カルチア食堂 仲島義人さんにまつわる4つのこと 酒場のマスターだからこそ出会えた、和田岬の町

2014年にオープンした「カルチア食堂」。火事でスケルトンになった3階建てのビルを、小学校からの同級生である料理人の仲島義人さんと、建築士の平井陽さんが3ヶ月かけて自分たちの手で改装し、現在は店舗兼住居として使用しています。「カルチア食堂」という名前は、和田岬に残る昭和な雰囲気が伝わるよう、あえて文化という意味の「カルチャー」を昭和っぽく「カルチア」と造語したそうです。店内には、二人が描いたアートならくがきや様々な作家さんの作品が多く飾られており、名前にぴったりのレトロな雰囲気が漂っています。今回は、カルチア食堂のマスターであり同ビルの3階に住居を構える、仲島さんにお話を伺いました。

文:山口葉亜奈 写真:岩本順平


酒場から生まれるコミュニティ

酒場のマスターをしていると、いろんな年齢層とかいろんな仕事をしている、町の人たちに出会えるんですよね。住んでいる人だけじゃなくて、企業もけっこうあるから本当に客層が様々で。和田岬には11年くらい住んでますけど、ここのマスターをしだしてから町の見え方が変わりました。町の人の幅や層が見える職業やなって。カルチアって文化っていう意味なんですけど、語源は“耕す”なんですよ。いろんな人が来てくれて、お客さんから仲間になって。そのメンバーで隣の空きビルを改装したり、イベントを起こしたり、新しいことが生まれています。思い描いていたカルチアの意味と繋がってるなって思いますね。メニューもお客さんの要望で増やしたり、この店自体もお客さんによって変化していく。同じ町の店主同士も仲良くて、イベントも一緒にやっていますよ。和田岬のいくつかの店舗で街コンを開催したり。みんな飲むのが好きやから、ミーティングと称してお互いの店に飲みにいくこともしばしば。同年代の人が多くて仲が良いっていうのも、ここで店をやりはじめてから知りましたね。

町を感じる “だんじり”と“スナック”

最近の僕の中の流行りは、だんじりとスナック。お客さんに声をかけてもらって行くようになったんですけど、そこでは普段出会わない人に会えるから、店でマスターをしているときよりも、町の深い層が見えるんです。多分この仕事をしてなかったら行けてなかったな。普通に歩いていたら絶対声かけへんような強面のお兄ちゃんとかおっちゃんとか、一緒に酒飲んでみたらめっちゃ面白いし、スナックに行けば店には来ないような年配の方とおしゃべりができたり。最近は、そんなふうにつながって地元のコアな層の人も店に来てくれるようになりましたね。この店は、勢いではじめて、三宮よりゆっくりしてるやろうっていう無意識の雰囲気で選んだけど、町の深い層と関わって歴史を知ることで、なんとなく思い描いていた自分の中にあった無意識のイメージを確認できたかな。港ができて、重工業が栄えて、でもそれが下火になって空き家が生まれたから、自分たちは今ここで店をできているんだって。こういう風土のところがあっていると思ったから、この場所でお店をはじめたんだっていう無意識の確認作業。

自転車で味わう町のグラデーション

写真:白石卓也

僕、自転車で和田岬の外にでかけるのが好きなんですよね。知らない道を通って、新しいご飯屋さんを見つけたり。お店のメニューも、行くところどころで美味しいのを見つけたら真似してみたり。でも、自転車で行くからいいんですよね。自転車で走りながら町を見てたら、町の風景がちょっとずつ変わって行くのがわかるんですよ。グラデーションになっているというか。相対的に町が見れていいですよ。外に出て、帰って来るときが、一番和田岬を感じるかな。帰って来たなーって。和田岬って運河を隔てて島になっていて。だからか、独特の雰囲気があるんですよね。内向きというか、ちょっと恥ずかしがり屋な町で。地元の人は外にあんまり飲みに行かないし、ここで生まれて、就職も三菱…と和田岬から出ない人もわりと多い。お店をはじめた頃は、あまり地元を意識していなくて、地元の人たちと関わりを持つようになったのも、ここ1、2年の話なんです。だから、町を動かしたいって思いが特にあったわけではなくて、来てくれる人と楽しくイベントをしたり、だんじりとか行くようになってから、自然と和田岬の人との関わりも強くなってきましたね。

なんでもない日々が充実している

昔はイベントを企画したり、呼んでもらったり、刺激を生み出すことが楽しかったんですけど、刺激って、慣れすぎるとどんどん過激になっていくから、ちょっとしんどくなった時期があって。外へ外へエネルギーを消耗する、なんとなく雑然とした生活だった。今は和田岬で何気なく送る日々が充実しています。外にエネルギーを向けるというよりは、今は内。朝起きて、朝ごはんを作って、靴を洗って、商店街に買い物に行って、とか。地産地消をそこまで意識しているわけじゃないけど、商店街で全部揃うから、店のメニューは地元で買えるもので考えています。売っているものも、季節で変わってくるからそれにあわせてちょっとメニューを替えたり。地元のスーパーって安いし、季節感があって、しかもやってくる季節が早いんですよね。だからほとんど毎日散歩がてら商店街に行っていて。そんな感じでお店を経営して、生活をするっていう、なんでもない日々の方が今は重要になってきているかな。でもきっとまた物足りなくなって、何かしだすんでしょうね。