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神戸の新しい魅力に出会うウェブマガジン

シタマチコウベ

下町日記

服部真貴

十一月二十五日(木)

2021.12.15

収穫してしばらく干した稲を積み、淡河の鶴巻農園に向かう。
平野から北へ向かう道は、箕谷を過ぎたあたりから別世界に変わる。
風が少し吹いただけで、赤や黄色に色づいた葉が揺れながらも次々と降ってくる。
右も左も美しく、あっという間に淡河。鶴さんちにあつまるのは、北の椅子との前の広場で今年、稲を育てる実験をしていた仲間。

運河の側で。街の中で。わざわざバケツ稲。には理由がある。
やりたいと初めに言い出したのは、漁師の糸谷さん。以前からここ兵庫運河を中心に環境について考え、広めている。この度は海と里とのつながりをここで体現したいと、運河の側で稲を作ることを、海に還ってくる水のこととともに感じられる場づくりを進めようとしている。そこに、共感した農家も建築家も、植物家や写真家、他にも様々な仕事を持つもの集まり、試行錯誤。

無農薬有機栽培のバケツ稲。それはそれは色々あった。そして、収穫を迎える直前、スズメたちの襲来。兵庫区のスズメたちは太ったかもしれないが、採れた米は少なかった。
けれど、学びも、この繋がりも、そしてこうして神戸の恵みをいただけていることも。やってみてよいことが本当にたくさんあった。
この日、今後の予定を話し合いながらいただいたのは、釜で炊いた淡河の米と野菜に鶴さんの味噌、神戸の釜揚げしらすとのり。贅沢すぎる食卓だった。

登場人物

服部真貴|北欧ヴィンテージ店 北の椅子と

1975年須磨生まれ育ち。兵庫区在住。小さな頃から通っていた父の材木屋の上に住んで、住まいの裏で店「北の椅子と」を運営。仕事柄、インテリアや食べることにまつわること、北欧の暮らし方のことに興味あり。キャラクターが濃い息子の周辺の話題もしばしば。

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