15年前に店舗を構えたホームセンター、アグロガーデン神戸駒ヶ林店。すぐとなりには温泉施設もあり、地元の人から親しまれています。商いの基本は地域にあるという安黒常務に、マチとお店の関わり方をたずねました。
文:東善仁 写真:島本剛士
ものづくりのマチのバックヤードになりたい
うちはね、あくまでものづくりの支援なんですよ。ホームセンターは地域のサポーター的存在でありたいんです。この辺りは飲食店が多いから、業務用の内装資材を多くそろえています。何かを長田でやりたいというときにバックヤード的に支えるという、そういうスタンスですね。若い方がカフェをやりたい、でも始めから工務店に頼んだらお金がかかりすぎるので、自分たちでDIYする、そんなときに使ってくれています。もちろん、マチのイベントにボランティア的に品物を提供することもあります。ホームセンターには提供できるものがまあまああるんですわ。資材だけじゃなくて、売場にはザリガニもいるし、お花もあるし。ザリガニ釣りや花壇づくりなどにも協力できます。そこは独自性かなと。今度改装でワークスペースも作ります。道具を貸し出すので他の量販店で買った組立家具もうちに持って来てどうぞつくってください。自宅だと音もうるさいし、場所もとるでしょ。
地元の思いに応えて掘った温泉でにぎわいづくり
店舗の隣には「あぐろの湯」という温泉施設があります。これはほんとに掘りました。800m位掘って、アルカリ具合が良い角質の取れやすい泉質の源泉を使っていて、これは地域のリクエストから生まれたんです。店舗のある駒ヶ林は長田の一番南側で国道2号線より南に何か人が集まる施設が欲しいという要望があったんです。震災後、人が減ったまちににぎわいを取り戻したいと。それでうちとしては初めての試みだったんですけど、掘りました。15年たって今では遠方からも来店されますし、地域の方が歩いて来る憩いの場にもなっていますね。それから、フットサルコートも作りました。これもね、当時は近くにコートがなかったもんですから、あれば使いたいという方がたくさんいるだろうと。やっぱりアグロの店作りのルーツは地元の声なんです。その声をもとにして地域密着型の取り組みを続けています。
盆踊りのやぐらをあちこちへ貸し出しています
まちづくりイベントも昔から多いマチで、関わる人はいろんな人が出たり入ったりしています。毎年変わっていく方がいいこともあるんです。まあ、変わりすぎるのは良くないけど、ずっとおんなじやったら発展しませんやん。そういう意味では、新しいことをやりやすいマチで、店をつくるときも最初から地域に受け入れられやすかったですね。僕らは主役やなくて支える側ですから地域に入ってできることで応援しています。「盆踊りでやぐらを出してくれませんか」と言われたこともありましたね。うちで一台つくって店の倉庫に保管しててね。夏になるとあちこちの町内会に貸し出しています。地域や自治会の予算って潤沢じゃないですから喜んでいただいてます。他にも区役所さんを通じて壁面をグリーン緑化するお手伝いをしたりね。これから都市緑化のプロジェクトを進める予定なんですが、地元の人にもご参加頂いて一緒にやりたいと思います。自分たちで植えた花だったら「大切にしよう」ってなるじゃないですか。
お互いに、顔見知り以上のおつきあいがうれしい
面白いことに、アンケートを取ってみるとお店に来る目的の一番は「しゃべりに来てる」なんです。朝来て、馴染みの店員さんに「おはよう」って声かけてしゃべってから買い物して帰るとかね。毎日店頭に立たない僕ですらよくしゃべる人が何人かいますよ。店員さんならそんな馴染みのお客さんが山ほどいてるのが駒ヶ林店の特徴ですね。やっぱり、お店の色はそこに住んでいる人で違ってくるのでそれが商いの面白さやと思いますね。商いの基本は地域なんです。また、業務用品が多い店ですから、お客様の業務のニーズを叶えるには、お客様の仕事をリスペクトしないとできません。オリジナルの作業着ブランドを作っているのもその一例で、作業着はもともとデザインを選べないものだったんですよね。格好いい作業着を着て働きたいというニーズがあるだろうな、と思ってつくり始めたらこれが好評で。うちのを着ている人が歩いていたら、すぐわかります!
アグロガーデン | ホームセンター経営者
安黒千能さん
1968年生まれ、阪神淡路大震災直後に株式会社ホームセンターアグロに入社。ホームセンター業界の最大成長期を経験し、数々の実績を重ねて、2014年に株式会社アグロワークスを設立。『カッコよく働く』を応援する「ワークウェア・ワークアイテム専門店」を経営。
掲載日 : 2018.04.27