• twitter
  • Instagram
  • facebook

神戸の新しい魅力に出会うウェブマガジン

シタマチコウベ

下町の店≒家家みたいな店

2023.03.17

vol.08

長田区駒ヶ林 ランチ・エステ・…

隠れ家 巛せん

文:竹内厚 写真:岩本順平

駒ヶ林の、とりわけ車道「高松線」よりも海側のあたりは、細かな路地が密集するエリア。第1回に訪ねた駄菓子屋「フレンド」もすぐ近所。

この駒ヶ林の路地にある古民家が今回の行き先「隠れ家 巛せん」。昨年11月にオープンしたばかりで、まさに隠れ家と呼ぶにふさわしい立地。…とはいえ、お昼どきには多くの人が訪れるという。

そのお目当てがこちら。食材も調味料も体にいいものにこだわったおばんざいのランチ。

おばんざい8品のランチで1,500円、5品のミニランチで1,200円。ちなみに品数はおばんざいで、メイン料理はまた別カウント!これらのメニューはまだ進化途中で、4月からはまた少し違った内容を思考中だそう。

ご飯はすべて土釜でひとつひとつ炊いている。日替わりで白米、五穀米、ワカメご飯などから選ぶことができる。

オーナーの江本聖子さん。実家も今の住まいもこのご近所。お好み焼き屋やガールズバーなどを経営した後、エステに開眼。体のことを深堀りするうちに、体にやさしいご飯に行き着いたというなかなか異色の経歴。

「この古民家はスマホで不動産サイトを見てたら見つけました。ボロボロでしたけど、この古民家に一目惚れして、自分がやってみたいと考えていたことがここなら全部実現できそうだったので」。

6+6+5.5+5.5畳にキッチン、納戸と小さな庭付きという古民家らしい間取り。ここで江本さんはおばんざいランチだけでなく、あふれるほどのアイデアを形にしつつある。

ひとつはエステサロン「Saint」。ベーシックコースは6,500円と格安。

「都心部だと何万円ってするようなサロンと同じようなスキンケア用品を使っています。逆に安すぎて警戒されてるかも(笑)。けど、だんだんリピートのお客さんで予約が毎日埋まってきました」。

自宅そばで始めたのにも理由があるよう。

「夕方になるとうちの子どもが学校からここに帰ってきます。ランチの営業は終わってる時間だけど、エステをまだやってたら、子どもはここで遊びながら待っていて。ランチを手伝ってくれてるスタッフも、土曜日は子どもを連れてきたりもしてますよ」。

これまで子育てと仕事の両立が大変だった経験から、自分やスタッフをはじめお客さんも、子連れで来やすい場所を実現した。

ちなみに、スタッフは江本さんの幼稚園の頃からの友だち2人と、高校時代からの友だちという地元つながり!左からチコさん、エリカさん、江本さん。

「この場所の使い方とかメニューをどうするかとか、みんなでいっぱい話し合って決めてきたけど、ほんまに毎日わくわくで。他にも同級生がたまたま店に来てくれて、プチ同窓会みたいになったことも何度かありました」。

こちらの連載ではおなじみの、遠くから見れば、親族一同が寄り集まったような様子に。これぞ店≒家スタイルの醍醐味。

エリカさんは、玄関入ってすぐのスペースを活用して、「siosou」名義でアフリカの布・バティックで手づくりしたベビー用品や、アフリカ直輸入の雑貨を販売。

「イベント出店などをしながら、ずっとお店はやってみたかったんです。siosouは2人の子どもの名前から付けました」とエリカさん。キッチンスタッフとしても大活躍。

古民家とアフリカ雑貨の相性がいい。バティックのお手玉200円、パンツやスカート1,980円など良心的価格。

部屋のすみではユーズド服などの販売も。さらに、もう1部屋では大親友のチャッピーが「ライフスタイルサロン」を近日スタート。

「庭では、暖かくなるころに月1で自然農法の八百屋さんに来てもらって野菜販売を始める予定です。あとは納戸。きれいに掃除したらかわいい空間だから、アンティーク雑貨とか売れたらいいんだけど…」と江本さんの夢はつきない。

家の目の前には、ベトナムの人たちを中心にした「多文化共生ガーデン」も。いずれはここで獲れたパクチーなどを使った料理にも挑戦したい。

「日替わりでいろんなアジアンカレーも出したくて、実験的にやってみたりしています。」

不揃いの家具はもらいもの多し。こちらはエリカさんのおばあちゃんからのいただきもの。

こうした建具もこの古民家を選んだ決め手だった。

「3月からは仕事を引退した母も手伝ってくれる予定です。母の居場所にもなればなって、それも最初から考えてたこと。ほんと私、欲張りな性格なんです(笑)」。

最近ではお昼のお弁当が認知度アップ、人気上昇中。店で食べられるランチと同じ、こだわりのおばんざい弁当1,000円、ミニ弁当850円。

「この場所で店がやれるかなって不安もありましたけど、ちょっと尖ってたいなって気持ちもあって(笑)。けど、尖ってばかりだとお客さんは来ないのもわかったので(笑)、みんなと話し合いながらこれからもいろいろチャレンジしていけたらと思います」。

下町の店≒家