「今夜、シタマチで」と題しての飲み歩き企画番外編。今回まちを案内してくれたのは、神戸餃子クラブとして活動中の川瀬さんと枝川さん。餃子が好きすぎて「神戸のまちぎょうざ」という餃子ZINEを制作するお二人。長田から兵庫まで美味しい餃子が食べれるお店を紹介します。
文:枝川由佳 写真:岩本順平
ある日、岩本さん1日で13軒も行ったことあるらしいで!という情報を餃子部長づっきーがゲットしてきた。「次は1日に回れる餃子の限界に挑戦しようっていう話になってん、なんか写真も撮ってくれるらしい」というありがたい話に乗っかって、プロカメラマン岩本氏とづっきー、えだがわの3人で餃子の旅に出ることになる。
遡ること1年ほど前、岩本さんが新長田に立ち飲みで食べれるパンチある餃子を発見したという貴重情報を何の前触れもなく突然くれた。長田歴もう十何年であろう岩本さんが勢いよく教えてくれるということは、それは間違いなく楽しくなる匂いがプンプンする。もちろん我々食いつきます。
それが今回の集合場所、おおはら酒店。南北にのびる新長田のメインストリートのひとつ大正筋商店街でづっきーと合流し、お店の前へ到着すると、シャッター半分。怪しい雲行き。これが下町の隠れ家の営業スタイルかと岩本さんを待ちつつシャッターに背を向けポジティブに考えてみましたが、中にいらっしゃるお店の方に尋ねてみると定休日とのこと。がびーん。
でも今日は何てったって13軒、1軒やそこらでめげません。はじまりの1軒目のスタートをきれず、とぼとぼと歩いていると、喫茶店MILLから顔馴染みの漁師さんたちが。新長田で「海と、魚と、」という漁業のイベントに立ち上げから関わらせてもらっていたけど、現在は担当が変わりまして、その上育休中なので、道を歩けば知り合いに会うこの環境がちょっと久しぶりで、これこれ、これが神戸!と普通に世間話をはじめる岩本さんを横に、わたしはテンションが上がってしまいました。兄弟で漁師をされていて、それこそ長田に何十年も住む地元オブ地元の方、おすすめを聞くと、餃子は外で食わんなぁとのこと。漁師さんの家で食べるごはん、きっと美味しいだろうな、いつか突撃したいな、など考えつつそれでも食い下がると、「餃子亭はよう聞くな!」との情報をゲット。いってきます〜とおふたりに別れを告げいざ餃子の旅へ。
時間はまだ四時半。餃子屋さんはどこもまだだろうから、打ち合わせがてら近くの喫茶店でも入りますかと歩いていると、そういえばここに…と導かれ入ったのは隠れ家酒場泰源。本町筋商店街と六間道商店街の交点のアーケードがなくなるこの道、あとは海に向かうだけという感じするこの通りなんかいいんですよね。そこに並ぶお店の1軒、お隣には素敵居酒屋の富士もあり。
暖簾をくぐるとカウンターの店内、酢豚や麻婆豆腐など中華メニューが並ぶ中に餃子を発見!店でつくっとんやで〜と明るいお店の方!とにもかくにも餃子をお願いして、メニュー眺めながら他何にす、、と隣をみると、「え、頼んじゃう?」とづっきー。あ、悟りました。空腹と美味しそうなメニューの数々の誘惑に負けてしまうところでした。
ところで今日どうします?と岩本さん。「勝手にシタマチコウベ」と称してシタマチコウベをリスペクトして、「神戸のまちぎょうざ」vol.2に下町餃子食べ歩き日記を載せたいんですよねと我々の思惑を話すと、それならシタマチコウベの記事にしたら?とのこと。いいのですか!めちゃくちゃ嬉しい!こうして、頼まれたわけでもなく勝手にスタートした本日の食べ歩きが、公式にシタマチコウベに載せてもらえることになりました。
お待たせしました~と本日の初餃子。中身がとてもジューシーでパクパク食べちゃう手作り餃子。
ところで、わたしたち、づっきーはみんなにお酒強そうと言われているけどアルコール飲めず、わたしはというと今、辺鄙な場所に住んでおり本日車のため飲めず、ふたりでウーロン茶、カメラマン岩本さんのみお酒というシラフ飲み歩きでお届けします。他のメニューもとても気になるなとまだ名残惜しそうにメニューを眺めているのを察してか、お店のお母さんがとっても美味しい酢モツを出してくれました。集合写真も撮って、次は他のメニューもいっぱい食べにまた来ます!とご挨拶してお店をあとに。
お次は餃子亭。餃子プロのづっきーと新長田プロの岩本さんはもちろんよくご存知なのですが、わたしはテイクアウトしか食べたことなく、気になっていたので是非にと思い餃子亭。お店の名前を言えば、もう自動的に歩き出してくれる。まちを歩くときに案内人のいる心強さはとてつもないものですよね。
木のメニュー、木の壁、木のテーブル椅子が印象的な店内で、壁に貼られた餃子メニューの数々をまず眺める。品数が多い!今日何軒目標にします?と探り探り目標値から注文数を割り出す作戦。5軒ぐらいかなと誰かが言い出して、よし5軒だと丸く決まる。わたし少食なので、13軒どこいったんですかなんて野暮な質問はいたしません。梅餃子(焼き)と水餃子、あんかけ(揚げ)を頼もうと決まり、出来上がりを待つ間も、どこどこ餃子は食べたか、ここはどういう特徴かなど餃子談義をするふたりをふむふむ聞くわたし。ふたりとも詳しすぎる!
