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神戸の新しい魅力に出会うウェブマガジン

シタマチコウベ

Shitamachibudie

vol.33

株式会社Happy|代表 首藤義敬さんにまつわる4つのこと

多文化多世代シェアハウスの「暮らし」と「学び」

2020.08.05

駒ヶ林駅から東に徒歩5分。六間道商店街の端に建つ緑色の6階建のビルが、多世代型介護付きシェアハウス「はっぴーの家ろっけん(以下、はっぴーの家)」。介護業界で話題となっているこの場所には、単にケアを必要とする高齢者だけでなく、外国人や若者など多様な人々が住んでいる。そして、週に200人を超す視察者が訪れている変わった高齢者施設。ただ、ここまでの情報は既に様々なメディアで取り上げられていること。今回、シタマチコウベ編集部から歩いて3分という近さならではの、まだ見ぬ、はっぴーの家をお伝えしていきます。株式会社Happyの代表、首藤義敬さんは、家族でここに暮らし、「遠くのシンセキより近くのタニン」をコンセプトに事業を展開中。その先には何を見据えるのでしょうか。

文:高木晴香 写真:岩本順平

ただ「目の前の人のために行動する」こと

はっぴーの家の事業に共通していることは「目の前の人のために行動すること」です。まずは、自分、そして家族、その次に、日々一緒に過ごしている人や仲間のためにできることをやる。この場所を作ったのも自分の子どもが、いろんな人と出会える環境を作りたかったからなんです。最近、新型コロナの自粛期間にオンラインサロンを始めました。それも自分の子どものことがきっかけで。新型コロナの影響を受けて、宿題をたくさん渡された自分の子どもや、表現の場や仕事をなくした友達のアーティストたちを助けるために生まれたんです。アーティストの持つ表現力を生かした魅力的な授業をつくって、子どもたちを惹きつけ、学校がない間も遊ぶように学ぶことができる。

オンラインサロンで学ぶ子どもたちには目標を設定していて、「株式会社Happyの収益の一部を社会や地域にどう還元したらいいか、どう使うのがいいか、自分たちで考える」ということです。例えば、寄付をしようと考えたとしても、どこにするか、ということを決めるためには社会を知る必要がでてくる。そのために、いろんな視点を持った講師からオンラインサロンで学ぶ。どう還元するか、それを考えるために数学や理科の知識が必要であればその都度、必要な講師から学ぶというシステムをつくっています。子どもの時からアウトプットを見据えてインプットする、これが究極の学びだと思うんです。

 

 

 

日常を豊かにする、そのための学び

はっぴーの家の今年のキーワードを「学び」と設定しました。学びは、日常を豊かにすると思うんです。最初に、働いているスタッフが学ぶ環境として、社内オンラインサロンを始めました。学びの場としてのイベントやワークショップなど、インプットする場は多いけど、それをアウトプットする場が少ない。本当は、学びが1番深まる瞬間ってアウトプットする時なので、大事なはずなんです。今年の僕の役割は、みんなが学んだことをアウトプットする機会を作ることなのかなって思っています。

オンラインサロンはスタッフ以外にも広がっていっています。参加した方たちに、はっぴーの家にいるお年寄りにヒアリングしてもらうことも考えています。話をすることは同時に、おじいちゃんおばあちゃんたちのアウトプットの場になって、日常の幸福度を上げてくれる。印象深かったことは、不登校の子が楽しんでくれていたこと。学校のような整えられた場所だったら、そんな子が入り込む隙がなかったかもしれない。でも、はっぴーの家のオンラインサロンでは、おばあちゃんが「私まだご飯食べてないんですけど…」って画面に乱入してくるようなカオスなシーンが溢れています(笑)学校の授業とは違って保護者も観れるから、共通の話題にもなって家族の団欒にも繋がる。オンラインならではの良さがあるんだなと気づきました。

 

 

 

多様性は光だけじゃなく、闇も含む

長田って印象がまだまだ悪い街ですよね(笑)。実際、僕が子どもの頃は、今よりも差別を肌で感じることが多くありました。外国人が多くて柄が悪いイメージを持たれたり、日本人同士でも「長田は、、、」って言われたり。そんな背景のある街にあるはっぴーの家だからこそ「ダイバーシティ(多様性)」をテーマとして取り入れました。ハッピーの家では、働いている人も住んでいる人も本当に多様です。外国人や若いカップルがおじいちゃんおばあちゃんと一緒に暮らしています。そんな暮らしに近い多様性をしっかり発信していくことが様々な人に対してのメッセージになる。

事業をする時には、良いところも悪いところも無視しないようにしています。良いところだけならすぐ見つかるし、模倣もされる。その場所が抱える闇の部分は何なのか。他の事業を考える時にも、それを意識していますね。ここで働いている人も本当に多様です。共通点はみんな闇や欠点を抱えながら生きていること(笑)。だからこそ、この環境の中なら、助け合えるし、それがはっぴーの家を構成する多様性の一つになる。下町のだらしなさや不完全さがもっと許容されれば、生きやすい社会になるのに、って思います。

 

おせっかいから生まれる、一人ひとりにあった暮らし

去年から「おせっかい不動産」という名前で、不動産事業も始めたんです。「暮らし」には、家以外の要素がたくさんあるから、僕たちは物件だけでなく、その人が必要なコミュニティや仕事も紹介します。だから「おせっかい」不動産。暮らしの中に選択肢を増やしていく、そのための提案をしています。はっぴーの家が介護施設ではないのもそこに通じてて。僕はここで「暮らし」を売っているんです。医療施設が「安心安全なサービス」を提供するように、僕たちは「日常の満足度を上げるサービス」を提供している。だからこそ、僕はこの家に暮らしている。それは、この場所でやっていく覚悟を見せることでもあるんですけどね(笑)。うちのスタッフにも、ただ週5日、ここに来るんじゃなくて、ライフスタイルの一部として働くことを意識してもらっています。不動産事業を通して、このまちにある古い家や空き家を生かすことで、地域づくりにつながるんじゃないかなって考えていて。はっぴーの家の離れをこの地域に増やして、そこで暮らす人の日常の満足度を上げることが、地域を良くしていくことに繋がる。一貫して、コミュニティや生きがいを作っていくことが僕たちの仕事だと思うんです。

 

 

株式会社Happy|代表
首藤義敬

長田区で多世代型介護付きシェアハウスという暮らし方を実験中!将棋、サウナ、珈琲を愛する35歳。昼までダラダラ寝ていたい脱力系起業家代表。

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