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神戸の新しい魅力に出会うウェブマガジン

シタマチコウベ

Shitamachibudie

vol.43

the rocket gold star|山崎 秀昭さんにまつわる4つのこと

兵庫区生まれのキャラクターが、世界を駆け回る

2021.12.24

JR兵庫駅のほど近くにアトリエを構える、the rocket gold starの山崎秀昭さん。山崎さんが描く愛嬌のあるキャラクターは、神戸っ子であれば誰もが見かけたことがあるはず。神戸市環境局ごみ分別キャラクター「ワケトン」や、神戸市立須磨海浜水族園のキャラクター制作で知られています。ユーモアあふれる語り口で、現在の画風に行き着いた経緯や、神戸市での活動についてお話いただきました。

文:柿本康治 写真:岩本順平

 

キャラクターという軸

幼い頃から描くのが好きで、小学生の時は『銀河鉄道999』や『宇宙戦艦ヤマト』など、マンガやアニメの模写をしていました。自分のノートにオリジナルのマンガを毎日連載して、休み時間に友だちに見せていて。たしか、大工とネコのニャン太郎の話だったかな。同級生からは流行りのマンガのキャラクターをリクエストされたり、先生からは「廊下は走らない」といった注意書きのポスターの絵や、英語の教材用でリンゴの絵を描いてほしいと頼まれたり。よくあれだけの数を描いてたな、と今になって思います。大学の美術学科を卒業後、イラストレーターとして雑誌の挿絵などを手けるようになりましたが、そのうち主婦や子どもをターゲットにした媒体からのキャラクター制作依頼が増えていって。そこで自分の過去を振り返ってみたら、昔からミッフィーやスヌーピーが好きだったと思い出したです。その後は、背景はなしで、太めの線で描くキャラクターを作品の軸にしていきました。今でも動物や男の子、女の子をよく描くのは老若男女、誰でも認識できる分かりやすさがあるから。僕が下積み時代に作った名残があるのか、キャラクターは世のなかに対して鋭い目でにらみを利かせています(笑)。 

 

楽しむために汗をかく

小学校4年生の時から和田岬に住んでいて、大学は大阪へ。卒業後の8年間は新開地に住みながら親の営む飲食店で働いて、イラストレーターの仕事もしていました。働いていた居酒屋に僕の作品を飾っていたので、地元の人とも自然とご縁が生まれてほかのお店の看板やシャッター、防潮堤に絵を描いたりもしましたね。神戸でよく知られている仕事といえば、神戸市立須磨海浜水族園のキャラクターと、神戸市環境局のごみ分別キャラクター「ワケトン」の制作。ワケトンに関しては、実は冗談まじりに提案したダジャレ案が通ったんですよ。ゴミを分けるの「ワケ」と、神戸弁の「~しとん?」と、豚の「トン」。採用されるとは思っていなかったから「豚ってきれい好きらしいですよ!」と後で見つけたキャラのバックボーンをクライアントに伝えました。江崎グリコのお菓子「ビスコ」のキャラクターコンペに声がかかった時は、女の子というお題があったのに、女の子とは別に毎回「ビスコくん」という乳酸菌のキャラクターを提案していました。そうしたら僕らのチームが採用されたうえに、女の子ではなくビスコくんをベースにした「乳酸菌くん」に決まって。ただコンペに勝つために最低限のことをしていてもあざといし、僕が楽しくないんですよね。コンペは時の運で、選ぶ人の好みで負けることもある。でも、一緒にプレゼンに臨む制作の方々は「山崎さんと仕事したらおもろいやん」と思ってくれる。負けたとしても、結果的に何か未来につながることを大切にしています。

 

友だちに見せる感覚で

イオンモール神戸南ポスター/神戸市立兵庫図書館ポスター

神戸市立兵庫図書館のキャラクター「としょこちゃん」も、変わったきっかけで舞い込んだキャラクターの仕事ですね。図書館の近くに事務所を借りていたある日、図書館に行くと職員が作ったと思われる20周年のポスターがあった。館長にお会いした際に「よかったら、お祝いの絵を1枚描きますよ」と話したんです。それがいつの間にか公式キャラクターを作るという話に変わっていって(笑)。毎年、図書子ちゃんの誕生日を祝うポスターを描いています。イオンモール神戸南からオープニングの告知ポスター制作の依頼があった時は「話題にもなるし、ポスターに描くキャラクターの数でギネスに挑戦してみるのはどうですか?」とアイデアを出しました。調べたら、ギネスに登録されるには500人も描かないといけない。がんばってすべて違う人物を描いて、しかも絵のどの部分を切り取ってもストーリーがあるようにした。たとえば、ネコが魚を盗んで、魚屋さんがネコを追いかけて、ベビーカーに乗った子どもがそれを指差して、お母さんがびっくりしていたり。自分でどんどん仕事のハードルを上げていますよね(笑)。でも、作る側が楽しいと制作チームのモチベーションって上がるんです。小学生の頃、同級生に連載マンガを見せていたのとほぼ一緒で、そこにお金が発生するかどうかの違い。人によろこんでもらえると、やっぱりうれしいんです。好きな仕事をさせてもらっている恩返し、という感覚もありますね。

 

人に愛されるということ 

2008年からは、神戸市内の小学校や中学校で「2コママンガ」の出張授業を行っています。元々は展示で発表していたシリーズでしたが、親御さんから「面白いから子どもにもせたい」という声をいただいて学校に行く方法を探すことに。僕のモットーは“行くなら一番上から”なので、まずは市内の学校を統括している教育委員会にアプローチしました。地域の校長先生が集まる会議でプレゼンしても声がからなかったので、小学校の先生をしている友人に相談して総合の時間に授業させてもらったらメディアの取材が来て話題になり、今も継続しています。子どもたちの発想力にはいつも驚かされますよ。たとえば、1コマ目では虫歯になったカバが痛そうにしていて、2コマ目で口元に近づくと歯がピアノになっていて、虫歯は黒い鍵盤の部分だったというオチ。キャラクターの制作においても、そうした愛嬌のあるユーモアは重要です。人に愛されることは、キャラクターの第一目標ですからね。クライアントの意向とバランスを取りつつ、少ないパーツで子どもがマネして描ける絵を心がけています。神戸のイラストレーター、というイメージが大きいかもしれませんが、日本全国や世界に展開する企業とも仕事をしたいなと思っています。経験や知識を未来のクリエイターに還元できるだろうし、僕が市外でも広く認知されることで地元にも興味を持ってもらえば、それがきっと神戸への貢献になるはずです。

 

 

 

 

the rocket gold star|イラストレーター
山崎秀昭(ヤマサキ ヒデアキ)

神戸市在住。大阪芸術大学美術学科卒。the rocket gold starとしてイラストレーター活動を始める。ユニークでかわいいイラストが人気で、キャラクターデザインや広告デザイン、書籍、アニメーションなど、多数手がける。子どもたちの発想力や表現力を磨けると考え、「2コママンガ」を発案。小学校や中学校などで出張授業も行う。神戸では、神戸市環境局ごみ分別キャラクター「ワケトン」や、神戸市立須磨海浜水族園キャラクター、神戸マラソン公式ビジュアルで知られる。 

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