化-


意外にも知られていない街の文化としては、靴や裁縫の工場が多いこと。とにかく靴産業が活発で、新長田南部に集中しているのだとか。「正確なデータはないが、内職も含めると5人に一人が業界人らしい。小さいミシン場など、分業の下請け加工場もそこかしこにあり、」一般の家の土間にミシンを置き、そこで作業をするという形態も少なくないそう。
そういった産業のほか、「下町芸術祭」を皮切りに芸術のまちとしても知られるようになってきています。まちに住むアーティストの作品が町中に置いてあったり、広場に絵の具が塗られていたり、とちょっとしたアートが町のいたるところに散りばめられています。それらの中には防災につながるものもあり、アートと人々が密接した関係にあることが伺えます。

まとめ

今回は約3時間にわたるフィールドワークでとても充実した内容でした。角野さんの知識量に、参加されている方も感心し、圧倒されていたように思います。紹介したスポットのほかにもたくさんの場所を見て回りました。それは、映画のワンシーンに使われた場所であったり、歴史ある建築物があったりと、新長田にこんなところがあったのかと驚くようなところばかり。ツアーに参加されていない方もぜひ実際に歩いて回っていただきたいと思うような一日でした。

10/6 下町芸術大学 角野史和編「駒ヶ林・真陽地区を体験するフィールドワーク」

10月6日に第3回目となる下町芸術大学、「駒ヶ林・真陽地区を体験するフィールドワーク」を実施しました。台風が心配されていましたが、気持ち良く晴れた天気となり、汗をかいてしまうほど。今回は、建築家の角野史和さんに下町の良さをお話しいただきながら路地裏や川、海などを中心に3時間にわたる町歩き。道中は、街の変遷、多文化共在、食や防災など、様々な視点から駒ヶ林・真陽地区を紐解いていきました。巡ったスポットはたくさんありましたが、その中から多文化共在、食、街の文化についてのお話を抜粋してまとめます。

レポート: 荒井凛(神戸大学インターン)

多文化共在-様々な文化の交わる町-

集合場所は地下鉄駒ヶ林駅。角野さんの自己紹介を兼ねた挨拶もそこそこに町歩きへとくりだしました。最初のテーマは「多文化共在」。地下鉄海岸線沿いを流れる新湊川にて説明いただきました。
新湊川は湊川から派生し、苅藻川と合流して海側に流れています。湊川の氾濫対策のために作られた河川とも言われています。もともとこの沿岸には、朝鮮人集落があり、労働者として新長田南部に来ていた韓国人やベトナム人、中国人など、様々なルーツを持つ人たちが暮らしていたそうです。近くにはベトナム料理店が何軒かあり、名残があることがわかります。新長田にはこうした多種多様な人々が集まっており、そのことを角野さんは「多文化共在」と表現します。「共生」ではなく「共在」と表現する理由は、「互いに助け合っているわけではなく、ただ共にいる、そばにいるという意味を出すため」だそうです。「共生」よりも各々の関係性は密着していないけれど、異文化をもつ人々が自然に町の中に溶け込んでいる。そんな様子を表すために選んだ言葉だとか。

食-香ばしい匂いが漂う商店街-


このエリアは“新長田南部といえば粉もん”と言われるほど、お好み焼きなどのB級グルメがとても多いところ。今回のツアーでも食べものに関係するスポットをたくさん回りました。印象に深く残るのは株式会社ばら食品。ばらソースで有名な会社ですが、新長田の六間道商店街にて販売されています。
また、道中休憩として昔懐かしの雰囲気が漂う「丸五市場」に立ち寄り、からあげやビールをおつまみに新長田講義を続けます。

