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山本豊久

八月二十三日(金)

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久保町1丁目なかよし地蔵尊

長田区には地蔵盆と言われる子どもを災いから守ってくれるお地蔵さんをお祭りし、お線香を持ってお参りした子ども達にお菓子のお接待がいただける行事があります。


その昔は町の至る所辻々にお地蔵さんをまつる祠がありましたが、阪神淡路大震災で倒壊してしまったことや、お祀りする方の高齢化が原因でその数も激減してしまいました。それでも長田南部地区には、まだ昔ながらのお地蔵さんが存在しています。
私の住んでいる町内には霊山院というお寺があり、そこには三体のお地蔵さんをお祀りしています。そのお地蔵さんを前日には町内の方々が協力して祭壇を組み子どもの名前の書いてある提灯をずらりと吊り、テントを立てお接待のお菓子を沢山用意して当日に備えるのです。
このお地蔵さんの他所とは違うところは、地蔵の前に設置した護摩壇にそれぞれの願いの書いた護摩木を焚き上げて、副住職はじめ3人の僧侶によりご祈祷していただく事です。

さて、いよいよお接待の午後6時が近づいてきました、いつのまにか前の歩道には長い行列が出来てしまってます。
女性陣は主に子ども達にお菓子を渡す役割、我々男性は子ども達の安全を守るために各々の場所へ。
午後6時からの開始に少し時間がありますが、既に大勢の親子連れの行列のなかを本堂から護摩祈祷をする3人の僧侶が法螺貝とともに入場して、護摩壇の前に座ります。
住職がマイクで子ども達に向けて、「お地蔵さんに手を合わせてお願いすると、元気ですくすく育つようにとお菓子をいっぱいくれますよ」などのお話をして6時丁度に読経とともにお接待は始まった。

浴衣を着て大きな袋を持った子ども達や「おんかかかびさんまいえそわか」と辿々しくお経を読む子など、長蛇の列となり少子高齢化と言われているのは本当なのかと疑いたくなる。
そこからは我々男性陣は大忙しです。公園の前で駐輪の警備をする人、赤い誘導灯を持って往来の自動車に注意を促す人、私は歩道に並んだ人がお地蔵さんの前で横断するための安全確保をと。パチパチと大きな炎をあげ音を立てて護摩木が焚かれる。
3人の僧侶の読経が厳かな時間を演出し、約500個のお菓子がなくなる迄の約1時間、子ども達の列は途切れることなくそれぞれの持ち場で釘付けになっていた。
そして、お疲れさん会が社務所で始まる。町内の皆さん十数名がテーブルを囲み、キンキンに冷えた奴と鰻弁当がご苦労さんと言ってくれている。
住職の乾杯の発声でプシュと言って癒してくれた。後は言うまでもなくプシュっとが何度か続き、お互いの一年を振り返り元気でお接待が出来ることに感謝!感謝!


数年前に、下町文化研究のため大勢のゼミ学生を連れて取材に来た、K大の先生もスタッフとして終わるまでご一緒して頂いて、すっかり馴染んでいただいているのもお地蔵さんの力と一同共感し感謝する。
お地蔵さんに奉仕が出来た達成感と空腹が満たされた満腹感に包まれ、ほろ酔いの反省会は暑かったことも忘れて終りを告げた。

山本豊久

阪神淡路大震災をきっかけに地域と本格的に関わりを持つ様になる。はじめは被災した事で地域への恩返しのつもりが気が付けば30年の時が流れていた。
現在は自治会長、(真陽)ふれあいのまちづくり協議会委員長、長田区保護司会会長など少しでも地域のお役に立っていることを信じながら思考錯誤の毎日。

掲載日 : 2024.09.07

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