
2023年に始動したシタマチスタートアッププロジェクト。空き家や空き店舗を活用し、新しい挑戦を後押しするこの取り組みから、またひとつ新しい文化拠点が生まれました。今回お話を伺ったのは、「アーツ新長田」を開設した向井修一さん。ギャラリーやライブラリーなど複数のスペースを立ち上げてきた向井さんが、新たな場に込めた思いや今後の展望について伺いました。本企画も第5弾。続々とオープンする下町の新たな場にご期待ください。
アーツ新長田は、展覧会活動にとどまらず、朗読会やワークショップ、アトリエ、アーティストレジデンスなど、多彩な活動を柔軟に受け入れたいという想いから立ち上がったそうです。向井さんが目指したのは、地域とつながりながら人々が気軽に集える場。そうした思いを込めて、この場所には「アーツ新長田」という名前が付けられました。

2025年9月13日から開催中の「会話2025展」の様子
もともとこの建物は長屋の一戸として、長年、高齢の方が暮らしていた住居だったのですが、空室となったのを機に、向井さんはアーツ新長田の開設を決意。近くの建築家、r3の合田昌宏さんにプランを伝え、解体から設計、工事監理までしていたいただいたそうです。畳敷きの空間は誰もが気軽に座り過ごせる雰囲気を生み、さらに壁も展示もできるように補強されています。「綺麗に保つことよりも、使う人が性格をつけていける空間でありたい」と向井さんは語ります。
2025年9月のオープニングを飾ったのは「会話2025展」。当初想定していた約50名の募集枠は数日で埋まり、最終的には約80名もの作家が参加する密度の高い展覧会となりました。出展者の中には、これまで直接のつながりがなかった遠方の作家もいて「展示を通じてこれまで出会えなかった人々とつながる場になった」と向井さんは振り返ります。作家たちがこの展覧会のために新作を生み出すことも多く、その一つひとつが「2025年という時代の断面」を感じさせるものとなっています。

2025年9月13日から開催中の「会話2025展」の様子
2018年に「citygallery2320」を開設し、続いて2022年にアート専門ライブラリー「芸術文庫」、コレクションルームを併設する「W/M事務所」を立ち上げてきました。また、近隣には「cafe & bar SAKAZUKI」や、まちにひらくアトリエ「ナガタbond」、ゲストハウス「とまりぎ」など多様な拠点が集まりつつあり、互いに程よい距離を保ちながら連携できることを期待しているといいます。泊まり込みで制作を希望する作家や、勉強会の開催を望む人も現れ始め、単なる貸しスペースではなく「相談しながら一緒に形にしていく場所」として活用が広がっています。
「72歳になりますが、あと10年はこの拠点とともに歩みたい」と向井さん。自宅とつながる一連の拠点をネットワークのように広げながら、アートと地域を結びつけていく姿は、下町に新しい文化の風を吹き込み続けています。アーツ新長田は、誰もが気軽に訪れ、参加し、関わることで新たな可能性を見出せる場。これからも下町から芽吹く文化の力を育んでいきます。

2025年9月13日から開催中の「会話2025展」の様子
今回ご紹介した「会話2025展」は9月28日の土曜日から火曜日までオープンしています。(水曜日から金曜日が定休日)
今後の予定として「和田直子プリントゴッコ展」や「だるま森+えりこ展」が控えているとのこと。ぜひ訪れてみてください。

2025年9月13日から開催中の「会話2025展」の様子
■アーツ新長田での展覧会情報
①「会話2025展」
9月13日土曜日から9月28日日曜日まで※水木金は休み
②下町芸術祭2025参加企画「和田直子 プリントゴッコ作品展」
10月18日土曜日から11月2日日曜日まで※水木金は休み
OPEN:12:00-19:00
③だるま森+えりこ「ヨノナカポテチン展」
11月15日土曜日から30日日曜日まで※水木金は休み
OPEN:12:00-19:00
向井さんの活動については、シタマチコウベでも取材してきました。
向井さんのこれまでの記事もぜひご覧ください。
□shitamachi NUDIE
https://shitamachikobe.jp/nudie/6393
□下町ぐらし不動産
https://shitamachikobe.jp/kurashifudousan_post/1157
掲載日 : 2025.09.24