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シタマチコウベ

下町日記

下町日記 井澤真優

井澤真優

九月二十九日(金)

2023.10.10

長い一日だった。
いつもは8時にベットから出るのに、今日は6時50分にルームメイトに起こされる。
眠い、めっちゃめちゃ眠い。朝は昔から苦手で、スヌーズ嵐の毎日。
起きるか、二度寝かの狭間で揺れる。
ふと、9割(いやもっと)の確率で二度寝に軍配が上がっていることが頭によぎり、
そのことがなんだかくやしくなり、起き上がることにした。

「お~今日は起きてきた!」とルームメイトに言われる。
ちょっと得意げな気持ち。

早起きの訳は朝の散歩に繰り出す為。いわゆる朝活。
家を出て川沿いを1時間ほど歩く。
涼しい! 空気をめいっぱい吸い込む。

目がクラクラするほどの暑さのピークが過ぎ、朝晩は秋の空気に変わった。
風や虫の鳴き声も。秋、高らかに。はもうすぐそこ。

朝の川の景色がきれいで、思わず立ち止まってカメラを向ける。

下町日記 井澤真優
下町日記 井澤真優

うん、いい朝。

出勤して昼間は眠気と戦い、なんとか乗り越えて夕方。
近藤さん(事務所の代表)から「18時50分頃、満月が一番きれいに見えるらしいよ」と耳にする。
そうだ、今日は中秋の名月。
みんなは退勤してしまったけど、わたしはまだ残って仕事をしていた。
時計を見るともうすぐ50分。
休憩がてらに満月見よか、と屋上に上がる。

下町日記 井澤真優

屋上のドアの窓越しからも伝わる月の光。
とても明るい夜。

下町日記 井澤真優

事務所の屋上からきれいなまん丸お月さまが見えた。

もうちょっと見ていたいなと、部屋に戻って小腹を満たすものはないかと冷蔵庫を見る。

下町日記 井澤真優

酒飲みの罪悪感を0にしてくれるこのビールラベル。富山のクラフトビール。
はぁ今飲んだら最高やろなぁ…と思いつつ、ぐっと我慢。

いただきもののクッキーが目に入り、それを持ってまた屋上に上がる。

下町日記 井澤真優

月見団子ならぬ、月見クッキー。
白くて丸いし、お団子とお月さまと一緒。

下町日記 井澤真優

見渡せば東側には商業施設が立ち並ぶ繁華街があり、一方西側は下町。
どちらもすぐそこにある。

うちの事務所はその狭間にあるなぁとぼんやり思いながらクッキーを頬張る。
狭間ってなんか贅沢。だってどちらかを選べる選択肢がある。もちろん選ばなくてもいい。
そういえば、9月も夏の秋の間。心もからだもゆらゆらしてしまう訳だ。と、取り止めもなく考える。

朝から活動したからか、砂糖の甘さがやたら染みた。
年々時間が過ぎる早さを嘆いていたけれど、今日は長い一日だった。

そんな9月はあっという間に暮れてしまった。

登場人物

井澤真優|明後日デザイン制作所

1994年兵庫県三木市生まれ。神戸市在住。京都造形芸術大学情報デザイン学科卒。
2018年明後日デザイン制作所入社。グラフィックデザイナー。

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