
きょうも開店まもなく来店があるものの、その後は静かなもんでした。昨日、売上がだいぶよかったので、行って&来いの関係です。商いというのはおもしろいもんで、月を終えると、売上もお客はんの数も、だいたい平均値に収束してゆきます。
つまり、爆発的に本を売ったあとは、おそるべき静寂が待っている。これを耐えること。
「港の人」(出版社)の営業のかたが見えました。関西地区を担当しているそうで、うちにもよく来てくださいます。「営業のかた」といえど、そのじつ、若き詩人でもあります。映画にもよく嗜まれており、エリック・ロメールがいかにすばらしいか、という、旧時代的な話を、われわれは飽きずにしています。
かれは現代アフリカ文学の『割れたグラス』を、自分の詩に近い感じがする、と買いもとめてくれました。ああ、ようやく買ってくれるひとがあらわれた。本屋をやっていると、「なんでか売れへん本」というのがあり、これを完ぺきに言語化できれば店の売上も上がりそうなもんやが、どれだけの理論を誇っても、「なんでか売れへん本」はきっと残りつづける気がする。ともあれ、『割れたグラス』が、少なくとも「一冊は売れた本」になったので、ほっとした。
何の話かもはやよくわかりませんが、もうすぐ移転から一周年。とくに何か催事などを予定しているわけではありませんが、気が向けば、何らかのことをしている可能性があります。
まだまだ通過点。なるべく永く、ここで本屋をつづけられたらええな。
⚫︎きょう売れた本とか
・D・H・ロレンス『海とサルデーニャ』
・アラン・マバンク『割れたグラス』
・マヤコフスキー『悲劇ヴラジミール・マヤコフスキー』
・前田英樹『言葉と在るものの声』(古書)
・アップル 1本
など
萩野 亮|本屋ロカンタン 店主
1982年奈良県生れ。批評書きとして「ユリイカ」「現代思想」「キネマ旬報」などに映画論や作品評を寄稿。編著書に『ソーシャル・ドキュメンタリー』(フィルムアート社)がある。長い休養期間を経て、2020年1月、東京・西荻窪に本屋ロカンタンを開店。のち、2024年10月、神戸・新長田に移転。たくさんのおもろい本たちと暮らしています。
掲載日 : 2025.09.25