街の文化-知られざる産業と芸術文化-


意外にも知られていない街の文化としては、靴や裁縫の工場が多いこと。とにかく靴産業が活発で、新長田南部に集中しているのだとか。「正確なデータはないが、内職も含めると5人に一人が業界人らしい。小さいミシン場など、分業の下請け加工場もそこかしこにあり、」一般の家の土間にミシンを置き、そこで作業をするという形態も少なくないそう。
そういった産業のほか、「下町芸術祭」を皮切りに芸術のまちとしても知られるようになってきています。まちに住むアーティストの作品が町中に置いてあったり、広場に絵の具が塗られていたり、とちょっとしたアートが町のいたるところに散りばめられています。それらの中には防災につながるものもあり、アートと人々が密接した関係にあることが伺えます。

まとめ

今回は約3時間にわたるフィールドワークでとても充実した内容でした。角野さんの知識量に、参加されている方も感心し、圧倒されていたように思います。紹介したスポットのほかにもたくさんの場所を見て回りました。それは、映画のワンシーンに使われた場所であったり、歴史ある建築物があったりと、新長田にこんなところがあったのかと驚くようなところばかり。ツアーに参加されていない方もぜひ実際に歩いて回っていただきたいと思うような一日でした。

9/28 下町芸術大学 沼田理衣編「ソーシャルインクルージョンをアートの現場から考える」

9月28日、下町芸術大学第2回目の講座が兵庫区西出町にある「ヤスダヤ」という、2017年に閉店した下町情緒溢れる居酒屋跡にて開催されました。今回のテーマは「ソーシャルインクルージョンをアートの現場から考える」。地域の未来やそこに住む多様な人々と関係性を作り上げていくとはどういうことなのか。お話しいただくのは、大阪市立大学准教授の沼田理衣さん。沼田さんが専門とするアートマネジメントでは、芸術的な観点を主とするのか、それとも教育や町おこしなどの社会性を目的とするべきか。アートに関係する領域において避けては通れないアートプロジェクトが持つ目的の二面性、両者の折り合いをどうすべきかについても伺いながら、テーマについて深く考えさせられる講座でした。

レポート:荒井凛(神戸大学インターン)

音楽を介してコミュニティにアプローチ 沼田里依さん


大阪市立大学准教授である沼田里衣さんは、初め音楽療法を専門としたセラピストとして障害のある方などに向けた活動をしていましたが、やがて領域を移行してアートマネジメントに関わるように。そのわけは、音楽療法の中に問題があると考えたからだそうです。音楽と障害のある方、セラピストとクライアント、これらの関係性において、セラピストは果たしてクライアントの社会性を育み、自立を促すことができているのか。疑問に思った沼田さんは、自分が具体的にできることは何かを模索しました。その結果、障害のある方の生活の中にも音楽が当たり前のようにある社会を作りたいと思いアートマネジメントに携わるようになったのです。その中でも新しいものを自分で作り出すことに重点を置き、コミュニティアートを専門としました。コミュニティアートとは、アートを媒介にしてアーティストや市民などが協働し、コミュニティの抱える問題に取り組む活動のことです。

地域に根付いた文化と現代アートとの融合「運河の音楽」

2009年に開催された「運河の音楽」のチラシ

沼田さんが手がけたプロジェクトに「運河の音楽」というものがあります。これを例にアートマネジメントについて説明してくださいました。
運河の音楽とは、約6.5キロある兵庫運河沿いにアーティストを配置し、運河に沿って移動しながら順番にアーティストの作品に出会っていくという音楽を軸としたアートプロジェクト。アーティストの層は幅広く、子どもや学生、地域の方々にまで及びます。

