
2026年度、シタマチコウベの新たな取り組みとしてスタートした「LOCAL EDITORS」という連載企画。シタマチコウベの各地域に詳しい方々に、町の魅力や楽しみ方、旬の情報などを届けていただきます。
今回は、和田岬で活動している坂本ひろきさんによる連載です。
続々と更新されていく、LOCAL EDITORS企画。お見逃しなく!
文 : 坂本ひろき
写真 : 白石卓也
みなさん、こんにちは!
鳥と古着を捜索しながら、オリジナルウェアも創作している古着屋LOST BIRDの店主・坂本ひろきです。
2021年から和田岬に拠点を構え、気がつけばもう6年。
最初は知り合いもほとんどいませんでしたが、今では駅を降りて家に帰るまでの数分で誰かに会うくらいこの町に馴染みました。
お店は2026年6月から元町へ移転しましたが、僕自身は今も和田岬に住んでいます。
これからこの連載では工業地帯の小さな町・和田岬のホットな話題を捜索していきます!
ある日、地下鉄海岸線の改札を出ると壁一面が大きな紙に覆われていました。
それは具体的なものを描いているというよりは、まとまりはないけど楽しそうに“何か”をつくっている様子。
そもそもこんな駅のど真ん中で1ヶ月も公開制作?なんてしていいのでしょうか。

壁には“搬入終わらズ”と書かれた封筒がキャプションとして貼られていました。
6/26〜7/27までの1ヶ月間、和田岬駅構内のアートギャラリーで搬入終わらズというアート集団による展示が行われているようです。
メンバーはLOST BIRDのとりTeeのデザインも手掛けているアーティストの田岡和也さん
LOST BIRD 和田岬店のお隣カルチア店の仲島義人さん
豆醍珈琲店主の上田善大さん
日本画家の船岡抄迅さん
カメラマンの白石卓也さん
全員和田岬を拠点に表現を続けているという共通点を持つ5人です。
彼らは駅のど真ん中で一体何をしているのか、そもそも搬入おわらズとはなんなのか。
和田岬で起きているカオスの正体を突き止めるべくメンバーの田岡和也さん、仲島義人さんに話を聞いてみました。

左:仲島さん、中央:上田さん、右:田岡さん
ー そもそもこのギャラリーで展示をしようとなったきっかけは。
田岡 : このギャラリーは和田岬駅の中にあって、元々は和田岬周辺の企業や学校の成果発表の場所として貸し出されたりしていたんです。
でも、コロナくらいに婦人会から「田岡さん1ヶ月何かしてみないか」と言われて田岡枠をもらって、自身の作品を展示したりLOST BIRDとも展示したりしていました。
最初は絵とかを置くだけだったんですが、“カルチア派、僕ら”というグループ展を当時のカルチア食堂に集っていた仲間と開いたんです。
その時に搬入っていう事にして、ちょっとだけライブペイントとかしてみたらええんちゃうんという話になって、やってみたんですよ。
仲島 : ある日、カルチアに搬入終わらずのメンバーで集まった時に4人で絵を描きたいなって話をした。じゃあ、田岡くんが駅のギャラリー使えますよって言ってくれた。
展示期間が長いからずっと作品を搬入し続けたら面白いかなって。

搬入をしている田岡さん。
ー 公開制作ではなく、あくまで「搬入」がコンセプトなんですね。
搬入する作品にテーマや決まりはありますか。
田岡 : テーマはありません。
家で作ったものを持ってくる時もあれば、その場で描いて搬入したものもあります。
和田岬駅は1日2万人くらいの利用者がいると言われています。通勤や通学の人たちに作品がどんどん搬入される様子を1ヶ月無理矢理でも見せることで、昨日よりまた何か増えていると違和感に気づいてくれたらいいんちゃうかなって。
仲島 : 普段はこんなに大きな絵を描けるタイミングもないし、誰かと一緒に何かをつくる機会も少ない。自分たちが実験的なことをしながらも清書しているみたいな緊張感が楽しい。

