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路地中から生まれるアートムーブメント/city gallery 2320

2019.02.27

路地中から生まれるアートムーブメント/city gallery 2320

長田区二葉町、南北に伸びる本町筋商店街から一本路地を入った住宅街にひっそりと佇む「city gallery 2320(シティギャラリー2320)」。2018年9月にオープンしたこのギャラリーは、長田区・兵庫区南部を対象にした神戸市の助成「アーティスト・クリエイター等の活動拠点支援事業」で誕生した拠点の一つです。
オーナーの向井修一さんは、地元で手に入るものにこだわり、何から何まで手作業でリノベーションをおこなったそうです。

- なぜ、「city gallery 2320」を始めることになったのでしょうか?
向井さん  僕はもともと元町や大阪の西天満など、何度か場所を変えながら26年ほどギャラリーを運営していました。でも2005年に西天満のギャラリーを閉めてからは、しばらく美術の世界からは離れていて。ある時、兵庫県立美術館の学芸員の方が「シティギャラリー」についてインタビューに来られたんです。「シティギャラリー」とは、僕が元町ではじめた画廊の名前。その出来上がった冊子(※)を読んだ時に、もう一度してみようかと思ったんです。ギャラリーの昔話をしていていいのか?今ならお金をかけずに長く続けられる自分らしいギャラリーができるんじゃないか?って。それが2017年3月の話です。

(※) 兵庫県立美術館研究紀要12号:江上ゆか「シティ・ギャラリーについて―向井修一氏インタビュー」

 

- 路地中のこの場所を選ばれた理由は?
向井さん  実はこの隣が僕の自宅なんです。この建物は築60年ほどの木造2階建てのアパートで、改装前はこれまで収集したアート作品の倉庫として使っていました。丁度、長く貸していた隣の1棟も空いたので、作品の分別をしながら隣の2階に作品を移動させて、1棟丸々をギャラリーにすることにしたんです。自分の持ち家なので賃料もかからないし、手も加えられますしね。

 

- リノベーションはどのように進めていったのですか?
向井さん  まずは、丸五市場で居酒屋「今井やん」を営む今井義延さんに相談に行きました。彼は自身の店の内装を手作りしているんですよ。僕がギャラリーを手作業で改修して作っていきたいと話したら、快く手伝いを引き受けてくれて。僕はこれまでものづくりをしたことがなかったので、心強い助っ人になってくれました。

4月から工事に取り掛かり、平日の昼間に週3日ほどのペースで作業して、完成したのが8月。延べ150時間くらいをかけ、電気工事以外は全て自分たちで作り上げました。

- 材料はどうやって調達されましたか?
向井さん   ここで使っている材料のほとんどは、地元のホームセンター「アグロガーデン」で購入しました。アグロガーデンでは木材のカットをしてもらえるし、運搬用のトラックも貸してもらえるのでかなり重宝しましたね。
1階の壁面にはカットしてもらったコンパネを張り、床には杉材を敷き詰めました。2階の床には、コンクリート型枠用の合板を使用しています。この合板は軽くて丈夫だし、オレンジイエローのウレタン塗装がされていて、程よい光沢があるので気に入っています。

- 作業をする中でしんどかったことはありますか?
向井さん  1階床面の塗装ですね。杉材を使用しているのですが、木目がはっきりしていて、作品鑑賞のじゃまをすると思ったんですよ。だから白色塗装をすることにしたのですが、ただ白く塗るのではおもしろくないと思ったので、木目がうっすら感じられるように塗装しました。白色塗料を塗ってはタオルで拭き取るを繰り返すんです。この作業が地道で大変でしたね。

 

- この建物でお気に入りはどこですか?
向井さん  ギャラリーに似つかわしくない照明を使っているところですかね。ギャラリーというとスポットライトを使うのが一般的ですよね。でもうちは全てLED電球を使用しています。省エネはもちろんのこと、光の色温度を調整できるので、展示作品によって雰囲気を変えることができるんですよ。ただ、スポットライトじゃない分、照明の位置を気にする必要があるので、位置調整ができるように照明器具の電気ソケットを計14個取り付けてもらいました。この電気工事は地元の電気屋さん「アトム電器」にお願いしました。これも僕のこだわりで、安さより地元の方にお願いしたかったんです。だから資材もアグロガーデンで揃えましたし、脚立や工具は本町筋商店街にある「カギのヤマモトヤ」で購入しました。

- ギャラリーを運営する上でこだわっていることはありますか?
向井さん  ギャラリー側として作家に制限を加えないようにしています。作家が空間に求める要望に関しては可能な限り答えようと思うんです。だから10月に開催した「倉重光則展」では1階壁面に作家が直接絵を描いたり、11月の「吉田延泰展」の際には作品に合わせて壁を真っ青に塗ったりしました。展示によってこのギャラリー自体が変わっていくのも面白いと思うんですよね。
あとは、展覧会期間中に、作家に話をしていただく機会を設けるようにしています。お客さんには作家との対話を通じてより密に作品を体験してもらいたいと思っていて。基本的には展覧会初日にオープニングパーティを作家に企画してもらっています。近所には友人が運営するレンタルスペース「r3(アールサン)」があるので、イベントの時には使用させてもらったり。
それと、うちでは展覧会をする際に作家ごとに作品集を刊行するようにしています。最近は作品集をweb上でアーカイブしていくことが多いですが、僕はやっぱり手にとって見ることができるリアリティさを大事にしたいので、冊子で記録しています。展覧会が終わってもモノとして残りますしね。

 

- ギャラリーの今後の展開を教えてください
向井さん  ギャラリーをオープンすると決めたときから、長く続けることを目標にしているので、これからも年に10本、夏休みを2ヶ月間とって、1ヶ月に1本のペースで展覧会を企画したいと思います。三ノ宮や元町などの都市部に比べてアクセスは良くありませんが、影響力のある展覧会を開催できれば、自ずと人は来てくれると思うんです。だから僕はこのギャラリーに腰を据えて、作家、作品、そして来てくれたお客さんに精一杯に向き合っていきたいですね。3月以降の展覧会も続々と決まっていっているので是非お越しください

建物について

物件概要 木造2階建アパート
かかった日数 4ヶ月間(150時間)
改装費 160万円

次回展覧会:岩澤有徑 展

期間:2019年03月09日(土)~24日(土)
時間:12:00 – 19:00  [休:水・木・金]
■ オープニングイベント
日時:3月9日(土)18:00-
18:00 -18:50 / 岩澤有徑 vs.向井修一の対談
19:00 -19:15 / eri-koo <パフォーマンス>+岩澤有徑<movie + sound>
場所:レンタルスペースr3
料金: ¥1000 (1ドリンク付き)

 

 

city gallery 2320(シティギャラリー 2320)
長田区二葉町の住宅街に佇むギャラリー。企画展を中心に月に1本(2〜3週間)展覧会を開催。
住所:神戸市長田区二葉町 2-3-20
12:00 – 19:00 [休廊: 水・木・金]
URL:http://www.citygallery2320.com

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