六間道3丁目商店街でレンタルスペース「r3(アールサン)」を夫婦で運営している合田三奈子さん。合田さんは4児の母として子育てをしながら、NPO法人「ママの働き方応援隊」の理事長として全国の子育て中のママを支援する活動をおこなっています。「お声がかかればいつでもどこでも行く」と、全国を駆け回る合田さんに子育てや仕事についてお話を伺いました。
文:山口葉亜奈 写真:岩本順平
毎日顔を合わせることで生まれた繋がり
私が長田に越してきたのは長男が生まれた14年前。私にとって長田は縁もゆかりもない地で、知り合いもいなかったので、毎日ベビーカーを押しながら、スーパーや公園、商店街など、町中を練り歩いていました。毎日歩いていると、出会う人も一緒で、自然と関係性ができてきて。当時はこの町に若い担い手が少なかったので、様々な頼まれ事をされるようになり、気がつくと、町の悩みを相談されるくらいに信頼関係ができていました。2015年に六間道商店街にレンタルスペース「r3」をオープンさせたのも、地域の人たちが気軽に集える場所がなかったから。今はこの町にも若い人や移住者が増えていて、そんな人たちが集まるちょっとした拠点になっています。「r3」ではこれまでたくさんのイベントをしてきましたが、実は集客を考えたことは一度もないんですよ。この場に集まった人たちから繋がりが生まれ、イベントが生まれていくので、自然と人が集まってくれています。
子育ての経験が与えてくれた自信
2012年から「ママの働き方応援隊(ママハタ)」で活動しています。きっかけは六間道商店街で「赤ちゃん募集」のチラシを受け取ったこと。ちょうどその頃、第三子の次女を産んだばかりだったので、子どもと参加しました。「ママハタ」は、子育て中のママが仕事を通して成長できる「場」を創り出すことを目的としています。ビジネスシーンでは子連れであることはデメリットだと考えられがちですが、「ママハタ」では子育て中にしかできない仕事を生み出し、引きこもりがちなママを外に連れ出すきっかけをつくっています。育児はすごくマルチタスクなことで、子育てをすると脳が進化すると言われていて。実際、私も子育てから学ぶことばかり。子育ての経験が自分の世界を広げてくれ、自信も与えてくれました。だけど、なかなか自分の可能性に気づけていないママたちが多いんです。だから、子育てによってママの能力が上がっていることが具現化できる仕組みを創りたいと思っています。
ママ目線で地域課題を解決する
最近、ママたちが地域課題を解決していくようなビジネスモデルを創ろうと考えています。ママたちは地域に腰を据えて子育てをしているので、地域の課題を一番敏感にキャッチできるポジションだと思っていて。だからこそ、ママ目線で地域を切り取ることで見えてくる課題や社会起業のかたちがきっとあるんです。「赤ちゃん先生プロジェクト」が引きこもりがちなママと社会を結びつけるソーシャルビジネスになったように、次はママ社会起業家たちのプラットフォームができたら面白くなるんじゃないかと思っています。このプロジェクトが動き出せば、もっと当たり前に子連れのママが働ける環境が整うと思うんですよね。「ママハタ」の活動で救われた私だからこそ、かたちにするお手伝いができるんじゃないかと思って、今はすごくワクワクしています。
「r3」でしかできないことをしていきたい
私にとって今重要になっているのが、「暮らし方」と「働き方」。長田に引っ越してきて知り合いもいない中から、今はたくさんのコミュニティができました。次はコミュニティの原点である「家族」をもっと深めていきたいんです。合田家のこれからの生き方、暮らし方、何気ない毎日を大事にしたいと思っています。だから日々暮らす日常を豊かにするためにも「r3」のあり方は重要だと思っていて。「r3」がオープンした頃、人が集まる場所自体がここしかなかったけど、徐々にそれぞれの専門分野で拠点やコミュニティができてきました。だからこれからは「r3」でしかできないことをしていきたいと思っています。そうなったとき、私自身の強みは子育て中のママだということ。なので、「r3」は子育て世代の人たちや妊婦さんにとっての駆け込み寺のような役割を担えたら良いんじゃないかと思っています。
繋ぐ人|NPO法人ママの働き方応援隊理事長
合田三奈子さん
4人の子育て真っ最中。第三子出産をきっかけに「赤ちゃんプロジェクト」に出会う。子どもと一緒に社会と繋がり、子どもと一緒に自分の好きを仕事にし、ワクワクできる働き方&暮らし方を等身大で実践中。2015年より六間道3丁目商店街で多世代が繋がり夢を叶える場「r3(アールサン)」を運営。2017年よりNPO法人「ママの働き方応援隊」の理事長を務める。
掲載日 : 2018.08.28