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神戸の新しい魅力に出会うウェブマガジン

シタマチコウベ

下町日記

淵上俊介

十月五日(水)

2022.10.27

- 神戸 × 靴 -

「神戸は靴の町」として有名です。
戦後高度成長もあり、大きく発展した産業でもあります。
中でも靴関連の製品の出荷額が市全体の7割を占める長田区は、全国屈指の靴製造業の集積地です。

1つの靴を作るのにいくつものパーツを組み合わせていまして、そのパーツパーツの加工所が長田区の至るところにあり、街歩きをしていると路地から機械音が一定のリズムを奏でているのが聴こえてきます。
その音は、下町に欠かせない存在であると私は思います。

とある日、私の得意先であるインソール加工業者の社長が倒れました。
社内は突然の司令塔を失い右往左往し、このまま会社が無くなるのではないかという従業員の不安が重い空気となり何日も続きました。
生産を止める事も出来ず、手を動かし社長の回復を待つ日々。

そんな中、同じ靴関係の企業が業務も雇用も受け継ぐという連絡があり、失意の中、ギリギリで救いの手が伸びました。
得意先も従業員も機械もほとんど受け入れる事を承諾し、安心して仕事が出来る環境が再び生まれました。

事業を譲渡した会社の工場内

また靴が作れる喜びを味わったわけです。
その後、社長も容体が回復し、無事に復帰する事が出来ました。

長田区の靴関係ではここ数年、生産量が減り、雇用も減り、正直景気はあまり良くはありません。
しかし、譲渡した会社、譲渡された会社、双方の仕事に対する姿勢、将来のビジネス形態、雇用の考え方が一致し、手を繋いでいく形となり、私自身ほっとしています。

下町の中のこうした助け合いのなかで技術が継承され、新たな物が生み出される。
そんな循環がこれからも続いて欲しいと願っています。

譲渡された側の会社の工場内

 

 

登場人物

淵上俊介|F:machine / 機械メンテナンス・アイアン製作

神戸市須磨区生まれ。
2003年、垂水区にて木工機械を主とした機械屋「F:machine」を設立。2015年、長田区に事務所を移し、機械修理や鉄加工の業務をおこなっている。主に加工業者との取引きで、家具・建具・建築・梱包・船舶・靴・DIYの機械や道具の販売や修理を取り扱う。

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