
今日は、おかんアートチームの集まりがあった。
おかんアートとは、下町の「おかん」たちが生み出す、脱力感満載の手芸作品のこと。そんなおかんアーティストのチームに、私はもうかれこれ10年ほど関わっている。
とはいえ、私自身はおかんアーティストではない。主に運営スタッフとして関わりつつ、ときどき作品も出展させてもらう。参加者でもあり、裏方でもある、少し曖昧な立ち位置だ。この日は神戸生活創造センターに集まり、机いっぱいに現金を広げての「精算大会」。
9月に行った東京遠征の売り上げや立替金の精算を、みんなで一つひとつ確認していく。ここで毎回驚かされるのが、最年長85歳のおかんアーティストの暗算スピード。一瞬で数字をはじき出すその姿に、何もできない若手(※おかんアーティスト基準)である私たちは完全にポンコツである。ほとんどのお金は立て替え金なのに、売り上げと合わせて戻ってきたお金の額が思いのほか大きく、みんな気持ちまで大きくなってしまった。
精算が一通り終わったところで、「今年は本当にお世話になりました。ありがとう」と声をかけてもらい、おかんアーティストからプレゼントを渡された。中身は、着物の生地をリメイクして仕立てたワンピース。

ウールの着物から作られたそれは、言われなければ元が着物だとは分からないほどモダンで、形も色も、驚くほど私にぴったりだった。なんだかもう、とってもとってもとってもとっても嬉しくて、その場で着替えた。そのままの勢いで向かった忘年会は、これまた最年長85歳のおかんアーティストが予約してくれた「海やびの」さんにて。コース料理をいただきながら、テーブルを囲んでワイワイ騒ぐ。なぜか半数の人が箸を落とし、拾っては笑い、また落としては笑い、場のにぎやかさは増すばかりだ。
施設に入っているメンバーもタクシーを飛ばして駆けつけ、新しいメンバーも加わり、この日の参加者は9人。
年齢も立場もばらばらなのに、集まると彼女たちはまるで女子高生のようである。
年をとることは、できなくなることが増えることではなく、「面白がる余白が増えること」なのかもしれない。
月に一度のこの集まりは、私にとって大切な息抜きの時間であり、今では楽しみにしている時間のひとつだ。
森田 順子(ケリイ)|合同会社Onice(オニス)代表
長田区で生まれ育ち、現在は新開地在住。
歌ったり、踊ったり、つくったりすることが好き。
2016年に仲間と企画会社Oniceを設立。
一人ひとりの中にある本質的な想いや動機に向き合いながら、
「したいのにできない」をほどき、「できる」を企てる仕事をしている。
どんなことにも、愛とユーモアが必要だと思っている。
掲載日 : 2025.12.26