「運河の音楽」は、まずほら吹き師によるほらの音で始まります。その後、地元の音楽隊が演奏しながら運河沿いを練り歩き観客はそれについていく。道中では、神戸大学アカペラサークルによる声楽や、子どもたちによるダンス、日頃から兵庫運河沿いで演奏している地元の人のハーモニカ演奏などが披露されました。
総勢230人が出演した大規模なこのプロジェクトを成立させるには、地域の方々との繋がりが必須であったと沼田さんは語ります。地域に住む人々にはその地域独自のコミュニティがすでに存在しています。そのため、沼田さんが一部の人に呼びかければ、それが呼び水となってどんどん参加者や会場が見つかったそう。どういうことかというと、コミュニティの中の一人に対して働きかけると、その一人がコミュニティ内に「面白そうなことがある!」と発信していく仕組みなのです。「運河の音楽」を振り返り、「男女の関係がけっこう重要だった」とユニークな意見も。例えば、「運河の音楽」に参加していたゲストアーティストの野村幸弘さんという方はとても爽やかな好青年で、当時女子の割合が大きかった神戸大学生に人気があったとか。
プロジェクトを立ち上げる際には、“どの年齢のどのような人がどういう人と一緒にいると心地良いか”に左右されることが多いことがよく分かりました。
また、アートマネジメントにおいて最も課題となるのが、アートへの情熱・欲求と社会的な利益との結びつきを言語化すること。助成金獲得はまさにその典型で、ただ単にアートへの欲求を提示するだけでは認めてもらえないことが多いそうです。しかし、その問題について沼田さんは、アートプロジェクト自体が社会的な役割を果たすこともある、と言います。なぜなら、アートプロジェクトはコンサート会場などのクローズな空間だけでなく、野外などのオルタナティブスペースを用いて日常の動線の中でアートの意義を伝えることができるからです。そのため、アートプロジェクトと社会問題は無関係ではないと沼田さんは考えています。プロジェクトを作り出すに上で大切なことを教えていただきました。

知的な障害のある人を含むアーティスト大集団 「音遊びの会」

(提供:音遊びの会)「音遊びの会」の演奏風景

次に、沼田さんが代表を務めた「音遊びの会」についても紹介いただきました。「音遊びの会」とは、2005年結成された、知的障害のある人を含むアーティスト集団です。「運河の音楽」でも演奏を披露し、活躍していたそう。

前述したように、沼田さんは音楽療法においてセラピストとクライアントの関係性において障害者の方の社会性を育むことができるのか思い悩んでいました。その経験から、「音遊びの会」では障害のある方が受け身ではなく自分から動くことに重きを置くようにしたそうです。つまり、ただ楽器の弾き方を教えてもらうのではなく、「自分の音を作る」という意識を持つような働きかけが為されるのです。「音遊びの会」の映像では障害のある方が画面の中を自由に動き回りながら演奏をしており、見ているこちらまで「音楽を作ろう」という意志が伝わってきます。また、「音遊びの会」には障害のある方や一般の方のほかにプロのアーティストがおり、彼らの演奏は今までに聴いたことのない新しい音を作り出しています。しかし団体の中でプロの方の発言力が強くなることも多く、障害のある方や一般の方と完全に対等な立場で意見を言い合うことが難しい場面が多々あるそうです。課題に取り組み、解決に向け意欲的に突き進む気概が伺えました。

質疑応答

最後に、受講者の方々と質疑応答がおこなわれました。

受講者:アートという言葉を多用されていましたが、沼田さんはアートやコミュニティアートをどのように捉えていますか?
沼田:アートにおける、作りたい、生み出したいという欲求は他人に伝えることがとても難しいものです。それをどうマネジメントし、生き生きとしたライブ感を作り出すかが重要になってくると思います。
日本においてコミュニティ音楽療法という音楽療法の一部はまだあまり知られていませんが、コミュニティアートは徐々に浸透しつつあります。コミュニティ音楽療法では、セラピストとクライアントとの関係ではなくコミュニティの中で問題を取り上げる意識を大事にしています。

今回は沼田さんが携わったプロジェクトの事例からアートについて考えるという内容でした。アートマネジメント、音楽療法など様々な観点から見たアートは他人から作品として見てもらうことが難しく、だからこそマネジメントにより伝えていくこと、社会的観点と繋げる工夫が重要なのだと分かりました。

