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シタマチコウベ

下町日記

村田圭吾

五月二十二日(月)

2023.06.08

歯医者に来ている。
今麻酔の注射を打たれたところで、
麻酔が回るまで少しの待ち時間だ。

メゾンムラタがある笠松商店街にある歯医者さんで、すごく気に入っている。
以前は電車を乗り継いで歯医者まで通っていたのだが、いつの頃からかここにお世話になっている。

待ち時間は5分以内。
大事な治療は院長自らがしてくれる。
それに家から近い。

いざという時にサッと行って診てくれるというのは心強いのだ。
と言ってもいざということが今のところ起こったことはない。
きっと丁寧な治療をしてくれているのだ。

何せ治療をしている人の名前が院の名前に入っているのだ。
ムラタがフランス修行時代、修行先のパトロンから言われた言葉が今でも心に刻み込まれている。
自店の店名に名前を入れるということは、確かな事をしていますよと言う意志の表れなのだと。
だから私のパン屋にも『MURATA』という文字を入れた。

至らないことも、満足してもらえることも、
全部私がやってますよという意思表示だ。

段々と麻酔が効いてきてもう少しで治療が始まる。
麻酔をされて治療が始まると、ムラタは決まって寝てしまう。

半起きで、半寝。
先生からすると厄介な患者だと思う。

決まって口を開ける努力を辞めるムラタには「マウスピース」がはめられる。
助手さんも手慣れたものである。
もう全部理解してくれているのだ。

気がつけば治療が終わっていて、
お会計を済ませて次の予約を入れて家路につく。
3分の距離だ。

時間貧乏のムラタにとっては何ともありがたい歯医者さんなのである。

登場人物

村田圭吾|メゾンムラタ

福井県生まれ、15歳で高校を中退してパン職人になる。17歳で単身神戸の『ビゴの店』に修行先を移し、22歳で奥さんと一緒にフランスに修行へ。27歳で第一子を授かり日本に帰国し、パン教室から初めて、2015年「メゾンムラタ」を開業。
神戸のパン屋文化のした支えができるように和田岬でパンを焼いてます。

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