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LOCAL EDITORS
-新長田-vol.1

プチ・タイムスリップ町歩き
〈大正筋〉

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    2026年度、シタマチコウベの新たな取り組みとしてスタートした「LOCAL EDITORS」という連載企画。
    シタマチコウベの各地域に詳しい方々に、町の魅力や楽しみ方、旬の情報などを届けていただきます。
    今回は、新長田で空地文庫を運営している小松さんによる連載です。
    続々と更新されていく、LOCAL EDITORS企画。お見逃しなく!

     

    文:小松菜々子

    新長田編を担当する小松菜々子と申します。長田の南側、本町筋の近く、協同病院の真裏に空地文庫という古本屋なるものを開いています。2021年に関東から神戸に移住したので、まだまだ新参者ですが、本当に賑やかでネタの尽きない地域を本屋という定点から綴れたらと思っています。

    先日、知人から漫画家でイラストレーターの佐々木マキさんの本を渡されました。長田生まれであり、二葉町2丁目に暮らしていたとのこと。(空地文庫は久保町2丁目なので同じ筋に住んでいたことになる。)
    この本には作家の若い頃のエッセイが綴られており、良く知っている名前や地名がたくさん出てくるので面白く、ススイと1日で読み終えてしまうほど。

    ______________佐々木マキ、ノー・シューズ、亜紀書房、2014年、p.159 p.160 より

    ぼくの育った家の前から、北に高取山が見えた。南にはガスタンクが見えた。まっ黒で巨大で、武骨で古めかしく、瓦斯タンクという感じだった。
    ガス会社の横はただっ広い道路で、不思議と車が通らなかったので、子供たちはそこを「ガラクタ球場」とよんで野球をした。台湾製糖のグラウンドは、おとなたちが使っていたし、日吉グラウンドはその近くの子供たちが占領していたので、結局ここしかなかった。
    ただっ広い道には全面に、ガス会社の廃棄した鋭いコークスが敷きつめられていて、ボールは常に奇妙なバウンドをしたし、誰もスライディングする勇気がなかった。ガタガタ球場と呼ぶ所以である

    この文章から当時の本町筋の情景が眼に浮かぶ。高取山とガスタンクの位置は今でも変わらない。今でいうアグロガーデンあたり、もしくは高松線あたりが子どもたちの遊び場だったのだろう。
    以下の文章からは当時の子どもたちのルーティン(夏休み?)が綴ってある。昭和20年代の終わり頃の話で、まだ駒ヶ林の漁港に砂浜がある頃だ。

    ______________佐々木マキ、ノー・シューズ、亜紀書房、2014年、p.160p.161 より

    子供たちの遊び場は街のほかに、山と海があった。午前中、各自”肥後守”を携帯して高取山に登って遊び、帰って昼御飯のあと再集合して午後は駒ヶ林の海で泳ぎ、夕方連れだって銭湯へ行き、早目に夕御飯を食べて夜は家族で近所の映画館へ行く。思えばなんと充実した一日だったろう。
    駒ヶ林の海岸、通称林の浜には、八幡様やお稲荷さんがあったりして、元来は古い漁師町だった。細い路地が複雑な迷路のように入り組んでいて、昔は土地勘のある犯罪者が一旦そこへ逃げ込めば、警察も容易に手が出せなかったものだ、と母が話してくれた。(中略)
    多分ぼくたちが林の浜で泳ぐことのできた最後の子供だろう。

    駒ヶ林地区にある元共同水場だった場所と噂の6角形の花壇?ここにも三角の御影石。

    わたしはこの駒ヶ林地区というのがなんともたまらなく好きで、よく一人で散歩している。この地区は震災の被害が六軒道より北側に比べて比較的少なかった地域なのもあり、古い街並みが残っている(コンクリートで固められていない土の路地もここには残っている!)。
    この駒ヶ林で気になっていることが一つあり、三角形の御影石がこの路地のいたるところにぽつんぽつんと置かれていることである。大きくて立派なものから、小ぶりなものまで大小さまざまなものが狭い路地に置いてある。車が通るような大きい道なら車止めかと思うが、軒先に洗濯物が干してあるのも重なり、自転車やバイクがギリギリ通れるような路地のため何の為に置かれているのか分からない。

