滞在7日目(2022年9月22日) ー ナガタナイトツアー ー
私たちが、長田師匠として慕っていたのが、滞在場所「シリイケバレー」を作った塚原さんだ。
彼は、ここに一年間住みながら空間を完成させた。(まだ完成していない?)それだけあってか「趣味は長田」というほど、長田のディープなエリアや文化のあれこれを知っていた。
ある夜、「是非長田ツアーをしてほしい」とお願いし、私たちfor Citiesの二人と塚原さんで、ナガタナイトツアーを開催した。
さっそく、「看板が面白い」と連れていってくれたのが近くの駐車場の奥。
注意喚起かと思いきや、体験の仕方を提案してくれる謎のサービス精神旺盛な看板だった。なんとなく文章の向こうに人の存在が見える看板でいいなと思った。
このあたりは高速道路を作るにあたって、かつてあった飲み屋街が一掃され、団地の一階に移ったという。
その団地にはいっているのは、長田でも老舗だというお好み焼き屋の「まるき」。
あまり歴史の感じられないプレーンな店構えになってしまったその姿を見て、かつての姿はどんなだったのだろうと想像を巡らせてみる。高速道路さえなかったら…
お腹が空いた我々は、一押しの飲み屋「富士」に連れて行ってもらう。
ここは、長田滞在の中でも何度もお世話になるくらい気に入ってしまった場所だ。
カウンター10席程度の店内に、所狭しとお惣菜が並べられ、見ながら選べるのもいい感じ。そしてどれも美味しい。
塚原さんのおすすめは「富士スペシャル」で生グレープフルーツをふんだんに絞った、フレッシュなサワーだった。
その後は、もっとディープなところに行こう。ということで「横山商店」という角打ちへ。
長田出身長田育ちのお姉様お兄様に囲まれ、賑やかな時間を過ごす。
最後は、横山商店に来ていた近所のお客さんと共に、これまたディープな「アイドル」というカラオケスナックに。
いつもはお着物を着ているというママは、今日は鮮やかなグリーンのワンピースをお召しになっていた。眩しい。
そしてカラオケの履歴がまた渋い。
長田の夜は終わらない。
石川 由佳子|一般社団法人for Cities共同代表理事
アーバニスト/エクスペリエンス・デザイナー。「自分たちの手で、都市を使いこなす」ことをモットーに、渋谷、アムステルダム、カイロなど国内外のさまざまな都市に「よそ者」として介入しながら、市民主体の小さな活動を街の中で企てていく。(株)ベネッセコーポレーション、(株)ロフトワークを経て独立。都市体験のデザインスタジオ「for Cities」を杉田真理子と共に立ち上げ。リサーチ、企画、編集、教育プログラムの開発などを都市をテーマに行う。
掲載日 : 2022.11.23