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2020.06.26

角野史和さんが選んだ3冊

下町選書、第8弾にご登場いただいたのは、一級建築士で、まちづくりコンサルタントの角野史和さん。長田区久保町に事務所「こと・デザイン」を構え、様々な視点からまちづくりに取り組まれています。家にいながら旅に出るヒントや、町の表情を読み取る手助けになる本など、まち歩き好きにはたまらない3冊の紹介が届きました。

「地球のすべて」に会いに行く

『プロムナード世界史』

編著者:浜島書店編集部

出版社:株式会社浜島書店

STAYHOMEの楽しみとして、妄想旅をおすすめしたい。かくいう私は、子どもの頃から妄想旅が大好きで、地図帳を開いては穴が開くまで覗きいり、そこに広がる世界各地全国津々浦々のまちの情景を存分に味わってきた。そんな私が最も手近の棚においている旅のパスポートこそ『プロムナード世界史』なのだ。これは世界史の副読本。正規の(つまらない)教科書と併用し、イラストや写真、コラムで想像力を補うものだ。「地図好きなのに歴史の本?」とお思いか。いえいえこの本は「ほぼ地図」なのだ。ほぼ全ページに地図が掲載され、世界の土地ごとにその時々の隣国関係、民族・宗教・政治・文化・産業・最新時事などあらゆる情景を微細に映し出している。もはや「地球のすべて」が描かれている。見事としか言いようがなく高校時代に使っていたものを未だに手元においては、度々時空の旅に出かけている。

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「神眼」を手に入れろ

『考現学入門』

著者:今和次郎 編者:藤森照信

出版社:筑摩書房(ちくま文庫)

私は何度も同じ道を歩き新たな発見をするのが好きだ。しかし、ありふれた風景ほど盲目になり、意識しないと眼前にその姿が現れてこない。まちの表情を読み取るにはそれなりの鍛錬が必要なのだ。その手がかりが「考現学」にあり、私だけでなく路上にとりつかれた(失礼)多くの諸先輩方が参照されてきた。「考現学」は大正時代に今和次郎先生とその仲間によって生み出され、「考古学」が古物に対してやるように、現在の都市風俗を観察・記録する方法論であり学問だ。ありのままの目前を観察し記すことが大事で余計な心情は無用だ。この本にはその時代に採集された、通行人の頭髪、服の模様、下駄の形・色だったり、食堂の茶碗の欠け具合、下宿学生の全持ち物、自殺場所分布など、あらゆる現前の記録がスケッチで残されている。そんな微細な記録を見返しては、あらためて同じ道を確かめるのだ。

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「もぐり」と呼ばれたくなくて

『銭湯帰りに、お好み焼き〜震災のまちから食のまちへ』

著者:神戸ながたTMO

出版社:アスク

このサイトの舞台は兵庫区南部〜長田区南部あたりの下町エリアだ。私はその中の「新長田界隈」で曲がりなりにも、まちづくりに関わる仕事をしているので、もちろんこの街のことを知っておく必要があるし、「もぐり」だと思われてはイケナイ。。そうなるとこの街で育った人の肌感覚が伝わってくる資料がとても頼りになるのだ。この本はすごい。始まって12ページほどで新長田の歴史から下町生活のたしなみ方を一気に浴びせられる。駄菓子屋、買い食い、銭湯で覚えたマミーの味、その後の夜風と延長戦(お好み焼き)など、ナマの暮らしぶりが伝わり、それだけで新長田で育ってきた気にもなれるのだ。そこからじわじわとソースの話やお店別お好み焼き攻略法、禁断のテールスープ二大巨塔の徹底比較までおこなっていく。書きながらお腹が減ってきた。すぐに新長田に来られない方はこの本でお腹をすかせて準備をしておいてください。

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図らずも3つの本はみな「そのまちを知る」ことが共通テーマとなっていた。あるまちを多角的に知ることは、単に知的好奇心を満足させるだけでなく、そのまちへの帰属感を高めていくプロセスにもなる。例えば、ふとした会話の中で「あそこの顔のでかい黒い犬がおる角を右に曲がってな、」、「ああ、あそこな」となると、なんだかその町の一員になった気がしてくる。そして、そういった帰属感はまちに関わる原動力となる。妄想し、目を見開き、耳を傾け、私の町にしていくのだ。

 

一級建築士事務所 こと・デザイン|一級建築士・まちづくりコンサルタント

角野史和さん

兵庫県加古川市出身。大学卒業後の2002年から、高校時代を過ごした神戸市で暮らし始める。設計事務所・まちづくり会社での勤務を経て2016年に独立。神戸市長田区の新長田エリアに事務所を構え、「つっかけで行ける距離感で、とにかく顔を付き合わせる」をモットーに、自治会単位からのまちづくり支援を行う。

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