    その謎を解決してくれたのが、大正筋の前田呉服店の店主さんだった。

    彼女との出会いはひょんなことで、2023年から長田南部で、地域のアトリエや作業場を利用して、刈った雑草から草木染を行うイベントを行っており、そのイベントの際に使用する木綿や絹の生地を前田呉服店さんに駆け込んで見繕ってもらったのがはじまりだった。店主さんはとても親切・おしゃべり・チャーミングな方で、草木染で染める旨やイベントを行うことを伝えると、染めやすい生地や安価な商品を快く教えてくれた。

    毎年前田呉服店さんで買った生地を地域の人たちと染めている

    商品を包む間に昔の大正筋商店街の風景や駒ヶ林の話が途切れない。それもそのはず、前田呉服店は戦後からお店を構え続けているお店らしい。ちなみに前田呉服店の目の前のダルマ茶園さんも震災以前から続くお茶屋さんで、お店の前で座って美味しいお茶が飲める。店の奥にある冷蔵庫の上の大きなやかんのオブジェは、震災前の商店街のアーケードの天井が低かった為、店先に吊るしてあったものらしい。

    話を元に戻すと、その駒ヶ林の三角形の御影石は所謂泥棒避けであり、家の四隅に置くことで知らない人が勝手に入ってこないように、というこの地域に伝わる古い風習だという。まさか、おまじないだったとは。
    空地文庫も大正時代に建てられた長屋の生き残りなので、もしや、と家の周りを見てみたら三角の御影石を発見した。家を守ってくれますように。

    前田呉服店は二葉町5丁目にあるため、震災前は二葉新地がすぐ裏にあったという。店主の前の代には花魁道中も見れたらしい。

    この流れでもう一つ、大好きな神戸の本を紹介させてほしい。


    ______________三宅正弘、神戸とお好み焼き まちづくりと比較都市論の視点から、神戸新聞総合出版センター、2002年、p.38 より

    かつて神戸には「にくてん街」(肉天町)と呼ばれた場所があった。戦前から戦中にかけてのことで、長田区の繁華街(商店街)・大正筋に接する横丁で、にくてん屋だけが六店、並んでいた。
    そこは二葉新地という花街に隣接する場所で、映画館(松竹館)に接していたので、当然、客層は、大人であった。

    この「にくてん街」に今はタンク筋に場所を移した「水原」(現在の表記は「みずはら」)の初代の店が存在した。みずはらではにくてん時代からの「のせ型」(キャベツと粉を混ぜる「混ぜ型」と系譜が分かれる)が継承されており、薄い生地でペロリと食べられる。


    またこの文章に書かれているにくてん街や映画館は久保町六丁目あたりだったと考えられる。今現在、ダンスボックスが運営する劇場が4階に入っているアスタくにづか4番館があるあたり。なんか不思議だけど、繋がっている。
    今目の前にある街並みに、先人たちや商店街の先輩方の記憶を合わせてみてみると、なんだか急に奥行きができて、今と昔をタイムスリップするみたい。

    なんでもない日常の街歩きが、ひょろっとご褒美タイムに。

    6月から8月にかけてふたば学舎ではオープンギャラリー展として、長田区今昔写真展を開催中です。

     

    空地文庫

    古本屋、オルタナティブスペース、公園
    2024年よりオープン。
    地域の人から寄付してもらった本を投げ銭スタイルで持って帰れるシステムの古本屋。本と本の交換も可。
    大正時代の長屋をリノベーションした全面土間のスペースで、パフォーマンスやWS、映画鑑賞などを地域に縁のあるアーティストが、気軽にアウトプットする場としても機能する。
    天井から吊るされたハンモックは子どもたちに一目置かれています。
    【場所】
    653-0041 兵庫県神戸市長田区久保町2丁目2-8ガパオハウス
    【アクセス】
    神戸協同病院裏の路地/駒ヶ林駅から徒歩5分/新長田駅から徒歩8分
    【Instagram】 akichi_bunko
    営業日は不定期のため、インスタから確認ください。

    小松菜々子|ダンサー・振付家

    横浜育ち。2021年にArtTheater dB KOBE主催のダンス留学7期に参加し神戸へ移住。2022年度 ArtTheater dB KOBE アソシエイト・アーティスト。長田に住む人たちと一緒にウソとホントの入り混じった長田まち歩きダンス作品『あわいにダンス』を発表。2024年から本屋兼オルタナティブスペース兼公園の”空地文庫”をオープン。



    掲載日 : 2026.07.06

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