第7弾で本をご紹介いただくのは、産業遺産写真家の前畑温子さん。「NPO法人J-heritage」にて、戦略企画室室長としてツアーの企画を担当し、産業遺産の魅力を発信しています。また、全国を探検したエッセイ『女子的産業遺産探検』や、その可愛さを伝えるガイドブック『ぐるっと探検★産業遺産』を手掛けられています。1歳の娘さんを子育て中の前畑さんから、思い出の詰まった3冊の紹介です。
本はいろんな世界の入り口
『ホテルカクタス』
著者:江國香織
出版社:集英社(集英社文庫)
この本との出会いは短大の頃。
ゼミの時間、先生の机の上に置いてあったこの本が気になって見ていると「これ読んでみる?ゼミのことやらんでいいから今から読んでみ〜」と、なんと授業中に読む事に。それまであまり本を読んでいなかった私にとって、この本は衝撃的だった。
登場人物が「帽子」「きゅうり」「数字の2」なのだ。
今まで読んだことのないジャンルの本だったが、独特な世界観が心地よく、あっという間に読み終えた。
本を読むといろんな世界に旅できるんだなと、知るきっかけとなった。もっといろんな話を読んでみたい。この日をきっかけに本が好きになった。
みんなおばけが好きになる絵本
『ねないこだれだ』
著者:せな けいこ(さく・え)
出版社:福音館書店
保育士一年目の時に出会った絵本。
子どもたちにとって、おばけは怖い存在のはずなのにこの絵本は絶大な人気だった。
おばけが出てくるページをめくる瞬間、はっと息を飲む子どもたち。
一瞬顔が強張るも、読み終わるとどこかほっとしたような表情。
最後まで釘付けで見ている子が多かった印象がある。
ちょっぴり怖い内容なのに、みんながこの本を好きなのは1つ1つの絵が貼り絵でできていて、おばけの表情に温かみがあるからだろうか。
保育士時代の私にとって思い出の絵本。いつか子どもが出来たら一緒に読もうと購入した。今ではその本が娘の一番のお気に入りになっている。
アニメとは違ったおもしろさが盛り沢山
『ちびまる子ちゃん』
著者:さくらももこ
出版社:集英社
小学生の頃、近所には古本屋さんが何軒かあった。
漫画が好きで、学校帰りや休みの日になると、友達と一緒によく通ったものだ。
お小遣いを握りしめ、初めて買った漫画がちびまる子ちゃんだった。
他にもいろんな漫画があったが、今思うとこの本を選んだのは面白かったのはもちろんだが、まるちゃんの自分の感情を素直に出せるところに憧れがあったのかもしれない。お小遣いがたまるたびに、一冊ずつ買っていった。
一冊に様々なストーリーが詰まっていて、面白いもの以外にも家族愛に溢れて思わず泣いてしまうものも。
大人になって久しぶりに読んでみたが、あの頃とはまた違った目線で読むことができ楽しめた。子どもから大人まで楽しめるおすすめの漫画だ。
自粛生活も1ヶ月が過ぎ、1歳の娘と旦那との引き籠り生活も慣れてきた。
娘はどんなおもちゃよりも絵本が好きなので、毎日たくさんの絵本を一緒に読んでいる。
私も気に入った本は何度か読み返すこともあるが、娘は一冊の本を連続10回読むことも多々。言葉も絵本から覚えることも多く、本が娘の生活の一部となっている。
もちろん私が読み聞かせをするのだが、ページをめくるたびに目をキラキラさせ、何回読んでも常に新しい発見があるようだ。
なかなか外に出られない今だからこそ、娘と一緒に絵本の世界を思う存分楽しんでいる。
産業遺産写真家
前畑温子さん
1984年神戸市生まれ。雑貨屋さんで偶然手にしたトイカメラをきっかけに写真の世界に足を踏み入れ、近年はカメラと一緒に日本中の産業遺産を制覇するべく旅を重ねている。産業遺産を旅・記録・活用するNPO法人J-heritageの戦略企画室室長としてツアーの企画を担当。著書に『女子的産業遺産探検』(創元社)、『ぐるっと探検★産業遺産』(神戸新聞総合出版センター)がある。
掲載日 : 2020.06.19