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《REPORT》START UP TALK vol.1

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    新長田で「何かを始める」を考える午後

    4月、新長田・駒ヶ林にある旧駒ヶ林保育所(PORT KOMA)にて、「START UP TALK vol.1」 が開催されました。会場には、これから店を始めたい人、このまちで活動の場を探している人、すでに長田で実践を重ねている人たちなど、多様な顔ぶれが集まりました。定員を超える申込みがあり、当日は60名を超える方が来場。開始前から会場のあちこちで名刺交換や立ち話が生まれ、イベントそのものへの期待の高さが伝わってきました。

    今回のトークイベントは、神戸市による「シタマチスタートアッププロジェクト」の一環として実施されたもの。新長田南エリアの空き家や空き店舗を活用し、新しい事業者や担い手を増やしていく取り組みです。2023年度からの3年間で、地域内には12カ所の新たな拠点が生まれています。単発の催しではなく、日常の中に新しい営みを増やしていく。その実践の途中にある現在地を共有する場でもありました。

    長田は、“始める人”に向いているまちかもしれない

    前半では、DOR代表・岩本順平さんが、長田というまちの現在地について紹介しました。

    人口減少や高齢化、空き家の増加。数字だけを見ると課題の多い地域です。一方で、漁港があり、工場があり、市場があり、銭湯があり、商店街があり、人の距離が近い。昔から続く営みと、いま新しく始まる動きが、同じ景色の中にあります。表面的なイメージだけでは見えにくい、生活の層の厚さがこのまちには残っています。

    「イベントで一日だけ人が集まる賑わいではなく、ここで働く人、ここを目的に訪れる人が少しずつ増えていくこと。その積み重ねが、この地域の未来につながると思っています」

    そんな言葉とともに、長田で始まった実例として、ギャラリー、アートスペース、スパイス店、シェアキッチンなど、多様な拠点が紹介されました。業種も規模もばらばらですが、共通しているのは“この場所でやる理由”を持っていること。長田は、完成された街というより、関わりながら形をつくっていける街なのかもしれません。

    古い建物を、ゼロに戻さず使うということ

    中盤では、建築・施工に関わる合田昌宏さん、株式会社Happyの首藤義敬さんを交え、丸五市場内の店舗「丸五Spice up」がどのように生まれたかが語られました。

    元は魚屋だった物件。地下に大きな水槽が残り、改修も簡単ではなかったそうです。それでも、使えるものは残し、地域の人も解体作業に関わりながら、少しずつ形にしていったといいます。古い建物を一度まっさらにして新しくつくるのではなく、手間のかかる部分ごと受け止めながら更新していく。その過程そのものが、このまちらしい進め方に見えました。

    合田さんは、古い建物の改修について「一度きれいに壊して新しくするだけが方法ではない」と話します。傷んだ壁や使われなくなった設備も、見方を変えればその場所だけの個性になる。実際に現場では、残せるものを見極めながら、使い方を更新していくことが多いそうです。

    また、設計図だけで進めるのではなく、依頼主にも途中から現場に関わってもらうことで、完成後のズレが少なくなるとも語られました。建物づくりを“発注するもの”ではなく、“一緒につくるもの”として捉える視点が印象に残りました。

    また、首藤さんは施主としての「自分だけでお金をかけて始めるより、最初から仲間を増やした方が、その時もいいし、長期的にもうまくいく」と語っていました。

    古い建物のクセや痕跡を“欠点”として消すのではなく、その場所らしさとして活かす。残された照明器具や壁の跡、以前の使われ方の名残も、新しい場に奥行きを与えていきます。長田らしいリノベーションの考え方が印象的でした。

    PORT KOMAから始まる、新しい風景

    後半では、会場となったPORT KOMAの今後についても話が及びました。

    旧駒ヶ林保育所を活用したこの場所では、今後、カフェやジェラート、宿泊機能なども視野に入れながら、多世代・多様な人が交わる拠点づくりが検討されています。高齢者、障害のある方、子ども、移住者、地域住民。それぞれが自然に混ざり合える場所を、このまちに増やしていきたい——そんな構想が語られました。

    会場にいた参加者にとっても、まだ完成していない場所だからこそ想像する余地がありました。ここに何が入るのか、誰が関わるのか、どんな景色が生まれるのか。計画の説明というより、これから始まるプロジェクトの途中経過を共有する時間だったように思います。

    何かを始める人を、見ている人がいる

    終盤には、シタマチスタートアップの参加者で、昨年、アーツ新長田をオープンした向井さんからこんな言葉もありました。

    「このまちは、人が人を助ける。しかも義務感ではなく、自分も楽しいから助ける、という空気がある」

    長田の魅力は、物件の安さや制度だけではないのかもしれません。やってみたい人を面白がり、応援し、時には一緒に手を動かす人がいること。その土壌こそが、このまちの資源なのだと感じさせられました。紹介者のひと声で物件が動くこともあれば、誰かの挑戦に別の誰かが乗ってくることもある。数字には表れにくい関係性が、ここでは確かに機能しています。

    イベントの終盤には、神戸市都市局長の松崎さんからも挨拶がありました。

    新長田で空き家や空き地が増えていく一方で、このまちには面白い人たちが集まり始めていること。その力が重なれば、駅前の再開発だけではない新しい風景が生まれるのではないか。そうした思いから、シタマチスタートアッププロジェクトが始まったと話されました。

    3年間の取り組みを通じて、地域内外から多様な人が集まり、実際に拠点が生まれてきたことへの手応えにも触れながら、「この動きをこれからも後押ししていきたい」と言葉を結びました。

    次の一歩は、案外ここから始まる

    イベント終了後も、多くの参加者が会場に残り、登壇者や参加者同士で言葉を交わしていました。具体的な物件相談をする人、活動のアイデアを話す人、ただ少しこのまちのことを知りたくて来た人。それぞれの温度で、この場を使っている様子が印象に残りました。

    START UP TALK vol.1 は、答えを教えるセミナーではなく、「このまちで何か始めることを、少し現実にしてくれる場」 だったように思います。

    長田で次に何が始まるのか。まだ名前のない計画も含めて、少し楽しみになる午後でした。

    シタマチスタートアッププロジェクトの詳細はこちらからご確認ください。

    https://www.city.kobe.lg.jp/a13150/startup2026.html

    掲載日 : 2026.04.30

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