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神戸の新しい魅力に出会うウェブマガジン

シタマチコウベ

下町くらし不動産

真野に誕生した、カフェに畑にギャラリーにシェアハウス…の地域コミュニティ拠点

2024.04.30

リノベーションされた場に伺ってリポートする不動産コラム。第21弾は、長田区の真野エリア、国道2号線沿いにある複合施設「MANO NOMA」へ。
4代にわたってこの地に暮らしてきた“地のひと”である吉田雄治さんが、23年5月にリノベーションを果たしてオープンしました。外からの訪問者はあまり多くはない住宅地の真野エリアにあって、地の人と外からの人が50/50で混ざるようなタッチポイントにしたいという吉田さんの思いを伺いました。

 

目指すは地元と外の人が集うタッチポイント

東京に拠点を持ち、コンサルティングなどの事業を展開している吉田さん。実家のある長田には年に1〜2回、戻ってくる程度だったが、そこまで地元への愛着を感じていなかったのだそう。

吉田さん:正直言ってね、僕は数年前まではあまり住みたくない街だと思ってたんです。生まれ育った場所ですけど、錆びたシャッターの下りた風景が続くグレーで暗い街って感じで。だけど、この「シタマチコウベ」とかを見ていても、めっちゃ面白いことをやってる人がたくさん出てきているし、昔から営業してるけど僕も知らないような店だとか、おばあちゃんがやってるようなスナックとかまで紹介されていて。とても驚きましたね。
これはあくまでも僕の印象ですけど、ずっと地元にいる人って結構おとなしくて内向きで、外からの人とあまり交流したがらないんですよね。いろんな地域を見てきた僕の経験からすれば、うまくいく地域の特徴って、地元の人と移ってきた人とが半々で盛り上がってるのがいいみたい。でも、長田は移ってきた人のほうが断然盛り上がっている。これではあかんなって危機感も感じてました。

というわけで、吉田さんが目指したのはずっと地元に暮らしてきた人と外から訪れる人が半々で集うような「タッチポイント」となる拠点。
よろず屋、タバコ屋、自転車修理店として代々使い続けてきたものの、しばらく使われずに倉庫化していたガレージ空間をリノベーションして、「MANO NOMA」へと生まれ変わらせた。

吉田さん:いらん物がたまっていたので、毎週帰ってきては20袋のゴミ袋を出してという作業を3年ほど続けました。ほんとに大変で(笑)。「MANONOMA」の改修は、近所で多目的スペース「r3」を運営している建築家の合田昌宏さんにお願いして、当初はそこまで具体的にイメージはできてなかったけど、建築家の発想やデザイン力にサポートを受けながら「MA=間(ま)」を整えていきました。

隣りのシャッター内は吉田さんのおかあさんがタバコ屋をまだ営業中。常連のために月1程度で開けているという。

 

「まちの駅」に畑、シェアハウスまで

多くの人が集うタッチポイントに。その目的のために「MANO NOMA」はカフェ、壁面を使ったアートギャラリー、週末限定のバー営業、軒先に設置した屋台を活用したミニショップなど、さまざまな機能を持つ多目的な場となっている。

吉田さん:「MANO NOMA」って何屋さんですか?って聞かれると困るんですけど(笑)、地域コミュニティの場やなということで考えてます。そのひとつとして、「まちの駅」というNPO地域交流センターが事務局を務める全国的なネットワークにもちゃんと登録しています。休憩、案内、交流、連携の機能を持った地域の拠点を目指すという「まちの駅」の理念はうちにもすごく合致するんだけど、広報がうまくされてなくて全然知られてないから、NPOの理事長にも何度か会いに行って、僕らが神戸で初登録ですし、もっと各地方から発信してもらうようお手伝いしますって話をしているんです。

店内に掲げられた周辺マップ。

さらに店の裏側にMANO NOMA畑、隣の建物で多国籍なシェアハウス「HANARE」までを展開。個別でいえば、近年、街なかに増えているものではあるけど、それがひとつのところに集まっているのはかなりユニークだ。

吉田さん:もともと初代から3代目まで北区の農家出身で、親父は畑に愛着があって無数の植木鉢を買い集めて老後の楽しみにしていたところで、親族みんなから「もう駐車場にせぇ」って言われてたんですけど、なんとかきれいに改装して残して。小さな区画ですし、これで商売できるとも思ってなくて、畑ならやってみたいという人がいれば参加してもらって、地域交流の場にしてもらえたらうれしいです。

MANO NOMA畑にはパセリがなっていた。

畑手前の敷石は、約100年前からこの場所に建っていた文化住宅(阪神・淡路大震災で全壊したそう)の基礎部分を再活用。右手のシャワーはいずれ近隣の海でサーフィンする日を夢見て。

左奥の2階が女性専用シェアハウス「HANARE」。こちらは建築家の今津修平さんが改修を担当。

 

再開発の及ばない下町をあえて武器にして

あらためて、「MANO NOMA」の立地する真野地区、新長田駅から徒歩約15分。新湊川を東に越え、外からの人が足を運ぶのはなかなか現実的じゃない。対して、地下鉄苅藻駅からなら徒歩5分ほど。再開発が進む新長田駅界隈に比べれば、かなり下町風情も残した苅藻や駒ヶ林からの動線を考えたいと吉田さんは言う。

吉田さん:“下町”を期待して長田に来られる人も増えていますけど、新長田駅から降りるとがっかりする人が少なくないんです。先日、旅行代理店の知人にも歩いてもらったら、「駅前、全然下町ちゃうやん!」って突っ込まれて(笑)。けど、苅藻とか兵庫運河の方から長田に入ってもらって、六間道、本町、大正筋といった商店街や丸五市場を通って、新長田駅から帰っていただく。このルートだと大震災でやられた街なんだけど、さまざまな形で復興しようとしてるんやというのもごちゃ混ぜで見てもらえるからすごくいいと思うんですよ。「MANO NOMA」のあるあたりは下町風情が濃い銭湯やお好み焼き屋も点在してますがまだまだ知られておらず、まずは足元を固めていかないといけませんけど(笑)。

いまも週末ごとに長田に戻ってきているという吉田さん。帰ってきたときには、居酒屋やスナックなど界隈の店にも飛び込みで入って、「あれ、君は何中?(出身はどこの中学?)」なんて聞かれたりしながら、地元の人の間にも顔をつないでいく地道な動きを続けている。

吉田さん:やっぱり地元意識の強い人はまだまだ多くて。だからこそ、この場所と僕がタッチポイントになることっていうのは社会的使命かなと。かっこよく言えば、ですけど(笑)。
この4月からは、うちの地域コネクターという肩書きで元気な女性が関わってくれることになって、彼女が僕よりももっとあちこち顔を出してくれると期待してるんですよ。とはいえ、彼女には「うちだけに染まる必要もないよ」とも伝えていて。そうやって、いろんなところにハシゴをかけていくような人の存在が、地域にとってすごく大きいんじゃないかなと考えています。

取材日には、外の屋台で移動花屋さんとして「レチシル」が営業中だった。この屋台を活用したい人も募集中。

地元の人からは「仏花はないの?」と聞かれたりするそうだが、むしろ、これまでこの街になかった花の風景が新鮮。「レチシル」は月1程度のペースで出店中。

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