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第2部
長屋で暮らす。

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    私の人生初の長屋暮らしは、二階の床にシートを貼るところから始まりました。
    下地合板の上に床シートを広げながら、「ああ、本当にここに住むんだな」と、少しずつ実感が湧いてきたのを覚えています。

    こんにちは。森田啓史です。
    前回のコラムに引き続き、今回は長屋に引っ越して感じたこと−良かったことや、実際に暮らしてみて分かったことを中心に綴ってみたいと思います。

    長田に引っ越すまでは、明石の実家に住んでいました。
    もともとは長崎で生まれ、幼稚園の年少までを長崎で過ごしました。海がとても近く、見晴らしの良い場所だったことをぼんやりと覚えています。

    年長になる頃、父の転勤をきっかけに関西へ移住。それ以降、大学生になるまでの約15年間を明石で過ごしました。長崎と同じく少し高台にある場所だったため、自分の部屋からは瀬戸内の海と淡路島を一望することができました。

    学生時代は、京都の北にある大学の近くで一人暮らしをしていました。
    ただ、あいにく私の学生生活はコロナ禍の初期と重なり、人との交流やイベントは次々と無くなっていきました。想像していた学生生活はどこへやら…
    想像していた大学生活とは少し違う形でしたが、それでも4年間の一人暮らしを静かに送り、学生生活を終えることになりました。

    そんな私が次に住む場所を考えるとき、いくつかの条件を決めました。

    ・職場から近いこと
    ・徒歩や自転車で生活が完結すること
    ・近くに飲食店があること
    ・海を見たいときに見に行けること

    明石でも京都でも感じていたのは、「住む場所」と「生活する場所」が分かれてしまうことへの違和感でした。制作や仕事を自分の生活のテリトリーから切り離すのではなく、暮らす場所と生活が、もう少し自然に混ざり合う環境に住んでみたい。そんな思いがありました。

    引っ越し先を探していたそんな折、縁あって「長田の長屋に住まないか」という話をいただきました。改装前の物件を見に行くと、隣り合う住居、年季の入った柱や壁、密集した住宅地の中に佇むその姿。

    「これは、暮らしを楽しめそうだ」
    そう思ったのを覚えています。まさに、自分が求めていた環境でした。

    ……と、ここまでが長屋暮らしの現実をまだ知らない、期待に胸を膨らませていた頃の私です。ここからは、実際に暮らしてみて感じたことを書いてみようと思います。

    実際に暮らし始めてみて感じた長屋の魅力は、玄関を開けた瞬間にまちとつながる感覚があることです。

    このあたりは、もともと労働と生活が隣り合ってきた地域でもあります。
    そのせいか、玄関の扉を開けると、まるでそのまま町の中に入り込むような感覚があります。
    「まちの中で暮らしている」という実感が、自然と湧いてくるのです。

    もちろん、良いことばかりではありません。
    建物としての年季はなかなかのものです。

    シロアリはもちろん、小さな隙間からはどこからともなく蜘蛛が現れます。
    幸いゴキブリにはまだ一度しか遭遇していませんが、これから迎える夏には少し覚悟が必要そうです。

    また、床の冷えや室内の寒さなどもあり、快適さという面では新しい建物にはかなわないと感じることもあります。

    そんなふうに、メリットとデメリットの振れ幅が大きい長屋暮らしですが、
    まちと共に生きている実感を感じながら、日々の暮らしに小さな変化をもたらしてくれる場所でもあります。

    快適さだけを求めるなら、もっと新しい建物の方が良いかもしれません。
    けれど、暮らしそのものを楽しみたい人にとっては、長屋という住まいは案外面白い選択なのかもしれません。

    森田 啓史

    2000年生まれ。長田区在住。 京都精華大学ビジュアルデザイン学科デジタルクリエイションコース卒業。 地域に根ざしたものづくりをしたいと考え、2024年よりcreative unit DOR に加入。 グラフィックデザイン担当。

    掲載日 : 2026.03.19

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