9/23 下町芸術大学 影山裕樹編/KOBE MEME初回レクチャー

9月23日、第1回目の下町芸術大学 影山裕樹編、そしてその終了後、KOBE MEME参加メンバーを対象に初回レクチャーを新長田のコワーキングスペース「ヨンバンカンニカイ」にて開催しました。今回の講師であり、KOBE MEMEのディレクターを務める影山裕樹さんは、東京で編集者として活動しながら全国各地でローカルプロジェクトの実施、リサーチ、またそれを元に執筆活動をおこなわれています。下町芸術大学には地元の方だけでなく、様々な地域からお越しいただき初回から満員御礼という気持ちの良いスタートをきることができました。

レポート:髙木晴香(神戸大学インターン)、山口葉亜奈(事務局)

下町芸術大学「ローカルメディアの魅力と可能性、その次のかたち」


今回の下町芸術大学のテーマは「ローカルメディアの魅力と可能性、その次のかたち」。日本各地のローカルメディアの事例を多数ご紹介いただきました。地域密着型の情報発信や、コミュニティや人を繋ぐハブとしてのメディア機能に可能性を感じる講義となりました。講義の内容について簡単ですが、レポートをしていきます。

マスメディアとローカルメディア

ローカルメディアとは、一部の人に向けた情報発信であり、情報の発信者と受け手が双方向に影響を与えることのできるメディアを指す、と影山さんは言います。例えば、ローカルメディアは読者である地域の人の反応によって次回の企画がガラリと変わることもあるそうです。そもそも、マスメディアとは、大衆向けの情報を一方向に発信する媒体のことを指すとのこと。しかし、マスメディアとローカルメディアは対になるものではなく、日本のマスメディアは世界から見れば日本のローカルメディアと言えます。それに対し、インターネットの発達に伴い、より手軽に全世界の情報を知ることが可能になり、小さなローカルメディアでもニッチな情報を世界中に発信する可能性を得ました。
また、影山さんは、カナダの英文学者M.マクルーハンを引き合いに出し、「メディアはメッセージである」と話します。つまり、メディアは掲載しているコンテンツだけでなく、媒体となるそのもの自体もメッセージを持ち得るため、コンテンツの内容と同じくらいどの媒体を使って情報発信するかということが重要である、ということです。

ローカルメディアでコミュニティを繋ぐ

そもそも、ローカルメディアをつくることはあくまで「手段」であり、「目的」ではありません。地域の課題を解決することや新たな魅力を発見することなど、地域のために何かをしたい!という「目的」を達成するために、ローカルメディアはあるべきです。
影山さんは、ローカルメディアを「異なるコミュニティをつなぐツールである」と説明しました。ローカルメディアを作る過程において、普段出会わないような人たちが協働し、議論を交わす。そして、出来上がったローカルメディア自体が、自分とは異なるコミュニティに属する人と出会うきっかけとなっていきます。
では、なぜ異なるコミュニティを繋げる必要があるのでしょうか。
それは、コミュニティの分断が現代社会の問題だと影山さんは考えているからです。私たちは無意識のうちに自分と同じような人々と集まってコミュニティを形成する傾向にあります。例えば、世代が近い人同士、共通のルーツを持つ人々などが集まりコミュニティを形成しています。それらのコミュニティ同士が交わることは少なく、無意識のうちにお互いが不信感を抱いてしまう、これこそがコミュニティが分断することの問題なのです。そのためメディアは、複数の異なる価値観や意見から構成する公共的なものであり、コミュニケーションを生みだすツールとして機能することが大事なのです。

コミュニティ同士の摩擦

異なるコミュニティをつないだ時、どうしても価値観の違いによるすれ違いは起こります。しかし、価値観の違いや、ぶつかりがあるからこそ豊かなものができるそうです。
すれ違いを許容する訓練をすることはどこの地域においても大事です。お互いのことをよく知らないがゆえに、摩擦が起こることは当たり前で、影山さんはむしろ摩擦をどんどん起こしていきたいと言います。その摩擦を積極的にとらえ、耐えて続けていくことで、面白いことが起きていくからだそうです。

