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森本アリ 1st week 『あふれだし』

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    こんにちは。森本アリといいます。塩屋という神戸の西の海辺の町で、旧グッゲンハイム邸という洋館の保存活用をしています。だいたいいつも塩屋にいるので、他の場所で知り合いに会うと「異和感あるわー」と言われたりするけど、実は時間さえあれば長田区、兵庫区の地下鉄海岸線沿線付近をひたすら散歩している。何かと縁のある地域で、こどもが兵庫の「ちびくろ保育園」に通っていることもあるし、活動を始めて15年になる音楽集団「音遊びの会」の拠点も和田岬に移って3年になる。来春でこどもの保育園通いが終わってしまうので、ついでが少なくなる前に、最近は送迎の度に兵庫~長田間の通ったことのない道を一本一本開拓中。

    長田・兵庫の下町には緑がないと言われるらしい。まあ、そうやわな、そこらじゅう灰色やわ。っておいおい、よーく見てみなさい。狭い路地にあふれんばかりに植物が、緑が、「あふれだす」様子を!

     

    街路景観や建築計画の用語では、植物や置き物など飾りや表現として路地にはみ出しているものを「表出」、自転車やバケツなど置き場に困ってはみ出てしまう場合は「あふれだし」と言うらしい。しかし、敬愛する「下町レトロに首っ丈の会」(兵庫区・長田区・南部地区ーーまさにこのサイトで取り上げられるエリアーーに今も残る下町情緒という財産に首っ丈な20代から80代の女子有志の会)が「あふれだし」言うてるのと、この「あふれだし」という言葉と植物が「あふれだす」様子に感情が「あふれだす」ので、この表現を使わせてもらいます。

     

    庭がないから柵もないし塀もない。鉢植えは家の前の路地に置く。花が咲いたら隣近所でそれを楽しむ。緑が生い茂れば夏は涼しく冬は優しい。緑以外の意外な造形物もちらほら出現する。路地全体が個性豊かな作品のようだ。そうした路地は信頼と喜びを共有する公共空間。

     

    台湾に旅行した時、気候が少し違うというだけではない、公共空間や自然と共生する概念がずっと豊かだと思った。鬱蒼と生い茂る街路樹、アパートの各ベランダから飛び出す観葉植物が羨ましかった。

     

    僕の家の前の路地にも最近、植木鉢があふれ出しました。庭木も、向かいの家の桜の木とうちのねずみもちの木が重なり合って、路地を緑で覆い始めた。強い日差しから優しい影を作る。今年の夏は少し過ごしやすそうだ。

    掲載日 : 2021.07.02

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