グッドモーニング和田岬
昨夜、自転車に乗らずに出勤したのを忘れて神戸駅で降りてしまった。海岸線の終電はとっくに過ぎている。徒歩だと和田岬までは兵庫駅で降りた方が近いのに、またやってしまった。今週はもう3回目。コンビニでピーナッツとビールを買って1杯ひっかけながら、歩いて帰る。歩くのは別に嫌いじゃない。自転車では普段通らない道を歩いていたら、いかり共同作業所を発見。定年後の父がたまに手伝っているところだ。兵庫にあると聞いていたけどこんなところにあったんだ。
今日は僕の誕生日。43歳になりました。
33歳で離婚して地元神戸に帰ってきてから、もう10年。泥砂の山をひたすら駆け上がらされているような苦しい時期からやっと少し抜け出してこれた気がしている。
生きてりゃいいさ、は河島英五。喜びも悲しみも立ち止まりはしない、は本当だった。
毎朝、古着屋ロストバードの店舗スペースだった土間で「パズーの朝メシDX」を食べ、町を眺める。この空間は妙に落ち着く。この町は居心地が良い。ここでの暮らしが気に入っている。この場所にたどり着いたのも何かの縁。
僕の部屋には昔、父や兄がディグったJAZZや70’s 80’sの洋ロックなどのレコードがたくさん眠っている。
今後、自身のバンドや別プロジェクトで音源を製作する予定がある。仲の良いバンドも増えてきた。自主レーベルやディストロだってできるかもしれない。
そんなことができたらいいなぁとぼんやり思い描いていた夢のようなアイデアが知らぬ間に少しだけ形づいていることに気がついた。
それら全てのやり方は知らない。けれど知らないからやってはいけないなんてことはない。やらないという選択肢は僕にはなかった。
散らかし倒していた土間を片付けて、什器の配置を変えた。
自室に置いていたスピーカーとレコードプレイヤー、ミキサーをおろしてきて設置し、のんびりリビングで聴いているようにしたいので椅子やテーブルはそのまま残した。折りコンにありったけのレコードを並べて、ディグりやすいように陳列。
ロストバードの古着もそのまま置いておけば、少しくらいひろきの生活の足しになるかもしれない。
けして無理をせず、僕たちの暮らしの少し延長線上にある「お店」とは少し違う空間ができた。
John Coltraneのレコードが、僕とどんな人を出会わせてくれるのだろうか?
僕よりうんと若い子がTrafficのライブ盤を聴いてまるで最先端の音楽に出会ったような衝撃を受けたりしないだろうか?
6月14日、僕の誕生日。
「コウベクラウドサーフカレー」は、間借りカレー屋さんとしてではなくレコード屋さんとして活動を再開します。
ナガヌマ ナオキ
1980年、神戸生まれ須磨区育ち。会社員。ハードコアバンド「kuragali」のボーカリスト。個人名義でノイズ音楽「numahamaru」。神戸ハードコアシーンの先輩たちで構成されている「Re-formation b.B.」にゲストボーカルで参加。正体不明、謎の覆面ノイズテクノユニット「スケベ電気」を発掘し、彼らのマネジメントを務める。間借カレー屋としてスタートさせた「コウベクラウドサーフカレー」を屋号はそのままにレコード屋として活動を再開。場所は和田岬、通称「釣具ビル」。開店日は、本業が休みの日。人と街、未来と文化をテーマにしたライフスタイルを模索している。
掲載日 : 2023.07.14