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神戸の新しい魅力に出会うウェブマガジン

シタマチコウベ

下町日記

上園瑠佳

九月十日(土)

2022.10.11

屋上に、ときどきのぼっては必ず降りる。
朝はいつも、夜がやりきれなくなったように光をこぼしてしまう。朝がいちばんすき。

まぶしい。ひかり。隣のマンションは友だちの元奥さんと子どもが住む家。その奥には友達の部屋があるマンション。どちらも明かりはついていない。ノエビアドーム。ほんとうは、ノエビアスタジアムっていうんだって。ドームのほうがいいのに。目線の下にある道路には、ついでみたいに車が流れる。風も吹かない。ゴム生地の地面。白々しくまっすぐ立つバス停が見下ろせる。朝の4時か5時。東京はもう肌寒いらしい。神戸はまだ、夏のままだよ。目を細めて、慎重に階段を降りて部屋にもどる。

東京から神戸の和田岬に引っ越して3ヶ月が経つ。

和田岬の最初の印象は、やたらと空が広いということだった。

今日は休日だ。月土休みの仕事、13時が始業だが休みの日はやたらとはやく目覚める。やることもなく、部屋に戻って風呂に湯をためて浸かりながら本を読む。
東京にいるときは湯船がある部屋になんかなかなか住めなかったから、それはなぜかというと、貧乏だったから、いまも貧乏なんだけど、東京に住んでた家賃と同じ価格で広くて綺麗な風呂場がある部屋に住めているから(東京にいるときはシャワールームしかなかった)、だから、やたらと風呂に入ってしまう。正直、風呂付きの部屋というよりも、部屋付きの風呂だと思うほど長湯をしてしまう。

登場人物

上園瑠佳|派遣社員

東京都大田区出身。2021年3月旅行で来た際に神戸に一目惚れをし、2022年6月に転居。憧れの神戸市民デビューを果たす。現在はスーパーの店員に派遣社員として従事している。レジを打つのが速い。レジを打つ時間が来ることを心の中で「ゾーンに入る」と呼んでいる。本とお酒と散歩と音楽と好きな人たちに会うために働いている。それ以上でも以下でもない。
note: https://note.com/pekezooono

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