
東京から長田に引っ越してきて早2年。思った以上に、このまちでの暮らしを楽しんでいる織戸ゆみこです。大好きな人たちとの出会いや、ここで踏み出した新しい一歩を、全3回のコラムにまとめてみます。まずは、私の移住のきっかけを振り返る『第1部:移住編』から。気楽に読んでいただけたら嬉しいです。
少しだけ、自己紹介させてください。
生まれも育ちも東京で、長年、銀座の広告代理店に勤めていました。
出産を機に退職してからは、子どもとの時間を優先しながら働く生活を数年。
そして2年前、息子の小学校入学のタイミングで、新長田に引っ越してきました。
新長田は、10年ほど前から友人の池田まいちゃんがきっかけで、何度か遊びに来ていた場所でした。
夫は普段は東京で仕事をしていて、月に1、2回こちらに来てくれるという生活がスタートしました。
もともと人混みが苦手で、人工物より自然のものが好き。
移住にも以前から興味があり、いろんな場所を検討してきました。
長田を移住先に選んだ理由はいくつかありますが、例えばこんなところです。
・東京から飛行機でも新幹線でも来られる
・徒歩や自転車でいろんなところに行ける(買い物も便利で、海までは自転車で10分くらい)
・個人店がまだ残る下町の空気感と、まちの人たちが元気で楽しそうなところ
さて、引っ越してきてからのお話に移りましょう。
せっかく新しい土地に来たのだからと、仕事には就かず、最初の10ヶ月ほどはまちをうろうろしながら、いろんな人とおしゃべりして過ごしていました。長田ではあちこちでイベントがあり、徒歩と自転車があれば近場で充分楽しめます。子どもが小さいうちは、これが本当にありがたい。
子どもに優しいお店も多くて、子ども用にオーダーを工夫してくれたり、お菓子をくれたり。子連れで気軽に飲めるのも嬉しいところです。母の気分がいいと、家庭は平和です(笑)。
そんな日々のなかで感じた、このまちの好きなところ。
いろいろあるのですが、やっぱり一番いいなと思うのは、「好きなことをしている人」が多いことです。
東京にいた頃、ああなりたいなと思う人がいました。
年齢は大先輩で、修理やDIYが得意な方。地域の人たちから「ちょっと見てくれる?」と頼られるような存在でした。腰が低くて控えめだけど、どこかユーモアがあっておちゃめ。子どもにはさりげなくお菓子をくれたり、家の脇で野菜を育てていたり。
裕福な暮らしというわけではないのかもしれないけれど、その人柄で周りの人に愛されている方でした。
新長田で暮らし始めて、その人のことを思い出すことが増えました。
このまちには、どこか似た空気を持っている人が多い気がするのです。
お金を払えばなんでも手に入る時代だけれど、完璧じゃなくても、あの人がつくってくれたもの、してくれたこと。そこにこそ愛着や価値があるのだと、今は感じています。
また、ニックネームや名前で呼びあう人が多いのも、このまちの好きなところです。息子の友だちや近所の小さな子、そして偉い肩書のあるような人まで、いろんな人が「ゆみこちゃん」と呼んでくれる。
「ゆみこちゃん」と紹介されたら、そのまま「ゆみこちゃん」と呼んでくれる素直さ。
役職や立場を超えて、まず「個」としてフラットに接してもらえる心地よさ。東京ではなかなか出会えなかったこの距離感が、私を少しずつ自由にしてくれました。
そのおかげで、このまちでは、わたしがわたしのままでいられる気がしています。

織戸 ゆみこ|デザイナー・まちのアトリエ「ナガタbond」
東京豊島区生まれ。ずっと東京から2024年3月、息子の小学校入学を機に長田に移住。まちの人たちのあたたかさや個性あふれる下町での暮らしを楽しんでいる。仕事は、デザイナー、まちのアトリエ「ナガタbond」の人、週2ではっぴーの家ろっけん、週1片山工房アルバイト。
掲載日 : 2026.03.30