質疑応答

下町芸術大学の質疑応答では、KOBE MEMEに関する質問が多数寄せられました。その一部を紹介します。

来場者:KOBE MEMEのイメージをもう少し教えてください。
影山:長田といえば鉄人、というように、わかりやすい情報に人々は集まっていきやすいです。でも、表には出てこないけれど長田・兵庫らしいことは住民にヒアリングするといっぱい出てきます。地域をベースにプロジェクトを起こすときは、表に出てこない地域らしさを大事にしたい。そうすることでその地域でプロジェクトを行う必然性がでてきます。目に見えない地域の中で受け継がれている文化的な遺伝子=MEMEを掘り起こすこと。神戸のMEMEを見つけだし、それを未来に継承するためにどんなプロジェクトを掛け合わせるかを考え、事業化を目指していくのがKOBE MEMEです。
他地域でも似たようなプロジェクトはありますが、経済活性に関わるものが多いです。しかしKOBE MEMEでは文化を掘り下げます。地域の人が、自分の地域に誇りを持つきっかけを作りたいのです。
岩本順平(KOBE MEMEプロデューサー):地域課題は今後減ることなくどんどん増えていくと思います。そこに応え続けるのは結構しんどいこと。だから地域課題に答えるというよりは、地域の価値を創り出したいと考えています。それを創り出すヒントとして下町芸術大学などで町のことを学んでもらっています。

KOBE MEME初回レクチャー

下町芸術大学 影山裕樹編の講座終了後には、KOBE MEME参加者を対象とした初回レクチャーが開催されました。
冒頭でKOBE MEMEのプロジェクト概要を説明したのち、地域ごとの4つのグループに分かれ、自己紹介とカードワークショップをおこないました。各グループにはそれぞれ地域で事業やプロジェクトを展開されている方々に、グループ付きメンターとして参加いただき、適宜アドバイスをもらいながらグループワークが進行していきました。
(グループ:長田A、長田B、兵庫A、兵庫B)

カードワークショップ

カードワークショップでは、あらかじめ長田、兵庫南部の地域らしさ(MEME)が書かれたミームカードと事業・プロジェクトのかたちが書かれたプランカード各17枚と白紙カードを数枚用意しました。
(例)
ミームカード:角打ち、粉もん、靴づくり、シャッター商店街 等
プランカード:街コン、民泊、ニュー回覧板、シェアキッチン 等

参加者はそのカードをもとに、地域らしさからどのようなプランが生まれ得るか、また既存のプランにどのように地域らしさを組み込むことができるかディスカッションを行ないました。

30分のグループディスカッション後には、各グループ5分以内で話し合ったプランについてプレゼンテーションおこないました。それぞれ短い時間ながら下町の地域らしさが垣間見えるプランとなっていました。

長田A:おばちゃん×街コン
(地元のおばちゃんと観光客をマッチングさせてガイドツアーを行う)
漁業×シェアキッチン
(長田港で水揚げされた魚を使ったシェアキッチン)
長田B:おばちゃん×街コン
(働き終えた年配の方と地域のお困りごとや外国人移住者をマッチングさせる)
兵庫A:和田岬線×マルシェ
(和田岬線の中でマルシェやカフェなど電車空間を用いたイベント)
防災・シャッター商店街×民泊
(神戸が経験した震災経験を体験し防災について考える民泊)
兵庫B:運河×車内貸切・ショートツアー・外呑み会
(船を貸し切ったイベントや、市場など運河沿いのポイントを巡るショートツアー)