搬入をしている仲島さん。
ー 毎日通る道だからこそ、昨日違った景色があると気になりますね。
それが日々の暮らしの些細な変化に気付くきっかけにもなりそうです。
搬入終わらズとしては今回で3回目の展示ですが、かなり自由に制作をしていますが注意を受けたりしたことはないんですか。
田岡 : それが注意されたこととかはないんです。
だから、人に迷惑をかけていなければ自由に搬入させてもらえています。
むしろ、わざわざ市内からも見に来る人も増えて「よくわからんけど頑張ってな!」と言って応援してくれています。
仲島 : 始発から終電まで自由に搬入できるから、全員が集まって搬入することはないけど上田さんが搬入した絵やじん君(船岡さん)が搬入した金箔の作品を見て、交換日記みたいに自分も搬入作業をしてるって感じ。
今日は上田さんが描いている時に高校生たちが興味を持ってくれたみたいで、届く人たちには「何かを表現してる」ことが届いてる。
ー 僕もお店に来るお客さんに和田岬について聞いてみると、場所もわからないし、行き方も知らなかったという人は結構多いです。
和田岬について普段から気にしている人が少ない下町だからこそ、誰かに干渉される事なく、気になった人だけが応援してくれるので自由に活動できるのかも知れませんね。
田岡 : この数年で和田岬にはこべっこランドができて、駅の壁が装飾されて、神戸市が選定したアート作品を置くギャラリーも別にできました。
それに加えて、このギャラリーで僕たちの展示や地域の学校や企業の展示などを見て、この町の人たちが自由にものづくりを楽しんでいる雰囲気を感じてもらえると思います。
最近では僕らの自由な展示スタイルに憧れて、メンバーに入れて欲しいという声も上がっています。
仲島 : 相性が合う人たちであれば来るもの拒まず!
最初はメンバーが互いに気を遣いながら搬入をしていたけど、回を重ねて今回が1番自然体で搬入できてる。これからもっと良くなっていく。

2025年の搬入の様子。左:船岡さん、中央:仲島さん、右:田岡さん。
この取材の数日後、造形作家の大塚奈緒子さんと切り絵作家のトダユカさんがメンバーに加わったことを彼らのInstagramを通して知りました。
INSTAGRAM : @hannyu_owaras
和田岬という小さな町のギャラリーで始まった“搬入”をテーマとした完成を急がない展示。
そこに関わる人たちは市街地から少し離れた分、何にも干渉されず伸び伸び表現し続けている人たち。
6年前、この町に縁もゆかりのなかった僕が、鳥と古着を“ソウサク”する店をやってみようと思い立ち、2026年まで続けてこられたのは、ジャンルや肩書きに縛られず、工業地帯で強かに表現を続ける彼らの姿を見てきたからです。
和田岬駅で降りる機会があれば、駅のギャラリーや彼らのお店を覗いてみてください。
もしかしたら、誰かが搬入しているかもしれません。気がつけばこれを読んでるあなたも和田岬で 何かをしているかも。
和田岬のソウサク活動は今日も終わらず。

搬入を続ける仲島さんと田岡さん
LOST BIRD
「鳥をソウサクしています。」というキャッチフレーズを掲げて、2021年に和田岬と塩屋にオープンした古着店。現在は元町の鯉川筋に拠点を移して、海外で捜索したデザイン性溢れる古着や“鳥”をテーマに創作したオリジナルウェアの販売を行っています。
住所 : 〒650-0011 兵庫県神戸市中央区下山手通3丁目6-2
アクセス : 神戸市営地下鉄海岸線 旧居留地・大丸前駅から鯉川筋を北側に徒歩5分
営業日:水曜定休 13:00-19:00
INSTAGRAM : @lostbird.kobe
坂本ひろき|古着屋LOST BIRD
神戸生まれ神戸育ち。
神戸芸術工科大学ファッションデザイン学科卒業後、アパレル企業での勤務を経て2021年に和田岬で古着屋LOST BIRDをOPEN。
妻と愛犬と和田岬在住。ファッションと動物と大衆酒場が大好き。
最近は海外買付の間に色んな都市の動物園や自然保護区を巡って鳥以外にも珍獣を探すことが楽しみ。
掲載日 : 2026.07.23


