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萩野亮|
本屋ロカンタン 店主

八月十五日(金)

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お盆ですわ。

いくらかしのぎやすくなったものの、まだめっぽう暑い。開店まえに掃き掃除をしているだけで、汗が頬を伝います。山の日の三連休はお天気がくずれ、お客はんの入りもサッパリやったのやが、きょうは開店まもない時刻から来店があり、ほっとしました。

若いかたがロラン・バルトの『明るい部屋』(みすず書房)を買いあげてくれ、うれしかった。写真論の古典であり、端正な論理を展開していながら、なおきわめて謎めいている。「変な本」やと言っていいと思う。わしはかれのような批評を書きたい、と大学時代に思ったものや。批評書きの仕事は事実上、やめてしまったが、本をならべることで、だいたい言いたいことは言っている気がいたします。

東京から神戸にやって来てから、九月でまる一年が経とうとしています。

はやいもんですわ。縁もゆかりもない土地で、気がつけば何人も顔なじみの知り合いがおります。わしは奈良と三重のあいだの山間で育ち、進学を機に上京して以来、東京で二〇年以上暮らしておったので、「下町」がいったいどういうタイプの町であるのか、いまひとつピンと来ておらんかった。東京でいえば、浅草や上野が下町にあたるわけやが、一級の観光地であるし、わしは上野の美術館くらいしか行かんので、その暮らしぶりはわからんかったのです。

非常にしばしば直感でものごとを進めてしまうので、新長田がどういう町なのか、わしはほとんど知らずにお店(兼住居)の移転を決めたのやが、なるほど下町とはこういうことか、とこの一年をかけて、肌で知っていったような感じがしています。

大都市ではなく、かといって田舎でもない。郊外でもない。単身でも不便でなく、窮屈でもない。とりわけ新長田は、わけのわからなさを多分にかかえており、独自の価値意識や美的センスがあり、しょっちゅう集まってはおもろいことをやっている。

四〇もなかばになり、身体も頑丈でないわしは、直感的にこういう土地で生きてゆこうと、きっとそう決めたのです。

⚫︎きょう売れた本
・ロラン・バルト『明るい部屋』
・ハン・ガン『菜食主義者』
・坂口恭平『生きのびるための事務 全講義』
・太田うさぎ『句集 また明日』
・平芳裕子『東大ファッション論集中講義』
など

萩野亮|本屋ロカンタン 店主

1982年奈良県生れ。批評書きとして「ユリイカ」「現代思想」「キネマ旬報」などに映画論や作品評を寄稿。編著書に『ソーシャル・ドキュメンタリー』(フィルムアート社)がある。長い休養期間を経て、2020年1月、東京・西荻窪に本屋ロカンタンを開店。のち、2024年10月、神戸・新長田に移転。たくさんのおもろい本たちと暮らしています。

掲載日 : 2025.09.18

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