初回レクチャー終了後は長田のディープスポットである丸五市場の中華料理屋「めいりん」さんにて懇親会をおこないました。鍋をつつきながら、大盛り上がりとなり、焼酎の一升瓶が開くほどに。参加者達も打ち解けた様子で、終電まで続く深い夜となりました。

今回の下町芸術大学では、ローカルメディアの魅力とその可能性について学びました。KOBE MEMEでももしかしたら、ローカルメディアを使う、または新しく作るチームが出てくるかもしれません。その時に、どのような内容をどのようなメディアに乗せて伝えるかということをしっかり考えなければいけません。また、KOBE MEMEを神戸でしかできないプロジェクトにするために、長田区・兵庫区の見えない「らしさ」をもっと発見していかなければいけないと実感しました。地域のことを良く知る人に話を聞くことで、人から人へ受け継がれてきたMEMEを発見する。自分の足で街を歩いて、肌で地域らしさを感じる。KOBE MEMEでは今後、地域を良く知る方のお話を聞ける「下町芸術大学」と、自分たちでの調査で得たMEMEを掛け合わせ、新しい価値を生み出していきたいと考えています。

【レポート】KOBE MEMEキックオフ説明会

8月24日、新長田のコワーキングスペースヨンバンカンニカイにて「KOBE MEMEキックオフ説明会」を実施いたしました。

KOBE MEMEは神戸の下町を舞台に新しいコミュニティと事業をつくる2カ年プロジェクト。今回は参加を検討する学生、クリエイター、地域の方々に向けて、KOBE MEMEのプロジェクト説明、またゲストをお招きし、他地域で実施されている事例から意見交換を行いました。

乾杯からはじまった異例の説明会。
平日の夜にも関わらず、約30名の幅広い世代の方々が参加くださり、和やかに進行していきました。

KOBE MEME(コウベミーム)プロジェクト概要説明

導入では、プロデューサーの岩本順平さんがKOBE MEMEのプロジェクト概要を説明しました。KOBE MEMEの舞台である神戸市長田区南部・兵庫区南部は、神戸のものづくりを支えてきた小さな工場や長屋があつまる下町エリアです。下町ならではの人情溢れる空気感が残っており、「おしゃれなまち神戸」とは一味異なる魅力を持っています。しかしながら、神戸市の中でも高齢化率や空き家空き地率が非常に高く、古い家屋が並んだ密集市街地として防災面でも不安をもつなど、様々な課題を抱えています。今年度はそのような地域のもつ魅力や課題を、町の歴史や風土など文化的背景を学ぶレクチャープログラムを通して掘り起こし、この地域に根ざした事業プラン、プロジェクトを構想していきます。

他地域の事例紹介

ディレクターの影山裕樹さんは、全国各地で発行されるフリーペーパー、本、雑誌などのローカルメディアに精通する編集者で、自身も地域の中で新たなプロジェクトを立ち上げています。最近では”CIRCULATION KYOTO”や”GIFUMEME”のディレクションを行なっています。“CIRCULATION KYOTO”は2017年から始まり、京都市内の5つのエリアごとに、ぞれぞれの地域らしいローカルメディアを1年かけて構想・発表するプロジェクト。学生や社会人など約40名の参加者が、自主的なリサーチを重ね、各地域にふさわしい、紙やウェブにとらわれないメディアを発表。2018年度はその発表成果を引き継ぎ、各エリアで舞台作品を上演するプロジェクトを展開しています。(CIRCULATIONKYOTO)
MEMEシリーズ第1弾”GIFU MEME”は岐阜県恵那市を舞台に2018年8月にスタート。3つの活動エリアに分かれ、2ヶ月間のワークショップやリサーチを経て、「地域×クリエイティブ」の事業プランを構想し、公開プレゼンテーションを行います。(GIFUMEME
影山さんはこれらのプロジェクトを経て、改めて“地域らしさ”の解像度を上げる必要性を感じたそう。文化的遺伝子を意味する”MEME“という言葉をタイトルにしたのは地域の中で長年培われてきた手仕事や目に見えない慣習などの”地域らしさ”を大事にしていきたいという想いが込められています。

