午後、梅元の村バイソンでのイベントを終えて、神戸の山側から海側エリアに移動する。
目標地点は東出町の元稲荷市場エリア。
今日ここでは、空き地の雑草扱いされている野草を刈って布に染めるという、なんとも面白そうなイベントが開催されていた。
バイソンでも染物のイベントがあったので、なぜか染物づくしの日になってしまった。
道に迷いながら、なんとか会場にたどり着くと、なんでもない空き地の中心に、巨大な移動式鍋が鎮座していた。大変にワクワクする光景である。
染料に用いる野草を収穫するため、空き地から空き地へと移動し、講師のマッソさんから野草についてのレクチャーが始まる。
今回利用するのは「セイタカアワダチソウ」「ヨモギ」「コセンダングサ」の3種類。
どこにでも生えるような野草で、なんなら厄介者の雑草として扱われているような野草である。
見つけ次第どんどん根っこから収穫していく。
ワークショップには近所の子供たちも多く参加しており、手に持っている野草を片っ端から盗まれる。クソガキという名にふさわしい、しかし大変に可愛い子供たちだなと思った。
収穫した野草を空き地に持ち帰り、それらを大きなドラム缶と大鍋でぐつぐつ煮込む。
野草の色素を煮出している間に、少し休憩時間を挟む。
時間がなさすぎてお昼ご飯を食べられていなかったので、近所の駄菓子屋さんで駄菓子を購入する。大人になってからの駄菓子屋さんはとても楽しく、食べたい駄菓子を好きに購入する。
久々に3つのうち一つだけ酸っぱいガムが入っている駄菓子で盛り上がった。
駄菓子タイムが終わった後は、木綿の手ぬぐいの焙煎処理について学ぶ。
簡単な材料で媒染ができることを知ることができた。
媒染処理の終わった手ぬぐいには、模様をつけるためにビー玉を丸め込んだり、輪ゴムで縛ったりした。人によって縛り方が全く違うのがとても面白かった。
それぞれが手を施した手ぬぐいを遂に大鍋に投入し、均等に染め上げるため鍋をかき混ぜる。
大鍋をかき混ぜるみんなの姿は、なんだか魔女の集団みたいだった。
しばらく待って染め上がった布を取り出してもらう。
野草で染めたとは思えないほどの鮮やかな色をしており、とても感動した。
これまで名前も知らずに刈り取っていた野草は、こんなにも有益なものだったのかと思い知らされた。
この世界には雑草なんてなくて、全てに名前がついていて、それぞれに役割を持っている。
そんな当たり前のことに、改めて気付かされた日だった。
これからはまちを歩いていると、この野草たちのことが目に止まるのだろう。
少し心が豊かになった気がした。
上野天陽(TAKAHARU UENO)
1997年神戸市長田区生まれ。地元神戸のまちづくりに関わりたいとの思いから、2018年に(有)スタヂオ・カタリストに入社し、主に建築設計やまちづくり支援に携わる。2023年現在は、フリーランスとして長田北部に拠点を構え、空き家空き地の活用や、屋台でのコーヒー出店、推し本を語る会を開催するなど、幅広く活動しながらまちを楽しんでいる。合同会社廃屋 まちづくり/申請担当。
掲載日 : 2023.08.24