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shitamachi NUDIE vol.57

長田大師 久寳山霊山院 副住職|衣笠文清さんにまつわる4つのこと

笑顔と人が集まる、みんなのお寺

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地下鉄海岸線「駒ヶ林駅」から徒歩8分。真陽小学校の北側に、東寺真言宗「長田大師 久寳山霊山院」はあります。東寺真言宗は真言系仏教宗派のひとつで、宗祖は弘法大師(空海)。霊山院は、現在長田区で唯一、弘法大師を本尊とするお寺です。本堂で出迎えてくださった副住職の衣笠文清(きぬがさ ぶんせい)さんに、仏教の世界に入った経緯や月例行事、近々開催予定のイベント「霊山院FES」についてお話を伺いました。

 

 

文:柿本康治 写真:岩本順平

 

祖父母を喜ばせるために着た法衣

実家がお寺でしたが、私は宗教にまったく興味がありませんでした。「好きなことをやってみたらいい」と親に言われていたので日本体育大学で陸上をしたものの、選手としての限界を早々に知ることに。仏教の道に入るきっかけは、先が長くない祖父母を安心させたくて法衣をまとったときですかね。喜んでもらいたい一心で、頭を丸めてその姿を見せました。その後は高野山大学で2年、金剛峯寺研修生として1年の修行をしてから、四国八十八ヶ所霊場のお遍路へ。自分の体力を過信して高知でがんばりすぎて、前脛骨筋がはがれてしまいまして。痛めた足を引きずりながら夜明け前に歩いていたとき、第一番札所の霊山寺で出会ったおじいさんが「般若心経を唱えながら歩けば、みんなが助けてくれる」と話していたことを思い出して、藁にもすがる思いで唱えました。初めは祖父母のため、両親のため。思い描いた人がみんな笑顔になっていって、親しくない人に対しても感謝の気持ちが湧いてくるんです。朝日が差してきたころ、目の前にお地蔵さんがいて手を合わせました。88ヶ所の霊場の間には無数のお地蔵さんがいらっしゃって、毎回手を合わせます。お地蔵さんに拝みながら、小さな感謝にも気づけた旅でした。トータル1300kmを39日間でまわったから“サンキュー”の旅、というオチです(笑)。おじいちゃんおばあちゃんに向けて人生とは何たるや、と大層にしゃべるのは苦手なので、毎月20日の法話会でもお遍路のエピソードなど実体験の話をしています。

 

ご縁をつなぐ護摩リレー

霊山院では月例行事として、毎月28日に護摩祈祷を行なっています。護摩祈祷では不動明王の炎で煩悩を焼き尽くした後、仏様の口を表した護摩壇中央の炉に願い事を書いた護摩木を焚べて祈願します。護摩堂は今の住職がつくってくれたもので、中央に飾っているのは先代住職が描いたお不動さん(不動明王)。60歳から仏画を学んで描いた仏様には先代住職の思いが込められていて、先先代の住職が霊山院を開山する際に迎えた弘法大師もお祀りいたしております。今の住職と私と親子4代で拝んでいます。檀信徒のみなさまが気軽に参加できるように企画した「護摩リレー」もコロナ禍から始まって4年目になりました。修行やお遍路で出会った全国のお坊さんが毎月ゲストで来られて、一緒に拝んでくれます。東寺真言宗にかぎらず、京都の泉涌寺(せんにゅうじ)派総本山の方や、奈良の安部文殊院という華厳宗の寺院の方など、本当にいろんな方が来られます。陸上競技をしていたこともあって「護摩リレー」と名付けました。私のなかではご縁つなぎですね。お寺というとお葬式の暗いイメージがありますが、それを払拭したいなと。あのお寺の人が来るから行こうかな、くらいの気持ちでいいんです。霊山院は実家のようなアットホームな寺ですので、何かで悩んでいたら護摩祈祷に気軽に来てもらえたら。気持ちがスッキリすると思いますよ。「それ仏法遥かに非ず、心中にして即ち近し」という弘法大師様の言葉がありまして、「仏様の教えは遠くにあるものではなくて、心の中にすでにあってとても近いもの」という意味です。合掌するときの左手は自分の手、右手は仏様の手といわれています。信仰心がない人でも、拝むことで穏やかな気持ちになるはずです。

