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下町くらし不動産 vol.22

間借りから始まった工務店ならぬ縫務店

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リノベーションされた空き家や空き地に伺ってレポートする「下町くらし不動産」。
今回は、長田区久保町の「柳谷縫務店」を訪ねて、店主の柳谷菜穂さんに話を聞きました。

 

建築の仕事から転じて

柳谷さんと下町の出会いは大学時代から。神戸芸術工科大学で建築を学んでいた柳谷さんは、長田・駒ケ林の古民家に事務所を構えるまちづくり事務所「スタヂオ・カタリスト」にアルバイトで通っていました。卒業後は丹波篠山の工務店に就職。そこで3年間働いた後、再び神戸へ。ちょうど、カタリストに勤務していた角野史和さんが独立するタイミングだったのもあって、角野さんの立ち上げた「一級建築士事務所こと・デザイン」で働くことに。それが2019年のこと。

柳谷さん:篠山ではすっごい田舎でまあまあ大きな家に1人で暮らしてたんです。仕事が大変というのもありましたけど、やっぱり結構さみしくて。それと、建築は高校生の頃から勉強してきたことですけど、建築というものの規模の大きさにうまくなじめなくて…もうちょっと自分の身の丈で仕事がしたいなというのもあって、神戸に帰ってきました。

こと・デザインでまちづくりの仕事を手伝いながら、小さな頃から大好きだったという裁縫や洋裁を仕事にもできるんじゃないかと少しずつ思い始めたというが、その大きなきっかけとなったのがコロナ禍だった。

柳谷さん:2020年の5月、緊急事態宣言で仕事がほとんどなくなったときに、旦那さんが帽子をつくりたいって言いだして。サイクリングもしないのに、形がかわいいからサイクリングキャップがほしいって(笑)。私も暇だったので、家にあったミシンを使って試行錯誤で作りはじめてみたら、私のほうがハマることになりました。
建築畑にいたから私はCADが使えたので、それで先に図面をつくって、旦那さんから「そこはもうちょっと丸いほうがいいかな」「ここは何センチで」って指示を受けながら型紙を起こしました。平面から立体にするって、頭の使い方としては建築と同じだなって。

初めての帽子づくりを試行錯誤で始めたのが2020年5月。その翌月には「柳谷縫務店」という屋号のアイデアがあったというから、動き出したら早い。工務店の1文字を「縫」に替えて縫務店。これは世の中にある言葉ではなく、柳谷さんオリジナルの命名。

柳谷:住まいに関する困りごとを解決するというのが工務店で、その仕事は注文住宅から網戸の修理まで幅広いんです。私は、裁縫の技術を使うことで、人とコミュニケーションをとりながら街の困りごとを解決できるんじゃないかなって。そんな思いつきを角野さんに話したら、面白いから絶対やったほうがいい! と背中を押してくれて。結局、こと・デザインの一角に間借りする形で、「柳谷縫務店」を始めることになりました。

 

縫務店と建築事務所のよきシェア
それが現在、柳谷縫務店を構える建物。開業時は、小さな室内にこと・デザインの事務所と間仕切りもなく同居して、角野さんが行政職員らとミーティングするテーブルの真横で、ガタガタガタっとミシンを使っていたんだとか。今は、こと・デザインの事務所が2階へ移っているが、当時の状況を想像するとちょっと面白い。

柳谷:けど、全然違う仕事をしている人が同じ空間にいるのは、互いに行き詰まったときに話すこともできて、結構よかったんです。角野さんもミーティング中にちょっと詰まったら、「柳谷はどう思う?」とかって聞いてきて(笑)。
あとは、角野さんがスーパー営業マンみたいな感じで、とにかくいろんな人に私の仕事を紹介してくれたので、それは本当にありがたかったです。この仕事を始めてから今まで、営業は一度もしないままでここまできていて、自分でもそのことにもびっくりしています。決して稼げてるわけではないですけど(笑)。



今は部屋の中央にL字の本棚を置いて部屋をゆるく仕切って、入って左を作業スペースに。右は打ち合わせスペースと本棚に角野さんが集めてきた街のフリーペーパーや地図が並ぶ。建築畑の経験も活かして、ごく小さな一部屋をうまく2つの機能に使い分けている。ちなみに、この建物自体、かつてはケミカルシューズのミシン場として使われていた時代があったそうで、偶然とはいえ、またここでミシンの音が響くようになったことも興味深い。

柳谷:角野さんとしても、この建物を街のアーカイブスポットとしていろんな人が出入りする場所にしようと考えていたこともあったみたいですけど、といっていつも常駐できるわけでもないから、まだ実現できてなくて。この部屋の奥に和室がひとつあるから、そこでワークショップをやってみるとか、今後の建物の活用はもう少し考えられるかなとは思っています。

縫務店という仕事の発明

柳谷縫務店のことをもう少しだけ説明しておくと、チェーン店系の洋服リフォーム専門店や、商店街などに店を構えていた洋裁店なら、まずは「お直し」「丈詰め」といった依頼が真っ先に頭に浮かぶところだが、柳谷さんがやろうとしているのは、それとはちょっと違う。まずは困っていることを相談してもらって、それに合わせて考えて、手を動かして…だから、わかりやすい料金表が用意されてるわけでもない。

柳谷:逆に洋服リフォームのチェーン店だと基本的なことしか受けてもらえないみたいで、「ベストの肩幅をもうちょっと狭くしたい」みたいな相談をしたら、断られたって人がうちに訪ねてきたこともありました。一方で、すごくアート的なこととして、洋裁に関わることを始める人もいますけど、私には作家という気がまったくなくて。その人が求めるものを汲み取ってうまく提案するほうが、私は気持ちいいんです。ファッションを学んだこともないですし。なんとなく困りごとを聞かせてもらって、お任せしてもらえたら、そこはわりと自信があります!

「住」の困りごと相談先が工務店なのに対して、まさに「衣」の困りごとを引き受ける縫務店。最近の仕事でいえば、障害のある人の就労の場にもなっている近隣のチャリティ古着屋(クロスクローゼット)で利用者といっしょに古着をリメイクする話を相談中だったり、新しくオープンしたトスカーナ料理店のエプロンをちょっとカスタマイズしたり、神戸ザックとのコラボでザックの端材を使って帽子をつくったり、パラグライダーの生地でモノづくりしている作家とコラボで帽子をつくったり…。

柳谷:帽子から私の仕事が広まったのもあって、帽子屋さんって言われることも多いです。自分ではあまりかぶらないけど(笑)。帽子づくりも楽しいんですけど、その人がずっと大切に着続けてきた唯一無二の洋服とかのお直しをすることを、やっぱりもっとやっていきたい。ただ、どうしても金額的に割高に思われることが多いので、だいたいこれくらいかなって見積もりを伝えるとそれきりってことも…(笑)。直しかたにもよるんですけどね。


杓子定規な補修では決してなく、ダーニングだったりあて布だったりとその物に合わせた柳谷縫務店の仕事ぶりは、Instagram(https://www.instagram.com/yanahou__/)でも発信中。ちょっと相談してみたいって人はお気軽に〜。

 

 

 

掲載日 : 2024.07.17

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