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神戸の新しい魅力に出会うウェブマガジン

シタマチコウベ

週刊下町日和

ワタナベランド 1st week

2020.02.07

《2月紹介》
下町日和第6弾はイラストレーターのワタナベランドさん。
1999年に美術学校を卒業して以来、ツールにこだわらず何かを作り続けています。意図していない美しさを見つけるのが好き。何かと何かの合間にある言葉にできないものを実現したいと思っています。質感フェチであり、根っからのお酒好き。

 

この下町日和のお話を頂いてから数日。

スーパーで買ってパックに入ったままのお刺身をチューハイ片手につついていると、TVからクリスマスソングが流れてきた。
もうそんな季節なのか―と思った途端、既視感のような感覚に陥り、かつてわたしには1人暮らしをしている祖母の家に通っていた時期があって、その家でおつまみをつついていたそのときの風景が、目の前の景色と重なった。

よく覚えている風景がある。
大正筋の入口が左手に見える、2号線の夜の歩道。

納品の帰りであったり、友だちと飲んだ帰りであったり、何かと外出先から帰るときがほとんどで、祖母に電話1本かけては、わたしはたいていワイン1本とおつまみを買って、祖母の家によく通っていた。

祖母は、祖父とともに仮設住宅での生活を終えてそのマンションに住んでいたけれど、数年後に祖父が亡くなって、それからは1人で住んでいた。

 

駅を降り、広場を通り過ぎ、なんとなく商店街を通らずに、2号線まで歩く。
向こう側に見える神戸飯店の看板。
それとは反対側の建物が祖母の住むマンションだった。

若くて中途半端で、混沌としていた20代後半。
祖母は、1人暮らしをしていたわたしにとって都合のいい友達のような存在だったのかもしれない。
その時わたしは25歳、祖母は68歳だった。

そういえばあの頃1年ほど、わたしも長田区に住んでいたんだっけ。
15年以上前のお話。

 

《2月紹介》 下町日和第6弾はイラストレーターのワタナベランドさん。 1999年に美術学校を卒業して以来、ツールにこだわらず制作活動をしています。意図していない美しさを見つけるのが好き。何かと何かの合間にある言葉にできないものを実現したいと思っています。質感フェチであり、根っからのお酒好き。

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