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第3部 
「下町ぐらし体験から考える、
Well-being」

下町ぐらしに辿り着いた
保育士起業家が描く未来

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    筆者:小笠原舞(合同会社こどもみらい探求社 共同代表 / asobi基地 代表 / 下町ゲストハウスとまりぎオーナー)
    イラストレーション:和田直子

     

    さて、あっという間に最後の部となりました。
    1部「子育てしやすい社会とは?」では、私自身が感じている子育て環境の課題感と長田の町で子育てし始めた時に感じたことを。2部「暮らしてみて気づいた、人を頼ることの “ 先 ” にあるもの。 」では、頼ることって本当に悪いことなの?という問いを中心に子育て中に体験したエピソードを書かせていただきました。
    最後の3部では、この町に出会ってもらうこと、下町ぐらしを体験してもらうことで新しい暮らし・子育ての選択肢を持ってもらえたら…、自分の心地良さやWell-beingについて考えてもらえたら…とはじめた「下町ゲストハウスとまりぎ」についての話をしたいと思います。

    この町に出会い、子育てし始めて6年が経ちました。何度もしんどいことはありましたが、ご近所さんたちに助けてもらったことは数えきれず。喫茶店、居酒屋、銭湯、道端など、こどもがいることでどこでも話しかけてもらえることが何よりものエネルギー源でした。(顔を覚えてもらうと大人一人でも町の人とおしゃべりできますが、こどもがいるときの方が高確率で人と繋がることができます!)

    しかも、エネルギー源と感じたのはなんとなくではなく、科学的に証明されていることをとある友人が長田に来た時に教えてくれました。
    「3つの幸せホルモン(ドーパミン / オキシトシン / セロトニン)のうち、オキシトシンだけは誰かがいないと出ないんだよ」と。
    それを聞いた時に、だからこの町に帰ってくると幸せを感じるんだ!とすごく納得したのをよく覚えています。

    PRESIDENT Online:幸せな一生を送れる人は「健康→つながり→お金」の順番を守っている より抜粋

    さらに、そう感じるのは私だけじゃないんだ!と裏付けるようなエピソードも次から次へと集まってきました。

    「町の人と挨拶して、人のあたたかさに触れられてとっても幸せを感じました」
    「子連れで喫茶店に行けて、親子でおばちゃんたちとおしゃべりして元気が出ました」
    「自分もこどもも、ゆるく過ごせて心が解放されました」
    「日常で知らない人と話すことなんてなかったから、こんなに暮らしが楽しいんだと思えました」
    と、全国からこの町に遊びに来てくれた友人たちがこの町の魅力を言語化してくれたんです。

    “ああ、やっぱりたくさんの人に下町ぐらしを体験してもらいたい!“と思う気持ちが強くなっている時に、家の隣(長屋)が空き、行政の方からゲストハウスをやってみないかという声をかけてもらったのです。これは運命だ!と思って、準備をスタート。
    名前もこだわって、考えました。
    忙しい現代社会の中で生きる人たちがゆっくりしにきてほしい。
    困ってても、困ってなくても、いつだってただいま!と帰ってきてもらいたい。
    という思いを込めて「下町ゲストハウス とまりぎ」という名前にしました。

    オープン日から約1年経った今では、100組を超える人たちが(遠方からも、ご近所さんも)泊まりにきてくれて、まるで住民になったかのように下町ぐらしを満喫してくれています。
    Airbnbにも登録したのでロシア、インド、中国、アメリカなど、海外からのゲストも多数。
    様々な人たちが家にやってくるので、我が子のコミュニケーションスキルもアップ!(自分から英語で話しかける息子の姿も!)

    2024年4月に2泊で来た親子は日にちが足りない!と、この8月には5泊に伸ばして再訪。私がいなくても町の人とのやりとりを楽しむ姿を見て、とっても嬉しくなりました。

    そんなゲストハウスですが、町の人たちと2023年4月からはじめた推し活「下町ぐらし研究所」の拠点でもあります。コアメンバー6人中、なんと5人は長田への移住者(もう1名は、2拠点検討中)
    “日常が楽しい!ストレスが少ない!”と3回も遊びに来て、最終的に移住したデザイナー。
    私の人を頼りまくる子育てを見て、“私もここだったら自分の仕事をやめずに子育てできそう!”と言って、結婚前に移住したメンバーもいます。
    現在は、自分たちの得意・好きを活かして運営する5つの部活(畑活部 / 朝活部 / 図書部 / ママ活部 / 放送部)があり、イベントやラジオを通して関係人口を増やしたり、頼りあえるコミュニティを楽しみながら作っています。

    と、書きたいことがたくさんあって長くなってしまいましたが、まとめに向かうために、コラムのタイトルでもある「下町ぐらしに辿り着いた 保育士起業家が描く未来」というところに戻ってみます。

    私の描いている未来は、こどもたちがその子らしく育てる社会になっていること。そのためにはこどもたちのロールモデルがそうであること、すなわち、大人たちがWell-beingであることが必要です。
    みなさん、今、しあわせですか?自分の暮らしは、気に入っていますか?
    私は長田の町に出会い、人生が豊かになりました。
    つながりを持つことは、時に面倒なこともあるかと思います。でも、それ以上にしあわせ・豊かさ・Well-beingがそこにあるのではないかと思っています。
    さらには、こども・親子を取り巻く様々な社会問題を解決するためにも、こどもたちにとってのよりよい教育環境をつくるためにも、重要なのは “人とのつながり“ であると思っています。
    こういう話をすると、繋がりを感じたいけど、自分の地域で一から作るのは難しいという方がいます。もしそう感じていたら、まずはこの町に来てみてください。この町は外から来た人も、まるで知り合いだったかのように、親戚のようにあたたかく受け入れてくれる場所です。このコラムを読んで、下町ぐらしを体験してみたいなと思った方は気軽に遊びに来てくださいね! 1回来たら、もうとまりぎファミリーですから♪
    これから先も、どんな方々に出逢えるのかを楽しみにしながら、ゲストハウスの運営と下町ぐらし研究所の活動を家族みんなで楽しみたいと思います。最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

    小笠原 舞|合同会社こどもみらい探求社 共同代表 / asobi基地 代表 / 下町ゲストハウスとまりぎオーナー

    1984年 愛知県生まれ、埼玉育ち。2016年から神戸市に移住。大学では福祉を学び、社会人経験を経て、保育士となる。自分らしさ全開で生きるこどもたちに魅了され、彼らから得られる学びを広げることで「誰もが幸せに生きる社会」につながると考え、活動をスタート。最近では多文化共生をテーマにする神戸の下町にて、暮らし・子育ての中での「Well-being」を実践・探求中。

    和田直子

    神戸市出身・神戸市長田区在住。
    嵯峨美術短期大学 洋画科卒。
    昭和の家庭用印刷機「プリントゴッコ」で神戸の風景などをモチーフに作品を作っている。
    神戸を中心に個展やグループ展を開催。
    https://www.wada-n.com/

    掲載日 : 2024.08.12

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