
コラムの第一部では、長田に移住した決め手について書きました。今回は、それ以上に私がこの地に移り住むきっかけにもなった「仕事」について綴ってみたいと思います。
こんにちは。森田啓史です。
改めて簡単に経歴について触れておくと、私は京都の大学でデザインを学んでいました。
卒業後は1年間、アルバイトをしながら、キャラクターコンテンツの制作やイベントへの出店などを行い、自分の作品を販売する活動をしていました。
そんな私が、なぜDORに所属し、町の仕事に興味を持つようになったのか。
きっかけは一冊の本との出会いでした。
『おもしろい地域には、おもしろいデザイナーがいる ― 地域×デザインの実践』(学芸出版社)
子どもの頃から、広告を見るのが好きでした。おいしさや楽しさを演出する広告は魅力的ですが、どこか現実よりも脚色された世界でもあります。
デザインという骨格だけは強くすることができても、サービスや商品の品質という肉体が伴わなければ、全体のバランスはどこか歪んでしまう。そんな、実態と制作物がつくり出す世界との乖離に、私はずっと違和感を抱いていました。
しかしこの本の中には、地域の現場に深く関わりながら、実態と向き合ってデザインを行う人たちの姿がありました。初めて「血の通ったデザイン」、手触りのあるものづくりを知り、デザインを通して社会と関わってみたいと思うようになりました。
それから私は、地域の中で、特に自分が育った兵庫の土地で、地に根ざしたものづくりをしたいと考えるようになり、DORに所属することになります。
正直に言うと、DORに入るまで長田のことはほとんど知りませんでした。
後になって記事を読み、「長田はかつて治安が悪い町と言われていたらしい」と知ったほど…
けれど実際に関わる中で、この町には多くのプレイヤーと熱量があることを知りました。
なかでも記憶に鮮明なのが「30年後の情景プロジェクト」です。新長田の再開発事業の終了を機に、これまでの30年を振り返り、これからの30年を考えるプロジェクトでした。
この取り組みを通して、私は長田のまちに関わる人の多さに驚きました。それぞれ目的や立場は違っていても、「この町に何かを残したい」という思いを持って活動している人たちが確かに存在していました。
他にも、漁師さんのイベントや、工場見学のできるイベント「開工神戸」、下町芸術祭などの取り組みにも関わるなかで、現場の熱量や人のつながりが次の世代へと受け継がれていく様子を目の当たりにしました。
今の環境には、その循環を育てていく力があり、自分たちの制作するものもまた、その循環を後押しする役割を担っているのだと感じています。
持続性を考えながら活動する人たちがいるからこそ、血の通った「肉体」を持った町がここにはある。そんな感覚を、長田で初めて実感しました。
もともとは、イラストやキャラクターコンテンツを作り、自分一人で生きていければいいと思っていた私ですが、今では町の循環に少しでも良い影響を与えられるものづくりを意識して仕事をしています。
また、今回、仕事のフィールドに暮らしを持ってきたことで、町のプレイヤーの一人として企画にも関わっていける存在になれたらと思っています。これからも、その一馬力になれるよう、自分自身のスキルを磨いていきたいと思います。
森田 啓史
2000年生まれ。長田区在住。 京都精華大学ビジュアルデザイン学科デジタルクリエイションコース卒業。 地域に根ざしたものづくりをしたいと考え、2024年よりcreative unit DOR に加入。 グラフィックデザイン担当。
掲載日 : 2026.03.20


