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10/8 下町芸術大学 服部滋樹編「瀬戸内経済文化圏という新たな概念とその可能性」

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    10月8日、デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)にて第5回目の下町芸術大学を開講しました。
    今回はgrafの代表である服部滋樹さんが講師を務めてくださいました。テーマは「瀬戸内経済文化圏という新たな概念とその可能性」。ゲストスピーカーには、神戸R不動産から小泉寛明さん、神戸市クリエイティブディレクターの天宅正さん、平野拓也さん、神戸市都市型創造産業統括プロデューサーの藤野秀敏さんが登壇してくださいました。今回はディスカッション形式で、瀬戸内経済文化圏について考えていきました。お酒も交え、終始明るい雰囲気で、議論も盛り上がりました。

    レポート:高木晴香(神戸大学インターン)

    「瀬戸内経済文化圏」とは

    今回のディスカッションの主なテーマとなった「瀬戸内経済文化圏」。これは近年、各地で活動するクリエイターやアーティストが集まり、瀬戸内各地の資源や魅力を発信する新たな繋がりを構築していこうとする取り組みです。

    瀬戸内は温暖な気候のため、ゆったりとした雰囲気が漂っています。さらに資源も豊富に手に入るため、モノづくりなどクリエイティブな活動にうってつけの場所だと言えます。瀬戸内にある11の県が、各県10個モノを作るだけでも110個の新しいモノを生み出せてしまいます。さらに、瀬戸内のある場所で生み出された野菜や木材などが、瀬戸内の他の場所で商品になったり、それを宣伝する媒体をつくるといった瀬戸内の各地が関係し合うことで、それぞれの特色を生かしたモノ作りもできるかもしれません。瀬戸内は、新しいものを生み出せる可能性に満ちているということがわかりました。

     

    地方都市で生きるということ

    瀬戸内、と聞くと日本の中心からは外れた場所というイメージを持つ方が多いかもしれません。地方には仕事がなく、つまらない、という意見もよく耳にします。しかし、だからこそ地方では新たな仕事を生み出す楽しみがあるのです。生きるために自分たちでブランドを作り、運営していくこと。それこそが瀬戸内で仕事をすることの魅力です。しかし、どれだけ優秀なクリエイターやデザイナーが集まっても、顧客がいなければ市場は成り立ちません。そのような負の環境をどう乗り越えるかが、瀬戸内エリアだけでなく、地方都市で生き抜くために必要なのだとわかりました。

    瀬戸内エリアにおける観光と経済

    地域経済を語るうえで欠かせないのが「観光」です。今回のディスカッションでは瀬戸内エリアにおける観光、その中でも神戸の観光についての話題で盛り上がりました。神戸は有名で大きな都市だけれど、意外と見るところがない、地域の人でさえおすすめできる場所があまりない、という印象を持たれています。そのような課題に対してインバウンドという視点から考えました。実は、海外から来ている観光客の方が神戸の魅力を知っていて、上手に神戸を楽しんでいるそうです。その際に神戸として注目されるのは自然で、例えば、神戸市北区で試行的にされているアグリツーリズムの企画では、サイクリングを楽しみに来た方が、農業と宿泊ということをテーマに農村地域を訪れています。こういった状況を逆手にとって、その

    楽しみ方を広めていくことが今後神戸の観光を活性化させていくヒントになるのではという意見もありました。神戸の魅力をアピールするにあたり、地域の人から見た魅力だけではなく、外から見た魅力も大切だということを感じました。
    また、神戸は横のつながりは多いですが、海から山にかけての縦のつながりが希薄であるという問題も話題になりました。神戸を横向きに巡るのではなく、海と山を生かした縦方向での神戸の楽しみ方も今後の新たな観光資源となるかもしれません。
    さらに、瀬戸内エリアの観光において、神戸が担う役割も重要になってきます。神戸は瀬戸内の一部であるのと同時に、大阪や京都などの大きな都市とも隣り合わせになっている地域です。これを生かして、神戸は瀬戸内へのゲートシティとなり、なおかつ瀬戸内の中心地になるという役割を担うことができるかもしれません。

    質疑応答

    最後に、来場くださった方々と質疑応答を行いました。

    来場者:神戸はヨコの繋がりは強いがタテの繋がりは弱いというお話がありましたが、どういうところに注目したら、神戸の中心となるところが見えてくるのでしょうか?
    服部:神戸の中心となるものを発見することは難しいです。しかし、神戸の輪郭を発見するのはもっと難しいです。なぜなら輪郭は外に出てみないとわからないからです。そして今まさに神戸は輪郭が無い状態にあります。そこで、新たな輪郭を生み出すことで神戸の中心が見えてくると考えています。

    来場者:では、輪郭のハッキリしている地域とはどこでしょうか?
    服部:うどん県でおなじみの香川県や大分県、愛媛県は比較的輪郭がはっきりしていると思います。香川県というとうどん、大分県だと温泉を思い浮かべますよね。そのような象徴性が高いものがある場所は輪郭がハッキリしています。ここで、神戸の輪郭を作ろうとすると、レイヤーが重要になってくると考えます。例えば、先ほどのタテとヨコのつながりのレイヤーや、神戸の中心性と対になる農業や自然、またはサブカルチャーのレイヤーです。今までのこれらのつながりを一度壊して、新たな組み合わせを作ることで新しいジャンルが生まれるのではないかと考えています。

    まとめ

    今回の下町芸術大学は、瀬戸内経済文化圏を中心に、神戸という街の在り方を考え直すきっかけとなりました。京阪神としての神戸だけではなく、瀬戸内の一部としての神戸を考えることは、新鮮で興味深いものでした。クリエイターやアーティストが集まり始めているという好条件を生かして、瀬戸内エリア全体で成長するために、瀬戸内の経済や文化で新たな枠組みを作って活性化させていくことが必要だということを感じました。

    掲載日 : 2018.12.08

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