8月24日、新長田のコワーキングスペースヨンバンカンニカイにて「KOBE MEMEキックオフ説明会」を実施いたしました。
KOBE MEMEは神戸の下町を舞台に新しいコミュニティと事業をつくる2カ年プロジェクト。今回は参加を検討する学生、クリエイター、地域の方々に向けて、KOBE MEMEのプロジェクト説明、またゲストをお招きし、他地域で実施されている事例から意見交換を行いました。
乾杯からはじまった異例の説明会。
平日の夜にも関わらず、約30名の幅広い世代の方々が参加くださり、和やかに進行していきました。
KOBE MEME(コウベミーム)プロジェクト概要説明
導入では、プロデューサーの岩本順平さんがKOBE MEMEのプロジェクト概要を説明しました。KOBE MEMEの舞台である神戸市長田区南部・兵庫区南部は、神戸のものづくりを支えてきた小さな工場や長屋があつまる下町エリアです。下町ならではの人情溢れる空気感が残っており、「おしゃれなまち神戸」とは一味異なる魅力を持っています。しかしながら、神戸市の中でも高齢化率や空き家空き地率が非常に高く、古い家屋が並んだ密集市街地として防災面でも不安をもつなど、様々な課題を抱えています。今年度はそのような地域のもつ魅力や課題を、町の歴史や風土など文化的背景を学ぶレクチャープログラムを通して掘り起こし、この地域に根ざした事業プラン、プロジェクトを構想していきます。
他地域の事例紹介
ディレクターの影山裕樹さんは、全国各地で発行されるフリーペーパー、本、雑誌などのローカルメディアに精通する編集者で、自身も地域の中で新たなプロジェクトを立ち上げています。最近では”CIRCULATION KYOTO”や”GIFUMEME”のディレクションを行なっています。“CIRCULATION KYOTO”は2017年から始まり、京都市内の5つのエリアごとに、ぞれぞれの地域らしいローカルメディアを1年かけて構想・発表するプロジェクト。学生や社会人など約40名の参加者が、自主的なリサーチを重ね、各地域にふさわしい、紙やウェブにとらわれないメディアを発表。2018年度はその発表成果を引き継ぎ、各エリアで舞台作品を上演するプロジェクトを展開しています。(CIRCULATIONKYOTO)
MEMEシリーズ第1弾”GIFU MEME”は岐阜県恵那市を舞台に2018年8月にスタート。3つの活動エリアに分かれ、2ヶ月間のワークショップやリサーチを経て、「地域×クリエイティブ」の事業プランを構想し、公開プレゼンテーションを行います。(GIFUMEME)
影山さんはこれらのプロジェクトを経て、改めて“地域らしさ”の解像度を上げる必要性を感じたそう。文化的遺伝子を意味する”MEME“という言葉をタイトルにしたのは地域の中で長年培われてきた手仕事や目に見えない慣習などの”地域らしさ”を大事にしていきたいという想いが込められています。
ゲストによる他地域の事例発表&ディスカッション
地域でクリエイティブな活動をしているやまぐちくにこさんと法幸勇一さんをゲストに、事例紹介を兼ねた自己紹介をしていただき、プロジェクトメンバーと共に意見交換を行いました。
淡路島を耕す女 やまぐちくにこさん
やまぐちくにこさんは、淡路島で生まれ育ち、大嫌いだった淡路島を自分が楽しめるフィールドにするためアートという切り口から淡路島の魅力を掘り起こし、島に根付いた様々なプロジェクトを手がけています。名刺に自ら書かれた肩書き“淡路島を耕す女”として、新しいことにチャレンジする土壌を島の中につくりたい!とクリエイティブな力を信じ、新たな価値の創出に奮闘しています。淡路島の雇用創出を図るプロジェクト「淡路はたらくカタチ研究島」では、島内外のクリエイターと共に、淡路島ならではの価値を見直し、再発見し、島の生業にフォーカスを当て、観光と食をテーマに多様なセミナーやツアーの開催、島の豊かな地域資源を活かした事業の起業や商品開発をサポート。現在もプロジェクト参加者らが出資して設立した「ハタラボ島協同組合」で研修や人材採用などの事業を継続しておこなっています。
世界一周ブログ旅を敢行した 法幸勇一さん
法幸勇一さんは、2018年より学生のNPO活動への参画を支援する神戸ソーシャルキャンパスのコーディネーターとして神戸を拠点に活動しています。そのキャリアは異色で、世界一周講演家、コーチ、ブロガーとしても活動するパラレルワーカーです。メーカーでの6年半の勤務を経て、2016年に世界で活躍する日本人をインタビューする旅ブロガーとして世界一周を敢行しました。その旅中訪れたリオのスラム街ファベーラは、旅行者が絶対に行ってはいけないなどネガティブな要素で有名でしたが、オランダ人アーティストが街中をキャンパスに巨大壁画プロジェクトを立ち上げたことで観光地として有名になった街。このプロジェクトでは地域住民を雇用し、壁画を描いてもらうことで地域貢献と生業ということをミックスすることで、住民のシビックプライドを高めることができたそうです。このような海外での経験を生かし、神戸の多国籍な面を発信していくプロジェクトを立ち上げようとしています。
質疑応答
最後に来場してくださった方々と質疑応答をおこないました。
来場者:企業において、プロジェクトの評価は目標を達成したか、という点に基づいていますが、KOBE MEMEのゴールはどこに設定していますか?
岩本:KOBE MEMEはエリアごとにその地域らしい事業プランを構想、発表してもらうことがゴールですが、裏目標として、空き地や空き屋などの利活用プランなど地域課題を解決する事業が出ることを期待しています。発表された事業プランは2019年以降、ディレクターやメンターにも引き続き協力いただいて事業化を目指し、下町芸術祭2019とも連携を図っていきたいと思っています。事業化する際に必要な資源については、僕たちだけでなく地域の既存事業者や金融機関と連携しながらフォローできると考えていまして、もしかすると既存事業者の事業に組み込んでしまうことも最終的にアリかと。それくらい現実的かつ、斬新なプロジェクトが生まれることを期待しています。
KOBE MEMEのスタートに先がけ、様々な事例紹介やディスカッションから、地域らしさをいかに掘り起こすのか、その際の客観的視点の重要性など、地域で事業を起こす際の鍵となる要素が見えたように思います。また、多角的な視点で意見交換をすることの大事さを感じる2時間でした。説明会後は新長田のディープスポット丸五市場の中華料理屋「めいりん」にて懇親会が開かれました。たくさんの方が参加くださり、お酒を交えた楽しい場となりました。
掲載日 : 2018.09.02