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2021.07.08

森本アリ 2nd week 『ワンダーランド』

神戸市営地下鉄海岸線は、「駒ヶ林」「苅藻」「御崎公園」「和田岬」「中央市場」という、普段電車の車窓から神戸の町を眺めているだけでは見えてこなかった、小さな歴史がいっぱいに積み重なったエリアに、まるでタイムスリップするかのごとく誘ってくれる。

 

とはいえ、車窓からの景色を楽しめず、ただ駅から駅へワープするツールに僕はなじめないので、もっぱら海岸線沿線をしらみつぶしに、あみだくじをなぞるように歩くことを至上の喜びとしている。僕にとっては、「もう間に合わない、助けてっ」とワープが必要な時に乗り込むのが地下鉄海岸線。それはそれでとても助かる。

 

塩屋のあれやこれやでどっぷりなのに、わざわざこのエリアに足繁く通うきっかけを作った師匠が2人居る。このサイトにも顔を出す角野史和くんと三宗匠くん。お二人共に15年くらいの付き合いだ。

 

神戸発、ジモトとジモトが互いのプライドをかけてシノギをけずる、地域系お見立てバトル頂上決戦「ちいきいと」というイベントシリーズがある。これは、「神戸〜阪神間の各地から「まちの顔」が集結し、お題にあわせた写真とトークで、血で血を洗う終わることのない地域間抗争を展開している。だいたい3ヶ月ごとに、商店街から海の家まで、グッドロケーションで開催中」なんですが、なんのこっちゃわからないこのイベントは、なんやかや2020年で10周年。すでに29回目を迎えた。記念すべき10周年30回目を参加型ワークショップ形式で開催したい特別編は、コロナによって2度延期したままだ。私たち3人は共に「ちいきいと」の「中の人」。「ちいきいと」というリングでプロレスをしている。

 

「ちいきいと」で角野くんは長田区、主に駒ヶ林周辺の、三宗くんは兵庫区、主に稲荷市場周辺の、激烈に面白い写真とそれを解き明かす言葉で、彼らが活動するエリアの魅力を伝える。そしてそれぞれに「こと・デザイン」「salon i’ma」という拠点を持ち、地域に根ざしている。彼らが紹介する、もの・こと・情景は、インスタ映えするようなキレイ・カワイイ・ステキなものではない。それは、マジで? すげー! コワッ! ぎゃー! という強烈なものだったりする。そして、ひとしきりその写真の背景が語られると、じわじわと胸が熱くなってしまうのだ。もちろんただ笑い飛ばせる時もある。最高だ。

 

僕は「シオヤプロジェクト」(以下シオプロ)という塩屋の町をいじる文化的装置を主催しています。数年かけて塩屋の路地を歩きつくし、地図「ぶらり塩屋の町」を完成させたシオプロは、塩屋の町を飛び出し、「シオヤプロジェクトの勝手にまち探訪」という、7時間のトライアスロンのようなまちあるきを始めた。今年で4年目に突入し32回を重ねた「勝手に『よその』まち探訪」は、駒ヶ林7時間、苅藻7時間、和田岬7時間を経験し、角野くんには年に一度は案内人をお願いしている。そしていつか三宗くん案内の、稲荷市場・東出町・西出町の7時間まちあるきが実現することを心待ちにしている。

 

今回紹介する、「まちのかたち/サンポノキロク」は、この2人の洗礼を受けた先の海岸線ワンダーランド。それは、地蔵尊と共存するあれやこれや、目の錯覚ではない屋根の傾き、積み重なるアクロバティックな建造物・造形物、路地の奥に突然現れるベトナム仏教のお寺、無造作に鎮座する神様たち、ハッとする・ギョッとする表記たち。

 

いとおかし、ああたのし、ここはワンダーランド。

こんにちは。森本アリといいます。塩屋という神戸の西の海辺の町で、旧グッゲンハイム邸という洋館の保存活用をしています。だいたいいつも塩屋にいるので、他の場所で知り合いに会うと「異和感あるわー」と言われたりするけど、実は時間さえあれば長田区、兵庫区の地下鉄海岸線沿線付近をひたすら散歩している。何かと縁のある地域で、こどもが兵庫の「ちびくろ保育園」に通っていることもあるし、活動を始めて15年になる音楽集団「音遊びの会」の拠点も和田岬に移って3年になる。来春でこどもの保育園通いが終わってしまうので、ついでが少なくなる前に、最近は送迎の度に兵庫~長田間の通ったことのない道を一本一本開拓中。

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