• twitter
  • Instagram
  • facebook

神戸の新しい魅力に出会うウェブマガジン

シタマチコウベ

下町くらし不動産

居住空間から生まれ変わった古本屋

2022.12.05

リノベーションされた空き家や空き地に伺ってリポートする不動産コラム。第18弾は、兵庫区西出町の古本屋「アコークロー舎」。築50年以上のヤスダヤビルの2階にお店があり、1階のカレー屋「ニューヤスダヤ」からはスパイスの香りが漂ってきます。今回は、アコークロー舎の店主であるサクラさん、ヤスダヤビルの家主である平井陽さん(shitamachi NUDIE vol.17)、お店づくりを手伝ったツタさんの3名に、改修についてお話を伺いました。

 

出会いは自転車屋のバーで

2022年8月にオープンしたばかりのアコークロー舎は、JR神戸駅から南へ7分ほど歩いたところにあります。旅・建築・漫画・絵本・サブカル関連の本が多くそろう棚には、サクラさんの出身地である沖縄の本や、神戸にまつわる本も並びます。

アコークロー舎があるヤスダヤビルは平井さんが2017年に購入し、現在は中央区相生町で「自転車屋PORT」を営む川崎貴之さん(shitamachi NUDIE vol.40)とともに住みながら改修した建物です。2017年に閉店した老舗居酒屋「ヤスダヤ」があった1階の店舗スペースの利用者を募ったところ、個性的でおいしいスパイスカレーをつくる藤村勇輝さん(shitamachi NUDIE vol.35)と出会い、2019年にカレー屋「ニューヤスダヤ」がオープンしました。

平井さん:2020年に僕も川ちゃん(川崎貴之さん)もここから引っ越すことになって、4階建てビルの2階から上のフロアをいい感じに使ってくれそうな人を探していました。愛着がある建物なので一般に募集はせず、PORTにあるバーカウンターで出会う人に声を掛けたりしていたら、そこに来ていたサクラさんが古本屋を営むのが夢だと話してくれて。

サクラさん:私は2020年に神戸に引っ越してきて、この地域に馴染みはありませんでした。近くの自転車屋を探していたら、InstagramでPORTを見つけてたまに通うようになって。平井さんと出会ってビルを内見させてもらったものの、元は住居だった空間で本屋ができるのかは分からず。でも、自由に手が入れられるところに惹かれて、ここで自分のお店を開くことにしました。

 

改修前後の様子

サクラさんがヤスダヤビルを内見したのは、2022年2月のこと。2月のうちに片づけ始めて、4月から本格的に解体をスタート。お店づくりを一緒にしてくれたツタさんとは平井さんと同じく、PORTで出会いました。

ツタさん:PORTに飲みに行ったら、サクラさんから本屋を始めるということを聞いて、現場を見させてもらいました。普段は木や鉄でいろんなものを製作しているので、よかったらお店の什器をつくったりしましょうか、と声をかけてお手伝いすることに。最初の予定では、ここまで解体するつもりじゃなかったんですよね。そのまま残っているのは階段くらいじゃないですか?

平井さん:そうそう。ここまで改装するイメージはなかったけど、結果的に2階をフルで解体して、とてもいい空間になったと思います。

サクラさん:かなり古い建物なのであちこち直しが必要だったけど、時間を掛けてもいいから楽しみながら改装していこうと思いました。

改修に掛かった日数は3ヵ月ほど。改修前後の様子をご紹介します。

【床】
粉まみれになりながら床をはがしたら、意外ときれいだった。足場板は知り合いの本屋から譲り受けたもの。ご近所の方から端材や角材をもらえたおかげで、木材の価格が高騰する時期でも床や什器のための費用を抑えることができた。

【天井】
天井を抜いて、押し入れや余分な柱を撤去すると広がりのある空間になった。天井を抜く作業は時間が掛かり、一番大変な作業だった。構造部分や壁面にはムラなく仕上がる合成樹脂エマルションペイントを塗って、部屋が明るい印象に。

【本棚とカウンター】
建物の鉄骨と同じ鋼材を使ったかっこいい本棚と、しっかりとしたカウンターをツタさんにつくってもらって、自分のお店らしくなったと感じたそう。

 

アコークローに込められた想い

アコークロー舎は週末のみオープンし、開店日には「本」と書かれた小さな看板が表に出ています。

サクラさん:サラリーマンが看板を見てのぞいてくれたり、ワンちゃんや子どもを連れた人がやってきたり。おっちゃんが集う居酒屋が多い地域だけど、ほかの人もフラッと来てのんびり過ごしてもらえる場所になったらいいなと思います。

店名の「アコークロー」は、沖縄の方言で「夕方から夜に移り変わる“間”」を表す言葉。普段は見過ごしてしまう小さなことや、さまざまな人や物の揺れうごく“間”に気づける場所になれたら、とサクラさんは願っています。居住空間から店舗へのリノベーションや、ビル一棟の段階的な改修に興味がある方はもちろん、本が純粋に好きな方も、ヤスダヤビルの裏口から2階にぜひ上がってみてください。

 

関連記事

shitamachi NUDIE

2018.12.06

週末だけでつくりだす豊かな空間と空きビル生活の実践

下町くらし不動産

2019.06.27

休日DIYで元居酒屋ビルがカレー屋に

shitamachi NUDIE

2020.10.22

西出町そのものがカレーのスパイス

下町暮らし不動産 一覧へ