餃子はサクッと食べるにもよし、野菜もお肉も小麦も入っているので餃子でお腹を満たすのもよし。ちなみに長田民たちは2軒目、3軒目など、だいぶ夜がふける時間帯に餃子亭に行くそうな。
新長田を飛び出して、一同苅藻へ。こちらはカルモ一貫楼という餃子部長づっきーが前々から行きたかったというお店へ。ちなみに神戸市内に一貫楼と名のつくお店はたくさんあって、これを全部巡りたいというのも餃子部長の野望。(1日でまわるには車移動必須なので今のところ実現していないらしい。)
兵庫区と長田区の間である苅藻は、なかなか飲み歩こうにも範囲に入ることがなかったエリア。今回は車という武器を手にしているので、びゅんと足を伸ばすことができた。お店の手前で自転車におかもちを持ったコック姿の方とすれちがう。これぞイメージする下町。お店に入ると、想像していたよりも広い店内、奥にはソファのボックス席もあった。せっかくなので餃子だけでなく酢豚もお願いする。餃子は生姜がきりっとよく効いた、3軒目でもぱくぱく食べられる爽やか風味の餃子。この酢豚美味しかったな。餃子以外のものも一緒に頼むとそのお店のことがよりわかっていいよねとづっきー。(一軒目の麻婆豆腐頼めばよかったと思っているわたし)
話は、家の前にワンルームマンションが建つという話から、まちの話に。
神戸のまちぎょうざというタイトルで「まち餃子」とつけたのは、餃子のことはもちろん好きだけど、餃子単品、味自体をどうこうということではなくて、まちというその場所や背景を含めてそこにある餃子が好きだからなのです。美味しい不味いの二者択一ではなくて、そのお店や人、土地柄も全部含めて餃子の解像度を上げるということをキーワードにやっております。ちなみに、神戸餃子クラブは「神戸のまち餃子をみんなで楽しく食べる」が会則。だから、味覚が鋭いわけでも、食レポがちゃんとできるわけでもないのですという言い訳も合わせてしておきたかっただけです、はい。
4軒目は、さらに東に進みまして、御崎公園の東側にある点勝園。到着時間19時45分。google情報では20時までとなっていたので、いそいそと入店。まだ入れるとのことだったので、よかった〜と席に着く。「ここらへんこの時間になると誰も歩いてないんですよね〜」とお店の方。こちらは大盛りでも有名だそうで、カツカレー大は何と総重量2キロだそうな。(現在は米高騰など事情により休止中)ここでは餃子とレバニラ炒めをお願いする。
このレバニラがめちゃくちゃご飯食べたくなる美味しさで、ごはん頼もうかなと言うと、「これまで数々の食べ歩きでそうやって行き倒れる人を見てきた」と、ふたりがわたしを見るので恐れ慄いてやめておきました。続いて、餃子が目の前に。
しゃきしゃきと歯応え良く、ガツンとにんにくの効いた餃子。ここまで4軒下町の餃子を食べてきて、どれもめちゃくちゃ個性が立っているものばかりだねえという話に。三宮や元町で食べる餃子たちとはまた違う顔を持った心なしか下町っぽさのある餃子たち。
そろそろお腹もだいぶ満たされてきて、5軒目はこちらから歩いてすぐのわんまいる清水へ。歩いていると左側にノエビアスタジアムが見えて、ここにいるのかと自分の位置を把握する。すぐにわんまいる清水について、扉をあけると、人通りの少なかった通りとは打って変わって、たくさんの人で盛り上がっている。こちらは清水酒店のお隣でされている立ち飲み居酒屋。
メニューに餃子を発見し、嬉々として注文。おすすめはその日その日で仕込んでいる串カツとのことだったので、串カツもお願いする。飲めないふたりが角打ちに来てしまった。店主の方に、飲めないのにすみませんともじもじしていると、「食べてくれるだけでもありがたいし、飲めない人も来やすい店にするにはどうしたらいいんかなと考えてるんです」とありがたい言葉。
今度こそ本当に満腹なので、お店を後にします。ちなみに13軒というのはカメラマン岩本さんが1日で入れた撮影の数だったそうな。餃子は美味しく楽しく食べるのがいいので、ストイックすぎずゆるゆる5軒が今日の下町餃子にはちょうどよい数だったのでは。
帰り道、共通の知人の事務所の前を通りかかると明かりがついてたので、トントンっとノックして事務所見学に訪ねる。(常識の訪問時間はとうに超えていて、でも飲み会終わりにしては早かった)こんなことも神戸だななんて思いながら、帰路につきました。
****
神戸餃子クラブとして活動中。メインの活動は神戸の餃子を食べること。2023年9月に「神戸のまちぎょうざ」というZINEを制作。現在vol.2を絶賛制作中。今回、副部長枝川よりお送りしましたが、神戸のまちぎょうざvol.2では部長川瀬日記を掲載していますのでそちらも要チェック!「神戸のまちぎょうざ」の発行予定・取り扱い場所は神戸餃子クラブInstagramをご覧ください!
掲載日 : 2024.12.11