今日はお祭り。新長田にて「みんなのフェスティバル(通称:みんフェス)」が開催される日である。
アート× 教育×福祉×多文化共生×まちづくりの視点を融合させた「ローカルフェスティバル=下町の遊び場」という、要素が盛り盛りのフェスティバルで、今日は参加者ではなく、出展者としての参加で呼んでいただいた。
僕は何をやるのかというと、コーヒー屋台の出店である。
ちょっと前に、どこでもお店ができるように、屋台を作ってみたことがあって(きちんと露店営業許可もとった)、それを持参して、コーヒーを提供させてもらうのである。(余談だけど、この屋台は収納すれば電車にも持ち込めるようなサイズで作ってる!)
会場のアトリエKOMAに準備をしようと早めに着くと、まだ誰も来ていなかった。
時間がありそうなので、荷物を下ろして読書を始めようとすると、日常との変化に気づいた近所のおばあちゃんたちが「今日は何をやるの?」と声をかけてくる。
今日は色んなところで小さなお祭りをやっていて、僕はコーヒーを出させてもらうんです。と伝えると、飲みにくるね。とか、逆にこれからの自分の予定を話してくれるおばあちゃんもいた。
そうこうしているうちにみんなが集まってきて、結局本は最初の3ページくらいしか読むことができなかった。
コーヒーは丸山の行きつけの喫茶店「デミタス」で提供されているコーヒー豆を譲ってもらい、ちょっと変わったコーヒーを出したいという思いから、新長田のスパイス屋で購入したカルダモンを水に浸し、その水で淹れるカルダモンコーヒーなるものを用意した。
丸山のコーヒー豆を新長田のスパイスを用いた水で、駒ヶ林で淹れるコーヒー。
これは長田の南北をつなぐ長田縦断コーヒーである!とブツブツ考えながら準備をする。
こんなことを考える理由も一応あって、長田区は南北に広く、公共交通の便が決して良いとは言えない。
そのため、住む人の雰囲気も、まちの様子も南北で結構違ったりする。
僕は長田の北部にずっと住んでいた(今も住んでいる)ため、今では大変便利に通わせてもらっている駒ヶ林のアグロガーデンなども、大人になるまでほとんど来たことがなかった。
長田の南北は苅藻川も流れているため、何か長田全域を使って面白いことができれば良いなと、そんな思いからこのコーヒーを提供するのであった。
同じ会場では小松さんプレゼンツのトキトキ交換会や、現在神戸で風呂インレジデンスを行う、マブチさんの何でもペインティング、ヨーコさんの絵本朗読などなど、この場所だけでもコンテンツが盛りだくさんであった。
それぞれが準備を行い、僕も屋台のセッティングと買い出しに出掛けていると、気がつけばオープン時間を過ぎていた。
急いでコーヒーのセッティングを行うと、すぐにお客さんが来てくれた。
ほとんど素人の人間が淹れているコーヒーだが、カルダモンのおかげもあってみんな美味しそうに飲んでくれた。何かを振る舞うということは、自分にとっても大変嬉しいものだといつも思う。
少し時間が経って、ちょっと変化が欲しいと思い、思い立ってクラフトコーラを作ってみることにした。
幸い、最低限必要な材料が家にあったので、色々と持ってきていたのである。
なんとなく作ってみたクラフトコーラが、意外に美味しく、これも屋台で提供することに決めた。
すぐに完売して、大変嬉しく思った。
ありがたいことに知り合い含めて沢山のお客さんに恵まれ、途絶えることなくコーヒーとコーラを提供し続けた。
大変に暑い日だったので、同じ会場で活動する人たちも皆クタクタになっていた。
同日は色んな会場で、さまざまな出店やイベントが開催されており、それらに参加することができなかったことは少し悔やまれるが、新長田の街を盛り上げようと、見えないところでみんなが頑張っているという状況が、なんだかとても良いなと思った。
上野天陽(TAKAHARU UENO)
1997年神戸市長田区生まれ。地元神戸のまちづくりに関わりたいとの思いから、2018年に(有)スタヂオ・カタリストに入社し、主に建築設計やまちづくり支援に携わる。2023年現在は、フリーランスとして長田北部に拠点を構え、空き家空き地の活用や、屋台でのコーヒー出店、推し本を語る会を開催するなど、幅広く活動しながらまちを楽しんでいる。合同会社廃屋 まちづくり/申請担当。
掲載日 : 2023.08.25