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神戸の新しい魅力に出会うウェブマガジン

シタマチコウベ

shitamachi NUDIE

vol.40

自転車屋PORT 店主|川崎貴之さんにまつわる4つのこと

自転車と“nice”がある、相生町の拠点として

2021.08.04

ここは中央区相生町の路地裏。昨夏、神戸市営地下鉄海岸線「ハーバーランド駅」から5分ほど南に歩いたところに、秘密基地のような場所が生まれました。3階建てのビルの1階にある「自転車屋PORT」は、ロードバイクやクロスバイクといった自転車からママチャリのような一般車まで、幅広い種類の修理やメンテナンスに力を入れています。店にはコーヒーやお酒を飲みにふらりと立ち寄る人たちも。港のように開かれた場所はどのように生まれたのか、初夏の陽射しに負けないくらい朗らかな人柄の店主・川崎貴之さんにお話を伺いました。

文:柿本康治 写真:岩本順平

 

自転車屋の人情を残すために

PORTは自転車の修理とカスタム、それと取り寄せで新車の販売もしています。バーカウンターがあるから憩いの場にもなっていて、近所の知り合いがフラッと飲みに来たり。人としゃべるのが昔から大好きなんです。須磨の実家が自転車屋で、親が忙しくてもお客さんが幼い僕の相手をしてくれたから店にはよくいましたね。自転車がめっちゃ好きというより、地域に根づいた店が好きだからこの仕事をしているのかも。もともと僕は理学療法士だったですけど、親が店をたたむつもりだと知って「もったいないし、俺やるわ」と継ぐ意志を伝えて。実家と別の自転車屋の2軒で働きながら、原価計算や仕入れの仕事もして経営のシビアな部分も学びました。昔ながらの町の自転車屋って「サービスでええよ」とよく言っちゃうですけど、無料提供ばっかりだと生活がきびしくなる。実家の店が持つような人情のある文化を失なわずに売上を補填する方法を考えたら、別業態をくっつけてやっていくのがええんちゃうか思って、飲食などの専門知識を身につけるために北欧ヴィンテージ家具を主に扱う「北の椅子と」のカフェで働くようになりました。キッチンの仕事を2年間経験して、和田岬界隈の人とのつながりができたことがいまにも活きています。 

 

 

棚ぼたで始まった店づくり 

実家では4年ほど働きましたが、今もまだ継いでいません。親の店が続けてきたことは純粋にすごいけど、僕は僕で自転車屋の経営について違う考え方があることが分かってきて。親にあれこれえらそうに口出す前に自分でやらなあかんよなぁ、と当時はモヤモヤしていました。そのときちょうど、僕が住んでいたヤスダヤビル(兵庫区平出町にある、平井陽さんがオーナーのビル)の1階に「ニューヤスダヤ」というカレー店が入ったことで、また人との交流がグッと増えました。仲良くなった店主の藤村勇輝さんやよくお店に来ていた建築士の西村周治さんに悩みを相談してみたら「ここらへんにチャリ屋ないし、店始めたらええやん」と背中を押してくれて。しばらくしたら、西村さんが売りに出ていたこの3階建てのビルを見つけてきて「ここでカワちゃん店やるんやったら、僕がビル買うわ」って言うんですよ(笑)。路地裏だけど日当たりがよくて、それだけで大丈夫な気がして。そんな棚からぼた餅でお店を始めることになりました。ビル全体の改修が終わった20208月末に「新中央ビル」と名付けられたこの場所のお披露目会をして、PORTも満を持してグランドオープンということに。子どもも大人も楽しそうに過ごしていて、PORTでやりたかったことってこういうことやなって思えました。 

 

*新中央ビルの改装の様子は、西村周治さんが親方を務める「西村組」ホームページをご覧ください 

https://nishimura-gumi.net/304/ 

 

 

直せば愛着が湧いてくる 

自転車って、持ち主によって“いい塩梅”が違うからおもしろいです。単に乗れたらええねんっていう人もいれば、きっちり自分に合わないとダメという人もいる。PORTが力を入れている修理やメンテナンスは、自転車屋の腕の見せどころです。自転車の使い方やライフスタイル、好きなものについてお客さんと会話しながら、それぞれに合った修理を見つけていきます。預かっている大学生の自転車はブレーキをかけすぎてホイールがダメになっていて。修理費が結構かかるから自転車ごと買い替える人が多いですけど、「毎日使ってて思い入れがあるから直してほしい」ってその男の子に言われたです。物への想いが乗っかってて、めちゃくちゃうれしかったです! 自転車はフレームさえ大丈夫なら、どうでもなります。リヤカーでもベビーカーでも相談してくれたら直しますし、車イスの人もたまに来ますよ。PORTが直す自転車の7割くらいはママチャリですけど、細いタイヤの自転車も修理しています。いわゆる町の自転車屋とハイスペックな自転車屋のどちらかが世の中には多いけど、その間にある自転車屋としておもしろがってもらえたらありがたいです。 

 

 

港町の拠点として 

店の前が小学校の通学路で、子どもがたくさん通るですよ。もっと子どもにも開けた場所にしたいので、パンク修理のワークショップとかやってみたいです。昔のおっちゃんみたいに自分で自転車を修理できるようになると、もっと大事に扱うようになるから。サービスが充実してあれこれやってもらえる時代やけど、町のあったかみが減ってるようにも感じます。身近な自転車をとおして、人との関わりができたらいいですね。さみしいから僕がしゃべりたいだけかもしれへんけど(笑)。「PORT」という店名は、ハブ(拠点、接点)みたいな店にしたくて付けました。神戸は港町やし、誰かが寄ってきてここで何かやって、また外に出ていって。イベント出店などで外に向けて名前を出すときは「自転車  nice PORT」と名乗っています。“nice”って言葉の意味がフワッとしてて、僕っぽくてええなと思ってて(笑)。niceは会話でもいいし、コーヒーでもいいし、お酒でもいい。もしPORTに興味を持ってくれた人がいたら、ぜひあなたの“nice”を探しに来てください。 

自転車屋PORT 店主
川崎貴之

須磨区出身。自転車屋を営む実家で生まれ育つ。実家と別の自転車屋の2軒で仕入れや経営、修理の技術などを学び、和田岬の「北の椅子と」にてキッチン業務を経験した後、中央区相生町のビルの1階をリノベーションして「自転車屋PORT」を20206月にオープン。自転車の修理サービスをメインに、バーカウンターではコーヒーやお酒を提供する。誰もがふらりと立ち寄って語らい合える“港”のような場所を目指す。 

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