
開店まもない時刻に、お客はんが来てくれました。
何冊か本を買ってくれたのでお会計をしていると、
「東京の西荻でお店をやってたころ、何回か通ってました」
と言わはります。おどろきました。いまは関西に帰省中とのことで、県外から寄ってくださったそうです。いやー、字義どおりに有りがたい。
新長田に移転しておよそ十ヶ月半。東京、しかも中央線の西荻窪に縁のあるかたが、じつはけっこう見えます。住んでいたというひとも数人いらして、なつかしい話をしたこともありました。おもえば西荻というところは、下町の風情がある、とよくいわれたもので、23区のなかでは相当マイペースに、のんびり生きているひとたちの町です。
テレビ東京系列の「出没!アド街ック天国」で西荻窪が特集されたとき、カメラの前で「愛を隠せない、この町への」などと倒置法で発言するほど、わしは西荻が好きやったのです。
新長田には、これから何年おるのやろう。わしは現金なもので、あっという間にこの町の居心地のよさにまったりとなじみつつあります。下町から下町へ。新長田のおもろさの一端でありたい、といまではそう願っています。
⚫︎きょう売れた本とか
・マリオ・バルガス=リョサ『プリンストン大学で文章/政治を語る』(アウトレット)
・長田弘『世界は一冊の本』
・「文芸ブルータス2025」
・ジョナサン・クレーリー『知覚の宙吊り』
・アップル 2本
など
萩野 亮|本屋ロカンタン 店主
1982年奈良県生れ。批評書きとして「ユリイカ」「現代思想」「キネマ旬報」などに映画論や作品評を寄稿。編著書に『ソーシャル・ドキュメンタリー』(フィルムアート社)がある。長い休養期間を経て、2020年1月、東京・西荻窪に本屋ロカンタンを開店。のち、2024年10月、神戸・新長田に移転。たくさんのおもろい本たちと暮らしています。
掲載日 : 2025.09.22