第9弾は、前回と同じく新長田を舞台に飲み歩き。ご夫婦で営むカジュアルイタリアン、お母さんと娘さんで切り盛りする家庭料理屋、地元に愛される笑顔が素敵なお母さんの餃子屋さんを巡り、銭湯で〆ました。今回のはしご酒人は、三宮でカフェ&バー「エンタス」を営む上田和良さん。お客さんと距離が近いお店が好きな上田さんが巡った、思わずほっこりしてしまう素敵な空間をお届けします。
文:上田和良 写真:岩本順平
今日はどんな日になるのだろう。
r3(アールサン)の合田さんからお声かけいただき、今夜は下町はしご酒。
新長田で飲むことになっている。
今年にはいって、よくはしご酒をしてる。
いや、むしろ今年になって初めてはしご酒を始めた。
ボクは三宮の高架下でカフェバーを営んでいる。
縁を足すから、エンタスと名付けたお店。
小さいながらもそんな想いをもって日々お店にたっている。
自分でお店をしているとなかなかおやすみをとれないもので、
飲みに出歩く機会は実は案外少なかったりする。
それに、そもそもボクはお酒が呑めない。笑
呑めない店主が飲み屋を10年以上やってきたわけだが、お店はおもしろい。
人はおもしろい。ひとが交わる場、特にお酒のある空間はとてもおもしろい。
じょじょにほどけていくあの時間がとても好きだ。
前振りが長くなってしまった。
本題にはいろう。
ある日、合田さんに下町ではしご酒をしませんか?とお声かけいただいたが、
もちろん断る理由がない。笑
夏の気配がする月曜日の夜6時、JR 新長田駅に到着。
最近訪れることが増えた新長田だが、夜ははじめてかもしれない。街は昼と夜、その表情を変える。なぜだか少しばかり緊張感がはしる。知らない街に来たみたいだ。
さぁ、今日はどんな素敵な一日になるんだろう。
今日の目的ははしご酒。
胸をときめかせ、待ち合わせ場所に向かう。
今夜案内してくれるというスタッフのはあなさんとははじめまして。
では、さっそくと案内された一軒目はマイソムリエ。
好きなワインをチョイスして買うこともできるし、その場でグラスでも楽しめる場所だそうな。
でも、あいてなかった。笑
そこはそこ。
ふらっと向かいのお店に入るとする。
はしご酒のいいところは、こんな気兼ねのないところだ。
そして本日のホントの一軒目。
ご夫婦でされているカジュアルイタリアン。
『IL NESSO(イルネッソ)』
イタリア語でつながりを意味するイルネッソ。
店内は平日の夕方からほぼ満席。
カウンターには男性ひとり客。
テーブルには女性ふたり客。
他テーブルは年配の団体さんが賑やかに食卓を囲んでいる。
隣席の女性から、
ここは美味しいわよ。
週3は来ちゃう。
ひとりでも入りやすいのよ。
お店のスタッフさんより先にお客さんにおすすめされる。笑
まちがいなく、いい店だ。
具だくさんの前菜8種盛りと
おすすめのスペアリブをいただく。
うん、美味しい!!
ワインはオーガニックを揃えてるのも魅力的だが
スタートは弱めのカンパリソーダで。
(もとは呑めなかったが、弱めだと楽しめるようになりました)
さて、今夜は何処にはしご酒?
決まっているようで決まっていない。
どんなとこに行きたいですか?
そうだな。やっぱりこのお店さんのようにお客さんと距離が近い店がボクは好きなようです。はしご酒をするなら個人店。店主さんと話せなくてもいい。ひととなりを味わえるほどよい距離感のお店。ふだんついつい行ってしまうお店。そんなお店に行けたら嬉しい。
あっ、ならこの近くに、、
次が決まった。
てくてく徒歩3分。
お次はカメラマン岩本さんのふだん使いのお店に案内していただく。
二軒目おじゃまします。
『ごはんや 千(せん)』
外観はキレイだが、看板が歴史を感じさせる。
自身も神戸出身なので経験はしているが
長田は特に震災のダメージがおおきかったエリア。
大正筋やアーケードは立派で今でこそ外観がきれいだけど、
のれんをくぐればまだまだ下町の風情が感じられる。
『ごはんや 千』さんは、
お母さんと娘さんふたりで切り盛りしてる親子店でした。
カウンターには美味しそうなおばんざいが所狭しと並ぶ。
市場でいいの手にはいったから食べてね。
カツオのタタキはニンニクのせて大葉で包んで食べるのよ。
やわらかく炊けてたらええねやけど。
おおぶりのタコは口でほどける。
そして、ずいきと厚揚げ、、
あっこれ薄揚げやったわ。嘘ついた。笑
オススメの日本酒を注文したら
それもうないねん。笑
お客さんからいただいたから、これも食べとき。
しゃくしゃくと白く輝くとうもろこしに手がとまらない。
これが下町。さらっとはいる会話が小気味いい。
あぁ美味しかった。ついつい長居してしまう。
お腹も心も満たされ、お会計を済ませた。
なのに中華春雨が気になってしまう。笑
だから、また今度来るね。
そう言って出ようとしたら、そんなんいま食べとき。サービスしていただきました。
昼夜何度も足を運ばれるのも納得のお店です。
お腹はすでにいっぱい、ほろ酔い加減もいい感じ。
でも終電にはまだ余裕がありますね。
なら、あともう一軒!!
このフレーズ、はしご酒の醍醐味ですね。笑
たどりついた三軒目は『餃子亭』
長田の住人は最後はここに辿りつくといわれる餃子屋さん。
深夜3時までやってくれてるのは確かにありがたい。
次から次へとお客さんがやってくる。
定番の餃子はもちろんおいしい。
でもこちらに来たら『芽ぎょうざ』を是非食べてほしいな。
にんにくの芽の食感がたまらない三角形の餃子。
ちなみにオーダーはなかなか通らない。笑
笑顔がとても素敵なお母さん。
そんなゆるさが許されてるお店。
あんな風に愛されてる空間は素敵だと思う。
久しぶりにラムネをのんだ。
締めは熱々のごま団子。
口がほくほく、湯気がもれる。
夜中の甘味はなんであんなに美味しく感じるのか?
でも、さすがにこれ以上は入らない。
のんで、たべて
いろいろ語り合いながら時間は過ぎてく。
最後はむかいの萬歳湯
でひとっ風呂
新長田には銭湯がまだたくさん残ってる。
熱めのお湯と水風呂で一気に目がさめる。
ちなみに、ここの電気風呂は有名らしく
腰が砕けるほど痺れます。笑
あっ終電、、
ふだん三宮で完結してるボクの暮らし。
終電を気にしたのは何年ぶりだろう?
ついつい終電までのんでしまう時間が心地いい。
たまには違う土地でぶらり飲み歩きも楽しい。
世の中にたくさんのお店さんがある。
ひとを味わう 暮らしを味わう
ひとりでふらっともいい。
誰かを誘っても楽しい。
店主さんに会いにいくもよし。
誰と過ごすか
今夜、お酒を下町で。
ボクはとても素敵な時間を過ごせました。
お店の数だけ、素敵な時間がある。
これは足繁く通うしかないですね。
このたびはお誘いありがとうございます!!
※掲載内容は、取材当時の情報です。情報に誤りがございましたら、恐れ入りますが info@dor.or.jp までご連絡ください。
掲載日 : 2019.07.31