《2月紹介》
下町日和第6弾はイラストレーターのワタナベランドさん。
1999年に美術学校を卒業して以来、ツールにこだわらず何かを作り続けています。意図していない美しさを見つけるのが好き。何かと何かの合間にある言葉にできないものを実現したいと思っています。質感フェチであり、根っからのお酒好き。
母が、合同庁舎を見たい!というので案内した。
道中、「新長田にあんなオシャレな建物って!なぁ!?」と言ってくる母に少々困惑する娘。
確かに、1階はガラス張りだし、全体的にシュッとしているし、合同庁舎のフォントなんて大好きなフォントなんである。
庁舎に入って、わたしはずっと、たくさん並んでいたチラシやパンフレットを手に取っては見ていたけれど、母は、画面が移り変わる掲示板的なものを写真に収めていて、それをわたしに見せてくれた。
そこには、『シタマチコウベ』という文字と写真があった。
母が、この『下町日和』にわたしが携わったことをとても喜んでくれていることが、よくわかった。
とにかくはしゃぐ母。
ここは『ふたば学舎』で、母の母校だった二葉小学校跡。
祖父は50代後半まで小学校教諭をしていて、昔この学校にも勤めていたことがある。
中に入ると、学校特有の匂い・・・油引きの匂いなのだと思うけれど、懐かしさにクラクラする。
今はいろんな習い事やイベントをしているようで、入口を入った壁にはそれに関連するチラシやパンフレット。
子供から高齢の方まで、さまざまな年齢層が楽しめるものがたくさんあって、わたしが〇歳になったらこれに行きたいなぁ、〇歳だったらこれもできるなぁ、などと考えるだけでも楽しい、壁の一面だった。
そして、足早にあっちこっち歩き回る母が、まるで小学2年生くらいの少女に見えた。
誰にも子供時代があって、思い出を話すときにはその時代に戻るのだなぁ。
そしてこは、アスタくにづかの地下にあるお豆腐屋さん。
震災前までは、曽祖父がしていた渡辺たばこ店のすぐ近くに”モリくん”の豆腐屋さんがあったのだ。
2代目は、母の同級生である。
最初は大きな方の守食品店さんで買い物をして(多分3代目が接客してくれた)、次にこの白い暖簾がかかっているお店の前に来た時に、母が何度も奥を覗きこんだのは、いるはずだろう同級生に声をかけたかったのだろう。
なんとも、母に根負けしたかのように、内容がいつのまにか母の思い出の地巡りのようになってしまった。
ご縁なんて、そんなもんである。
わたしが十年後二十年後、三十年後?
新長田で手を振っていたらいつでもお相手しくておくれ。
お酒であればいつでも受けて立つんでのぉ~
《20年後のわたしより、愛をこめて。》
終わり。
掲載日 : 2020.02.28