
『気のせい』
朝から右半身がピリピリする。
身内に帯状疱疹が2人も出たので怖くなって病院へ走る。
自分の名前を呼ばれてこわごわ診察室へ。
怖くて早口で病状を説明する。
先生はうん、うんと静かに頷いて説明した箇所をバカでかい虫眼鏡で覗き込んだ。
『うん、気のせいだよ!』
びっくりした。病院でまさかの診察結果が気のせいとは。
心配するような病気ではないこと、
薬も出せなくもないけどただの気休めでしかないよって。
昔から季節の変わり目に弱く、謎の蕁麻疹や熱が出たりする。
今年も夏が長くてもうヘロヘロの毎日。
弱っていると思い込んでいた。
病は気から、と言うけれど
先生に気のせいと言われたらなんだか『そっか、そっか!気のせいか!』へへへって笑ってしまった。
毎日色んな言葉を受け取って、自身もかけたりするけれど
言葉一つで変わることは色々ある。
励ましのつもりが呪いのように頑張る人を追い詰めたり
気軽に大丈夫!と言ったら全く大丈夫じゃないことも。
ごはん屋なのになんでこんなに言葉の色々に囚われているんだろうと悩んでいたので
先生の『気のせい』はどんな薬よりも効いた気がする。
何事も『そのくらいささいなことよ』の精神で過ごしていきたい。
髙木 優佳|フリースタイル家庭料理の店 乙(おと)店主
1982年生兵庫区ネオン街育ち。現在は福原の路地裏のスナック跡にて食堂を営業中。不定休。
モットーは『ごちそうじゃないのにまた食べたくなるご飯。』
お一人さまが多くばったり会っては皆で大笑いしている、部室のような食堂です。
掲載日 : 2025.10.07