ゲストによる他地域の事例発表&ディスカッション

地域でクリエイティブな活動をしているやまぐちくにこさんと法幸勇一さんをゲストに、事例紹介を兼ねた自己紹介をしていただき、プロジェクトメンバーと共に意見交換を行いました。

淡路島を耕す女 やまぐちくにこさん

©︎ハタラボ島協同組合

やまぐちくにこさんは、淡路島で生まれ育ち、大嫌いだった淡路島を自分が楽しめるフィールドにするためアートという切り口から淡路島の魅力を掘り起こし、島に根付いた様々なプロジェクトを手がけています。名刺に自ら書かれた肩書き“淡路島を耕す女”として、新しいことにチャレンジする土壌を島の中につくりたい!とクリエイティブな力を信じ、新たな価値の創出に奮闘しています。
淡路島の雇用創出を図るプロジェクト「淡路はたらくカタチ研究島」では、島内外のクリエイターと共に、淡路島ならではの価値を見直し、再発見し、島の生業にフォーカスを当て、観光と食をテーマに多様なセミナーやツアーの開催、島の豊かな地域資源を活かした事業の起業や商品開発をサポート。現在もプロジェクト参加者らが出資して設立した「ハタラボ島協同組合」で研修や人材採用などの事業を継続しておこなっています。

 

世界一周ブログ旅を敢行した 法幸勇一さん


法幸勇一さんは、2018年より学生のNPO活動への参画を支援する神戸ソーシャルキャンパスのコーディネーターとして神戸を拠点に活動しています。そのキャリアは異色で、世界一周講演家、コーチ、ブロガーとしても活動するパラレルワーカーです。メーカーでの6年半の勤務を経て、2016年に世界で活躍する日本人をインタビューする旅ブロガーとして世界一周を敢行しました。その旅中訪れたリオのスラム街ファベーラは、旅行者が絶対に行ってはいけないなどネガティブな要素で有名でしたが、オランダ人アーティストが街中をキャンパスに巨大壁画プロジェクトを立ち上げたことで観光地として有名になった街。このプロジェクトでは地域住民を雇用し、壁画を描いてもらうことで地域貢献と生業ということをミックスすることで、住民のシビックプライドを高めることができたそうです。このような海外での経験を生かし、神戸の多国籍な面を発信していくプロジェクトを立ち上げようとしています。

質疑応答

最後に来場してくださった方々と質疑応答をおこないました。

来場者:企業において、プロジェクトの評価は目標を達成したか、という点に基づいていますが、KOBE MEMEのゴールはどこに設定していますか?
岩本:KOBE MEMEはエリアごとにその地域らしい事業プランを構想、発表してもらうことがゴールですが、裏目標として、空き地や空き屋などの利活用プランなど地域課題を解決する事業が出ることを期待しています。発表された事業プランは2019年以降、ディレクターやメンターにも引き続き協力いただいて事業化を目指し、下町芸術祭2019とも連携を図っていきたいと思っています。事業化する際に必要な資源については、僕たちだけでなく地域の既存事業者や金融機関と連携しながらフォローできると考えていまして、もしかすると既存事業者の事業に組み込んでしまうことも最終的にアリかと。それくらい現実的かつ、斬新なプロジェクトが生まれることを期待しています。

KOBE MEMEのスタートに先がけ、様々な事例紹介やディスカッションから、地域らしさをいかに掘り起こすのか、その際の客観的視点の重要性など、地域で事業を起こす際の鍵となる要素が見えたように思います。また、多角的な視点で意見交換をすることの大事さを感じる2時間でした。説明会後は新長田のディープスポット丸五市場の中華料理屋「めいりん」にて懇親会が開かれました。たくさんの方が参加くださり、お酒を交えた楽しい場となりました。