 

お坊さんとしてのテーマ

「信心0の人が1になるように」というのが私のお坊さんとしてのテーマです。私自身がそうだったので、仏教に興味がない人の背中を少し押してあげられたらと思っています。2023年4月に初めて開催した「霊山院FES」の参加者は、ほぼ信仰を持たない方々でした。チケットは130枚売れて、集まった人数はスタッフ含めて150人。6組のアーティストが出演して、書道パフォーマンスや飲食など9組の出店ブースもあって、とても楽しかったです。三宮にあるビアカフェ「ラフィン」で平成2年生まれの「02会」という同世代の集まりがあって、そこから広がった異業種の仲間たちにイベントの相談をすると「霊山院のためにできることがあるなら」と二つ返事でフェスに参加してくれました。あれだけの人数が集まりましたが終了後の会場はきれいで、両親もよろこんでいましたね。今年の4月28日に第2回の開催を予定しています。出店ブースが増えて、護摩祈祷もあって、住職も歌います。霊山院の和やかな雰囲気を感じてもらえればうれしいです。ラフィン店主のSomaくんや同世代の仲間のお店では、私が手づくりしている「お守り付き護摩木」を取り扱ってもらっていまして。お願い事が書かれた護摩木を受け取って、年末の護摩祈祷で焚いています。初めの年は18本でしたが、昨年末は270本になりました。お遍路にしても護摩リレーにしてもそうですが「まずはやってみよう」が自分のモットーですね。踏み出せば、いろんなものが動いて、いろんな人が支えてくれます。

 

先代から継いだ、本堂再建立の願い

霊山院は戦前に久保町3丁目から1丁目に引っ越してきて、現在の場所で100年ほどが経ちます。戦時中に初代が亡くなって、祖父は17歳で寺を継いで70年間住職を務めました。檀信徒のみなさまとの深い信頼関係があるのは、祖父と現住職である父のおかげです。生前の祖父には、檀信徒の皆様が一同に会する本堂をつくるという願いがありました。法要で来られる方々が本堂に入りきらず、小さいお寺だといわれることもあったりとご不便をかけてきました。それでも見守ってきてくださったみなさまのためにも、本堂再建立は実現したい願いですね。再建を祝う法要を「落慶法要」といいまして、そこで住職が登壇して先代に報告してくれたらいいなと思います。長田は近所の人が「あんた、どこの子や?」と声をかけてくれるような人情味があふれる土地です。夏の地蔵盆のときには地域の人たちが総出で手伝いに来てくださるので、私も少しずつお礼ができればいいなとよく考えます。先代は近くの公園でベニヤ板とビールケースでステージを組んで、地域の人たちとカラオケ大会や花火を楽しんでいたとか。霊山院FESというチームができたので、近くの商店街の方々と一緒にイベントを企画してみたいですね。夏はかき氷の札を表に出しておいて、立ち寄られた方に涼んでもらうだけでもいいですし。お茶を出して世間話をしたり。僕はさびしがりなので、誰かとおしゃべりしていたい。まちの暮らしに近い寺でありたいです。

長田区にある久寳山霊山院 副住職の衣笠文清さん
長田大師 久寳山霊山院
衣笠文清(きぬがさ ぶんせい)

長田区にある弘法大師が本尊のお寺、東寺真言宗霊山院の副住職。平成2年生、兵庫高校→日本体育大学→高野山大学→金剛峯寺研修生を経て神戸に帰る。四国八十八ヶ所霊場を歩き遍路にて成満。趣味は音楽。檀信徒のみなさまと地元神戸の人を笑顔にできる僧侶になる為に日々精進しています。夢は「本堂再建立」。毎月20日14時~本尊報恩法話会。28日14時~不動明王護摩祈祷。

 

Instagramにてお寺の情報と笑顔を発信

https://www.instagram.com/kuho_zan_reizanin/

掲載日 : 2024.03.25

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