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路地中に佇む、美術専門のライブラリー

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    リノベーションされた空き家や空きビルに伺い、どのような場所に生まれ変わったのかをリポートする不動産コラム。第12弾は、長田区二葉町にある美術専門のライブラリー「藝術文庫」。木造2階建のアパートにはアートギャラリー「citygallery2320」と、オーナーの向井修一さん・和田直子さん夫妻の事務所兼ギャラリースペース「W/M 事務所」が続いて並びます。今回は、2022年2月にオープンしたばかりの「藝術文庫」の改修について向井さんにお話を伺いました。

     

    ギャラリーの機能を拡張する

    3つのスペースが並ぶ2階建アパートは元々、向井さんのご家族が3代に渡って住んできた自宅。築60年の建物は改修を重ねながら、丁寧に受け継がれています。2018年に開廊したcitygallery2320はアパートの中央にあり、向かって左手の物件の2階に藝術文庫のスペースがあります。画家の和田直子さんが運営しており、向井さんがギャラリーアーティストと制作した図録や、作品、アーティストブックや絵本などが閲覧できます。

    「citygallery2320をこの場所で始めて3年が過ぎて、ギャラリーを開くだけではなく、遠方からわざわざ新長田まで来てくれる作家や来場者をもっと温かく迎えたいと思ったことがきっかけです。手元には多数のコレクションを保管していて、ギャラリーアーティストの作品や一緒に作った図録もある。アーカイブ資料閲覧の機能を持たせて、画廊に来た人が作品や本に触れられる場所を新たに設けることにしました」
    藝術文庫の改修を始める前から、向井さんの元には美術資料が集まっていました。たとえば、東門画廊、六間画廊、アトリエ2001など神戸で活動を終えたギャラリーの資料。現代美術作家の榎忠さんらから預かった貴重な個人資料。ご縁あって受け継いだそれらの資料を、藝術文庫の「アーカイブ室」に収蔵して残していくそうです。そして、クローズドな空間にならないように誰でも入りやすい「多目的展示室」も設けて、ワークショップや資料展示、絵本の朗読会などの企画も行っていく予定です。

     

    改修内容とスペースについて

    藝術文庫の改修に掛かった日数は3ヵ月ほどで、改装費は200万円ほど。神戸市の「アーティスト・クリエイター等の活動拠点支援事業」に応募し、100万円の補助を受けました。建物の2階にある藝術文庫の内部を、改修前後の写真とともに一部ご紹介します。

    【アーカイブ室】
    アーカイブのためのボックスは、無垢のオーダー家具を制作するMOU Trateknik&Designの幸玉次郎さんに依頼。スツールは、F:machineのもの。細部まで職人技が光る。関西を中心とした芸術祭の記録集、作家の資料、美術手帖50年分のバックナンバー、アート関連の書籍、展覧会ごとに制作する図録などが並び、自由に閲覧できる。床材はしっかりした印象のものに張り替えた。

    【多目的展示室】
    近隣でレンタルスペース「r3」を営むディレクター・建築デザイナーの合田昌宏さんの提案で、LEDの細長い照明を数本設置。高いものではないが、十分な光量で展示空間を照らす。窓側のアーカイブ室との間に設置したブラインドを下ろすと各部屋が独立し、空間に変化が生まれる。

    【作品展示】
    多目的展示室の壁面にも、向井さんが集めた作家の小さな作品が展示されている。室内には43インチのモニターが設置されており、映像作家の作品も観ることができる。並ぶ作品はその時々で変わるため、行くたびに新しいアートに触れられる。

    【W/M 事務所】
    citygallery2320の隣にある自宅内に、事務所とプライベートコレクションの展示室を設けた。玄関を入ってすぐ左のスペースはギャラリーアーティストの作品倉庫として使っていたが、壁を外して空間を開放。「路地の続きのような」という空間イメージも、共に改修を進めてくれた合田さんによる提案。空間の仕切りに合板ではなく足場板を使うなど、来訪者には路地を歩くように自然体で観賞してもらえるように建材選びにも配慮した。

     

    共有財産としてのアート

    citygallery2320、W/M 事務所、そして藝術文庫。一棟のアパートで連なる空間それぞれに役割を持たせて、来る人々をあたたかく出迎える向井さんご夫妻。

    「展覧会はあくまで途中の出来事で、作家にとっては制作期間や、展覧会後の活動もあります。その一連の流れに画廊として関わりたいですね。“アーカイブ”というと大層な言い方ですが、私が引き継いできたものを共有の財産として見せて、そしてまた誰かに引き継いでいってほしいです」

    citygallery2320で展覧会が行われる時間は、基本的に藝術文庫もオープンしています。アートブックなど、おもしろい本をできれば寄贈してほしいそう。アートに触れた経験が少ない人も、展覧会だとそわそわしてしまう人も、リノベーションやギャラリー活動に興味がある人も、ぜひ訪れてみてください。

    掲載日 : 2022.03.03

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