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神戸の新しい魅力に出会うウェブマガジン

シタマチコウベ

下町日記

横堀ふみ

十月十六日(土)

2021.10.16

9:30 息子の保育園最後の運動会が始まる。

息子はこの週の頭に風邪を引いてしまい、10/13(水)から保育園をお休みし、回復を図って運動会に臨んだのだった。これまで生き生きと楽しそうにリハーサルのことを話していたので、運動会の会場である長田南小学校の体育館にいるだけで感無量である。(ちなみに10/13(水)は山下残『そこに書いてある』劇場入りの初日で、私はお休みしたくないんですが…マジですか~と心の中で泣いていた)

0歳児クラスから一緒だった子ども達がたくましくなっていて、冒頭から涙、涙、涙である。どの子もとても愛しい。

13:30 劇場に戻る。本日は、山下残『そこに書いてある』の初日である。

14:00 手話グループの方々、ビッグ腹ダイス、山賀ざくろさんが入り、それぞれの控え室で、今日の流れを確認する。

14:15 劇場の客席の椅子に一冊ずつ本を置いて、とあるページに照明をあてる作業を始める。上演中に暗くなって、蓄光テープが貼っているところが、じわりと光る仕掛けがあるのだ。

15:00 本番通りのリハーサル「ゲネ・プロ」が始まる。緊張感が劇場に漂う。

16:30 ゲネ・プロ終了ほどなくして、客席の椅子を並べて、お客さんに配布する本、計80冊程度を劇場の客席に運びこみ、照明をあて始める。

17:10頃 表方のスタッフが集合し、流れと体制の確認。コロナ禍の為、久しぶりの公演でもあり、また、聴力障がいのあるお客さんもご来場いただくことから、受付まわりの確認をいつもより慎重に行う。その後、ロビーの清掃、受付まわりの整備など、バタバタ過ぎて、このあたりの記憶はほぼない。

18:30 受付開始。

18:40 私とスタッフの田中は、開いていた本を閉じて、劇場扉前のハイテーブルに並べて行く。椅子を整え直し、開場準備。

18:50 開場。受付前は、多くの人で溢れんばかり。順に中に入っていただく。

19:04 劇場内においていた掲示板を回収し、インカムで舞台監督に連絡。

19:05 キューのBGMが流れ、開演。

19:15 手話グループの方々、ビッグ腹ダイス、山賀ざくろさんの控え室を新長田合同庁舎に用意していたので、迎えにいく。皆さんはロビーで待機。

19:40頃 事務所に設置している劇場の様子を映すモニターを凝視。「(ページ数)50」の声を聞き、ビッグ腹ダイス、山賀ざくろさんを舞台裏まで案内。

19:55頃 「(ページ数)43」の声を聞き、手話グループの方々を舞台裏まで案内。出番の終わった皆さんは再びロビーで待機。

20:20頃 最後のカーテン・コールに向けて、再び皆さんを舞台裏まで案内。

20:35頃 カーテン・コール。暖かな拍手の重なりに胸が熱くなる。無事に1回目の幕が開いた。「開かない幕はない」という言葉を呪文のように唱え続けてきたこの数ヶ月のクリエーションだった。

この1年半のあいだ、「複数の人と、同じ時間・同じ場所にいて、目の前の生身の身体が行うことを見ること」ってどういう事なのだろうか、何度も自問した。今回、オンライン配信ではなく、生の公演を行いたい、その一心だった。一冊の本を媒介にして、舞台と客席が呼応し合うような仕掛けをもったこの作品を、コロナ禍の現在、上演したかった。カーテン・コールの拍手を耳にしながら、こっそりと涙。今日は涙ぐんでばっかりの一日。

登場人物

横堀ふみ|NPO法人DANCEBOX プログラム・ディレクター

神戸・新長田在住。劇場Art Theater dB神戸を拠点に、滞在制作を経て上演する流れを軸に、ダンスを中心としたプログラム展開を行う。同時に、アジアの様々な地域をルーツにもつ多文化が混在する新長田にて、独自のアジア展開を志向する。ベトナム人の夫をもち、一児の母でもある。

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