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神戸の新しい魅力に出会うウェブマガジン

シタマチコウベ

下町日記

尻池宏典

十一月七日(日)

2021.11.29

今日は日曜日。午前6時頃に目が覚める。普段は漁に出るため午前3時頃に起床するが、自らが関わるイベント「海と、魚と、駒ヶ林の海と、魚と、〇〇を楽しむマーケット」が開催される大事な1日。
週間天気予報ではイベント当日の天候が雨予想。最悪だ、やっぱり自分は最強の雨男なのかと、1週間前からてるてる坊主を娘と作りぶら下げて神頼み。変化のない天気予報に半ば諦めて嘆いていたが、なんとなんと見事な快晴である。「神様、ありがとう!」と感謝、またイベントにかかわるメンバーで私より強力な晴れ男?女?が居てくれたのかとも思う。

今回で3回目となるこのイベントは初回から予想を上回る来場者で、前回は雨が降りしきる悪天候の中でも多くの人が来場してくれて、私達漁師も驚きを隠せなかった。そもそも漁師の多くは1人ないし少人数で沖に出て魚を捕る事に特化しているので、普段は人と接する事が少なく恥ずかしがり屋さんなのである。

そんな漁師達が、自分達が捕ってきた魚を一般の方々と会話しながら、直接売る。私が漁師になった24年前には想像もしなかった光景がそこに見えている。
イベント開始の11時には長蛇の列、我先にと鮮魚などを買い求める人々でごった返している。自らは釜揚げしらす丼を販売しているが、また休みなく丼を作り続けるのかと身震い。そこからは記憶が断片的だった、炊飯器からご飯を入れる作業を休みなく続け、気がつけば用意した370食が売り切れていた。昼下がり心地よい疲れがドッと押し寄せ椅子に腰を下ろし大漁旗がなびく天を仰ぎ「神様、ありがとう」と心の中で呟いた。


「海と、魚と、」~駒ヶ林の海と、魚と、〇〇を楽しむマーケット~当日の様子はこちら。

登場人物

尻池宏典|尻池水産代表・駒ヶ林浦漁業会 漁師

神戸市長田区駒ヶ林にて、100年以上続く漁師の家系に生まれ、高校卒業後漁師になり24年。主に船曵網漁(しらす漁、いかなご漁)を営む。近頃は、神戸の海と魚を知ってもらうため仲間と共にKOBE PAIR TRAWLINGSとして活動中。神戸市漁業協同組合、駒ヶ林浦漁業会所属。

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